Program中高大・広域・地域の連携による地域社会を
先導する人材育成プロジェクト「曽於みらい塾」
〜曽於地区における創造的人材の育成を目指して〜
本教育プログラムは、生徒が自ら自分らしさを探究したり、本校所在地である曽於地区の課題解決について地域職員と模索したりする機会を設けることで、予測不可能な未来でも自分の強みや個性を生かして活躍できる能力を持った、地元の発展に貢献できる人材を育成することを目的としている。
本校内での活動に留まらず、首都圏大学との連携を行い、生徒の自己理解を深め、自己表現のスキルを学び、興味関心に基づいたマイプロジェクト(探究活動)を行ったり、地域の課題解決や探究活動を行う高校と連携し、ワークショップを開催することで、地域課題発見や解決の人材育成を共に実践したりしていくことを考えている。また、地元中学校に赴き、生徒が自己の変容を客観的に捉えた発表をする。個性を存分に生かしながら自己変容の過程を発表する本校生の姿を見て、中学生に本校での学びへの高い関心をもってもらい、自己を生き生きと表現する本校生に憧れ、隣県の進学校ではなく本校を志望してくれる中学生が増えることで、将来的に地域や学校が抱える課題の解決に繋げることも狙いとしている。
活動レポートReport
大学生の伴走で自己を見いだしマイプロジェクトにつなげる
A4用紙に描かれた一本の木には葉がほとんどなく、その下に「コミュニケーションが苦手」という生徒のコメントがある。次のページに描かれた木には「自己」「学習」「趣味」などと書かれた葉が増え、最後のページの木にはさまざまな色の葉がぎっしりと描かれている。中でも「交流」と書かれた葉は大きく存在感を放ち、木の下には「自分の意見を伝える際、しっかりと伝えることができた」と書かれている。「これは本校の生徒が、1学期の探究活動の振り返りの中で描いた絵です。半年間でこれだけの変化があり、発表の際に『今後もっとコミュニケーションをとりたい』と語ってくれた時には感動しました」と鹿児島県立曽於高校の今村太郎先生は話す。
今年度から本格的に探究活動をスタートさせた同校は、普通科・文理科の生徒たちを対象に、慶應義塾大学の学生に毎週オンラインで伴走してもらいながら探究活動を行っている。1学期は自己理解を深めながら、自己表現のスキルを学び、2学期からは関心のあるテーマについてマイプロジェクトを進めていく内容になっている。大学生の伴走は生徒からは好評で、2年生の大休寺涼那さんは「私たちの抽象的な言葉を違う視点から広げていってもらえる。その洞察力に圧倒されます」と話す。
また生徒だけでなく、教員も大学生に学ぶところが多いという。「最初のアイスブレイクを見ていた時に、『これが探究なのか?』と疑問に思いましたが、ここでしっかり心理的安全性を高めていったからこそ、のちに生徒が自分の思いを開放し成長できたのだと納得できました」と今村先生は言う。
8月末には慶應義塾大学の学生が同校を訪れ、自分自身について発表してもらったことも生徒にとって大きな刺激と憧れになったという。「その後に、英検を受けたり、マイプロジェクトのテーマに世界的なものを選んだり、海外留学を志望するなど、視野を外部に大きく広げた生徒が増えたことに驚きました」(今村先生)。
10月には地元の中学生の前で、同校の生徒たちが夏休みまでの成果を発表することになっている。2年生の寄下基成さんは「夢中で見入ってしまった大学生のプレゼンのような発表を中学生の前でしたい」と話す。生徒たちの予想以上の変化を受け、今村先生は、「生徒たちが学年を超えて探究の風土やマインドを受け継いでいく仕組みができれば」と今後の展開を語った。