Program「国際科学高校」のグローバル・シチズンシップ教育プログラム
~<ひと×探究×国際性>ひととの出会いを通して将来ビジョンを描き、世界に貢献する意欲と力を蓄える〜
「ひと」— 志を持った人と出会うことで、生徒は触発され、心のエンジンが駆動する。
「探究」— 探究活動に取り組むことで、社会課題の解決に貢献する道筋が見え始め、必要なスキルの基礎を身に付けることができる。
「国際性」— 世界で活躍する人、海外に背景を持つ人と交流することで、世界に踏み出すことへの心のハードルが下がり、人生の将来像がグローバルなものになる。
これらの仮説を基に組んだグローバル・シチズンシップ教育プログラムで、主な事業は以下となる。
・国際文化科と総合科学科、両学科1年生に、志を持って海外に踏み出した大学生、または国際協力の現場を経験した社会人との出会いの場を提供。
・両学科1・2年生を対象に、海外の大学生と英語での交流ができる研修を用意。
・国際文化科2年生が、探究学習を深めるために、有識者からの講評や大学院生からの個別指導を受ける機会を設定。
・国際文化科1・2年生を対象に、上級生や同級生、他学科の生徒との出会いをつくり出すため、研究の情報交換ができる機会とスペースを提供。
・指導する教員がより効果的な「出会い」を創造できるよう研修の機会を拡大。
活動レポートReport
多様な「ひと」との出会いが生徒たちの世界を広げる
高度経済成長の真っただ中の1967年、日本初のニュータウン開発に合わせて創設された千里高校。同校で課題研究の授業がスタートしたのは、国際文化科と総合科学科からなる「国際科学高校」に再編された2005年のこと。以来、SSHやSGHの指定を受けつつ、国際性と課題解決力を備えた生徒の育成に注力してきた。
こうした蓄積のもと、2022年度から三菱みらい育成財団の助成を受けて新たな教育プログラムが始動。その構築を主導した大西千尋先生は、「志を持った『ひと』との出会いに触発されて心のエンジンを駆動し、『探究』を通じて社会課題の解決に向けた将来ビジョンを描き、『国際性』を育むなかで世界に貢献する意欲と力を蓄えていきます」とプログラムの主旨を説明する。
「ひと」との触れ合いを重視する同プログラムの象徴的な取組が、近隣にキャンパスを構える大阪大学の大学院生による課題研究の個別論文指導だ。院生1人が3~4組の生徒を担当し、対面またはオンラインによる面談を通じて、論文のまとめ方はもちろん、課題研究を進める上での悩みや疑問などの相談にも応じている。年齢も近い院生は生徒たちにとって格好のメンターとなっており「行き詰まっていたが見通しを持てるよう導いてもらえた」との声も挙がっている。「生徒に共感しつつ、質問を通じて生徒の考えを整理し、広げる指導がすばらしい」と大西先生が語るように、担当する教員も得るものが多いという。
論文の発表会には、教員や院生に加えて大学教授や企業のCSR担当者も出席。研究やビジネスの現場を踏まえた助言が得られ、生徒たちにより深く、実践的な気づきを与えている。
「国際性」の面で大きな成果が得られたのが、海外からの大学留学生からSDGsの取組を英語で学ぶプログラムだ。多様な地域出身の留学生たちは、いずれも英語ネイティブではなく、独特の発音・アクセントながらも不自由なく英語を使いこなす姿が、生徒たちに大きな刺激となった。
「環境問題をはじめ、今日の社会課題は日本だけは解決できません。言葉や文化の違いを壁と感じることなく、必要とあれば国境を越え、世界中の人々と手を携えて課題解決に取り組める人材の育成がプログラムの狙い」と語る大西先生の目には、将来、グローバルな舞台で活躍する卒業生たちの姿がはっきり映っているようだ。