Programグローバル・チャレンジ・ターム
グローバル・チャレンジ・タームのメインテーマは「自分は世界に対して何ができるか。学ぶ目的を見つけるための6カ月」 。
グローバル・リベラルアーツ学部の学生は入学した直後の6カ月間を、必修の海外スタディー・ツアー(2021年度はオンラインを中心としたプログラムに変更)を中心とした「グローバル・チャレンジ・ターム」とし、学生一人ひとりが、本学で「何を学ぶのか」「自分は世界に対して何ができるのか」を考え、目指すべき道を見つけるための期間としている。
世界に飛び込み、多様な価値観を感じ、大きな衝撃を受けることで、それが気付きとなり、自分が進むべき道を見つける。そんな大学4年間、さらには生きていくための大きなきっかけとするプログラム。
プログラムの柱である海外スタディ・ツアーはそれぞれテーマが行き先ごとに設定されており(下記)、これまで育ってきた環境では感じることができない、ハンマーで頭を打たれたような衝撃を与え、無知を自覚させることで、知識吸収欲と学習意欲を高揚させる機会としている。
・「人道(歴史理解 対立/紛争/連帯)」のリトアニア
・「宗教(人道と支援・対立と融和)」のエルサレム
・「多文化共生(多様性・格差)」のインド
・「サステナビリティ(開発と自然)」のマレーシア
活動レポートReport
今後目指すべき道を見つける半年間のカリキュラム
2021年度から神田外語大学に新設されたグローバル・リベラルアーツ(GLA)学部のコンセプトは、「Global Liberal Arts for Peace(平和のためのグローバル教養)」。学生一人ひとりが思い描く「平和」を、グローバルな視点で実現するための力を培うことを目的としている。入学直後2カ月目の短期留学と、3年次後期のNY州立大学への4カ月間留学という、全学生必修の2回の海外留学が大きな特徴で、「海外スタディ・ツアー」と呼ばれる最初の短期留学に関しては、リトアニア、エルサレム、インド、マレーシア(ボルネオ)から、それぞれが渡航先を選択する。この「海外スタディ・ツアー」を中心とする入学直後の6カ月間は、「グローバル・チャレンジ・ターム」という独立したカリキュラムで、「今後何を学ぶのか」「自分は世界に対して何ができるのか」を学生がゆっくりと考え、目指すべき道を見つけるための期間としている。その渡航先からも分かる通り、内容も単なる語学留学に留まらず、これまで育って来た環境では感じることができなかった幅広い教養や国際的な課題を直接体感するものとなっている。まずは世界に飛び込み、その現実を感じて衝撃を受けることで、進むべき道を見つけるきっかけとするというプログラム設計で、財団からの助成も、この特徴的な「グローバル・チャレンジ・ターム」が対象となっている。欧米の大学では、入学前の時期などにこうした「寄り道」を認める「ギャップイヤー」と呼ばれる仕組みが普及・定着しているが、国内においては珍しい試みで、各方面からの注目度も高い。
新学部の開設年となった昨年度は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、この「海外スタディ・ツアー」が実施できず、オンラインでの実施へと計画変更になったが、学校が所有する福島県の宿泊施設兼国際研修センター「ブリティッシュヒルズ」、ならびに学部新設に合わせて校内に建設された施設「GLA Commons」と渡航予定地をオンラインで結び、協定大学の英語による講義や学生との交流、バーチャルでのNGOツアーや実習などを実施。オンラインのメリットを最大限に生かすことで、本来ならば渡航先1カ所しか経験できなかったプログラムが、4つの地域とのオンライン交流が可能となり、学生からは、「何を学ぶべきかを考えるスタートとしては良い経験になった」という意見も寄せられた。また今年の2月には、代替研修としてリトアニアへの10日間の渡航も叶い、新設学部初年度から、長年計画して来たプログラムを変更、延期することになったのは残念だったものの、「コロナだから仕方ない」と諦めず「コロナ禍でもできること」を模索することで、現状で実施できる最大限のプログラムが実現したという。とはいえ、現地だからこそ五感を刺激する体験が可能という面もあり、今年度は6~7月にわたって全学生を4つの地域に無事送り出し、予定通りのプログラムを実行することができたことで、学部関係者全員が胸をなでおろしたとのことだ。
オンラインで学んだ後に現地で体感学習
