ProgramC-AIR(シー・エア)プログラム
C-AIRとは、Change and Coexistence−oriented Agency through Inquiry and Research(変化と共存に向け 探究を通じて社会を動かす力)の略である。
【プログラムの目的】
今後ますますグローバル社会が拡大し、日本社会が縮小し続ける中で、世の中の「変化」を当たり前と受け止め、自らも「変化」を生み出すことで、社会の課題を解決しようとする人材、そして世界の人々との「共存」を志向する人材を育成する。
【プログラムの概要】 ※助成の対象は4・5年生
(1〜2年・中学1・2年):大学や研究機関などと連携しながら社会科学系・自然科学系の探究スキルを習得する。
(3年・中学3年):12ゼミに分かれ、学術的な課題について基礎調査をし、自分が追究したい課題を洗い出す。
(4年・高校1年)「学術ゼミ型」:12ゼミを継続し、自分が設定した本格的な課題に沿って学術的な調査を実施し、その結果を論文にまとめる。インタビュー調査などを通じてさらに「社会とつながっていく」段階。
(5年・高校2年)「自律型」:テーマおよび研究形態(個人・グループ)を自由とし、これまでの経験を踏まえて、社会・学術的な貢献を志向した探究活動を行う。現実の課題解決を通じて「社会に働き掛ける」段階。クラス単位で実施。
(6年・高校3年)「選択型」:選択科目として、大学進学後に接続するような研究を行う。
活動レポートReport
社会に働きかける力を引き出す「対話交流会」
中等教育学校である同校は、2020年度より1~6年生までが取り組む探究プログラムを開始した。目標は「変化と共存に向け探究を通じて社会を動かす力の育成」だ。これを英訳したChange and Coexistence-oriented Agency through Inquiryand Researcから探究は「C-AIR」の愛称で親しまれている。1・2年生は探究のスキル習得、3・4年生は学術分野を基盤としたゼミ活動、5年生は自由なテーマ・形態の自律的な探究活動、6年生は大学に接続する選択型の探究となっている。
今回助成の対象としたのは、後期課程である4・5年生の探究だ。実際に社会とつながりを持ち、社会に働きかけながら課題解決型の探究を自分で企画・実行していく生徒らを重点的に支援した。
4年生は人文・社会系、理工・生物系など12のゼミに分かれ、自分で課題を設定し文献調査やインタビュー、実験などを経験する。学年末には8000~1万字の学術系論文形式で、第三者にも引用してもらえるような信頼性の高い簡潔な論文に仕上げるのが課題だ。そこで、外部の専門家による論文指導を導入した。前学年の論文を見本として添削してもらい、実践的な論文執筆力の向上につなげた。生徒には好評で70%の生徒が「納得できる論文を作成できた」と答えている。
5年生はこれまで身に付けてきた力を総動員して社会への働きかけができる探究を目指す。その糸口として外部人材との対話交流会を企画した。一度きりではなく連続して開催したのがポイントだ。安楽死をテーマに取材活動をするジャーナリスト、電気自動車(EV車)開発の研究者、環境問題や地方創生など10人の専門家との対話が実現し、生徒は自らの考えをぶつけながら複眼的にテーマを掘り下げる視点を得ていった。
その結果、55%の生徒がインタビュー調査を行う、50%が学校外のコンテストやイベントに参加するなど、学校外の現場に踏み出す行動が見られた。
23年度の探究も改良が続く。5年生は「デザイン思考」のワークショップに参加し、アイデアを拡散・焦点化するスキルを身に付けるという。そうすれば専門家との対話の解像度も上がり、また支援する教員の刺激にもつながる。「生徒には、社会に自分がどう関われるかのきっかけをつかみ、行動できるエージェンシーを育みたい」と海老名豊昭教諭は話す。
長尾康子(教育ジャーナリスト)