Program課題解決力の高い地域人を育成する「五日市メソッド」
地域を探究するグループを編成し、
1.行政・企業と協働して地域の魅力と課題を発見
2.企業・大学と連携し地域の情報分析、 課題解決のための仮説立案、体験を通して検証
3.検証結果を発表し地域活性化のための提言として社会に還元
これらの活動を通じて、知識・技能を活用して最適解を見いだす資質・能力を有し、他者と協働しながら新しい時代に対応した価値を創造できる人材を育成する。
地域と協働して地域振興につながる施策をつくり上げることで、自己有用感が高まり社会に貢献する資質能力を兼ね備えた人材の育成を図ることができる。また、次年度より始まる類型の特色を活かし、地域と協働して課題に取り組み、地域が抱える課題を自己の生き方と関連させて捉え直し、地域や時代のニーズに対応したアプローチを発信できる人材の育成を図ることができる。
活動レポートReport
地域との思いが一致
20年度から商業科の募集を停止し、2年次からは進学を見据えた「アドバンスコース」(120人)に加え、商業科を引き継ぎ起業のための体験活動を行う「マネジメントコース」(20人)と、アウトドア関連のインストラクターや指導者を目指す「アウトドアコース」(20人)の3類型を選択する学校改革を実施。「新しい社会に対応しながら経験的な学びを通じて地域に貢献できる人材を育成します」という基本理念も掲げた。
さらに文部科学省「地域との協働による高等学校教育改革推進事業」の事業特例校(地域魅力型)や東京都教育員会「地域探究推進校」の指定を受け、開発しているのが「五日市メソッド」だ。
総合的な探究の時間(計5単位)で、地域を探究するグループを編成して、①行政・企業と協働してフィールドワークを実施し、地域の魅力と課題を発見する②企業・大学と連携し地域の情報分析をして課題解決のための仮説を立案し、体験を通して実効性を検証する③検証の結果について発表し、地域活性化のための提言として社会に還元する――という活動を通じて、他者と協働しながら新しい時代に対応した価値を創造できる人材の育成を目指す。
学校が所在するあきる野市や隣接する日の出町、檜原村などの自治体をはじめ、あきる野商工会や青梅商工会議所などとも連携。「地域の方々にも『一緒に盛り上げたい』という思いがあり、お互いの意図が一致したことも大きいですね」と加藤信義主幹教諭は説明する。東京経済大学や嘉悦大学などとも連携して学びの充実を図れることも強みだ。
グランドデザインにはSociety5.0やSTEAM(科学、技術、工学、芸術、数学)教育、持続可能な開発目標(SDGs)も位置付けている。学校を訪問した日、ちょうど学校周辺のフィールドワークを踏まえてSDGsを学ぶ1年生の授業が、4人のチームティーチング(TT)で行われていた。「SDGsという言葉を聞いたことがある、という生徒は多いです。何も考えずに家と学校を往復している中にも、意外に気付きがあることを知った上で、興味を広げて探究してほしい」と、1年生メイン担当の磯野巌主任教諭は期待を込める。
20年度はコロナ禍もあって活動も何かと制限されたが、今春着任した久保田聡校長は「昨年度の蓄積を生かし、この1年間うまく回して、来年度以降につなげていきたい。目指す力が生徒についているのか、外部の方からの客観的な評価もいただき、探究活動を確立させたい」と話す。
渡辺敦司(教育ジャーナリスト)