今年度、予定通りに行われた「グローバル・チャレンジ・ターム」は、まず6月下旬に4地域をオンラインで結ぶ2週間のプログラム「海外スタディ・ツアー(国内研修)」を実施。現地と結んだ英語での講義、学生との交流・討議、NGOやテーマに関連した施設などのバーチャルツアーとオンライン実習などを「ブリティッシュヒルズ」と「GLA Commons」で行った。その後、7月中旬に4カ国・地域のうち、それぞれが希望したエリアに実際に渡航し、約3週間のプログラム「海外スタディ・ツアー(海外研修)」を実施した。帰国後の8月からは振り返り学習に入り、グループワーク、他地域に渡航した生徒へのプレゼンテーションやディスカッションも行い、「グローバル・チャレンジ・ターム」は終了。後期に入った9月からは、一般授業が開始されている。
今年度の「海外スタディ・ツアー」の渡航先と、学生の感想は以下の通り。
<リトアニア> (国立総合大学ヴィータウタス・マグヌス大学)日本人にとっては杉原千畝の「命のビザ」で有名な地において、「人道支援」ほか「20世紀以降の中東欧史」「紛争と対立からの脱却」などに関して学んだ。
「国の歴史や国際関係などを調べることはできても、現地の人の考えや、価値観に触れることは、実際に話してみて初めてできることだと実感した」
<エルサレム> (国立ヘブライ大学)ユダヤ教、イスラム教、キリスト教の聖地で、「宗教の多様性」や「イスラエル・パレスチナの歴史」、またJICAなどの日本の支援機関でのフィールドワークを通じて「人道支援の現状」を学んだ。
「ニュースや資料を見ただけではその国のことを理解したとは言えないということがよく分かった。実際にその地へ行ってその土地の人々と交流してみると、想像と違うことが多く、情報を鵜吞みにせず、実際に自分が経験することの大切さを知った」
<インド> (シンバイオシス国際大学)「インドのオックスフォード」として知られる教育・研究の中心地プネーで、学校に通えない子どもたちに教育の場を提供するNGOなどへのフィールドワークを中心に、「多様性」や「教育格差」などに関して学んだ。
「ゴミの多さに衝撃を覚え、貧困問題はそれと比例して環境問題も引き起こしているという考えが生まれた。インド人でもインドのことを全て理解するのは難しいと言っていたが、ほんの一部でも、インドの多様性や文化などを知ることができたと思う」
<マレーシア・ボルネオ> (国際プトラ大学/スウィンバーン工科大学)「多文化共生」や「宗教の多様性」について学ぶとともに、ボルネオ島で野生動物・環境保護や熱帯雨林再生プロジェクトなどのフィールドワークにも取り組み、「開発とサステナビリティの両立」について学習した。
「グローバルに活躍できる人になりたいという目標はあったが、実際に別の文化に触れることで、また少し物事に対して柔軟に考えることができるようになり、モチベーションも上がって、今まで以上に学ぶ意欲が高まった」
社会の課題を多角的にとらえる人材を輩出
オンラインを中心とした昨年度、オンラインとリアル留学を組み合わせた今年度の経験により、「グローバル・チャレンジ・ターム」、さらにはGLA学部における方針や意義なども、より明確になってきたという。渡航先などに関しては、今後しばらくは大きな変更はないものの、長期的には拡充も計画。また、先輩学生をチューターとして積極的に機能させるなどの細かな改革は近々にも予定されており、それらに伴う教員のスキルアップの実行など、より深く、細かく指導できる体制は常に整えていく予定だ。渡航時の制限が少なくなるとともに、「自分で決めたテーマに沿って動ける時間を増やし、もっと自主的な学びをさせたい」と、新学部設立プロジェクトをけん引してきた金口恭久副学長は語る。始動間もないプログラムだからこそ、年々ブラッシュアップすることで、より革新的なインパクトを与えられるプログラムに成長する伸び代もある。
「当学部には、理念に共感した学生が多く集まっている。モチベーションも高く、スタディ・ツアーに関しても、日本代表という自覚・責任を持って取り組んだ結果、日本にいては絶対に気が付かなかった世界の課題について、『見過ごすことはできない、何らかの形で活動を起こさないと』と感じている学生が多い。そうした思いが、必ずや彼らの生きる方向性に影響を与えると信じている」(金口恭久副学長)
語学と文化を学ぶ大学として30年以上の歴史を持つ当大学が、「リベラルアーツ」「アクティブラーニング」などのキーワードの下、語学をツールとした新たな教育の形を創造していけるか。また、少人数教育を徹底する当学部が、入学から卒業までの間、多彩な教員、学生と議論しながら、Humanities(人間と文化)、Societies(社会と共生)、Global Studies(グローバル・スタディーズ)という3つの異なる分野の知識と方法を学ぶことで、グローバル社会の課題を多角的にとらえ、考えることのできる力を育んでいくことができるか。非常に楽しみなところだ。