カテゴリー 12020年採択

宮城県仙台二華高等学校

対象者数 480名 | 助成額 200万円

https://nika.myswan.ed.jp/

Program北上川/東北地方、メコン川/東南アジアをフィールドとした
世界の水問題解決のための取り組み

 1年次は全員が同じプログラムを、2年次は二つに分かれ、3年次は希望者が、それぞれ学校設定科目「GS課題研究Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、総合的な探究の時間」という授業の中で実施する。

 1年次では水を見る視点を養うために、主に北上川流域の緩速ろ過施設や松尾鉱山中和処理施設、一関遊水池等を訪問し、 植樹活動を行い、それを題材に課題研究の方法を学習する。

 2・3年次では、1年次で得た知識を基に、主にカンボジア・ベトナムで水に関する困難を抱えた人々に関する国際支援活動を行うグループと、研修旅行先のシンガポールの水問題とその解決策について調査するグループに分かれて活動する。

 本プログラムの特徴は「高校生が行う本気の国際支援活動」であり、具体的には、高校2年生が10人程度カンボジアやベトナムの農村・漁村を訪問し、通訳だけを介して各家庭で聞き取り調査をしながら、現地住民の抱える問題の本質を探り、一緒に解決方法を試行錯誤しながら探っていく。活動の成果は各種学会で発表するとともに、近隣の小中学校への啓蒙活動も行う。

 同時に令和3年度導入を目指している国際バカロレアの「学習の方法」「指導の方法」を、課題研究の指導にどのように取り入れることができるか研究する。

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課題と思いを受け継ぎ

 10年度からの共学化に合わせて併設型中高一貫教育に移行(県立の仙台二華中学校を新設)し、14年度からスーパーグローバルハイスクール(SGH)に指定(現在は後継事業の「ワールド・ワイド・ラーニング(WWL)コンソーシアム構築支援事業」連携校)。21年度には国際バカロレア(IB)を導入予定(高校2年次に選択、定員25人程度)と、発展を遂げている仙台二華高校。ただし、前身の仙台第二女子高時代から、社会貢献を伝統にしてきた。「グローバルスタディ課題研究Ⅰ~Ⅲ」も、その延長線上にあるという。

 SGH指定を契機に、テーマを水問題に絞った。1年次は全員で北上川流域の施設を訪問したり、模擬国連なども行ったりしながら、課題研究の方法を学習。2年次は①カンボジアとベトナムの水問題に関する個人研究(40~80人程度、現地派遣は代表10人程度)②研修旅行先であるシンガポールに関するグループ研究(160~200人程度――に分かれて活動する。3年次は選択制。学会などでの発表機会も多い。

 ユニークなのは専門高校のように、研究課題を先輩から引き継ぐ「リレー方式」にある。住民の意見を聴きながら失敗を重ね、改善策を模索していくことで、広がりと深まりが生まれる。

 SGH指定以来、東北大学をはじめ高等教育機関との連携を進めてきたことも強みだ。卒業生もティーチング・アシスタント(TA)として指導に当たる。筑波大学地球学類1年(取材当時、以下同じ)の齊藤未宇さんはカンボジア・トンレサップ湖の水上集落の水問題を雨水で解決する課題に、国際基督教大学(ICU)1年の小泉みのりさんはベトナム・メコンデルタの土壌改善に取り組んだ。いずれも現地に派遣され、「発展途上国」の先入観が大きく変わったという。

 さらに共通するのは、課題を十分に解決できなかったという悔しさだ。東北大のAOⅡ期に合格した菅原一真さんもカンボジアでフィールドワークをしたが、「大学に行っても研究を進めていきたい」と意気込む。伊藤俊校長も「よく大学の先生に『入ってから伸びる』と言われます」と話す。

 一方で「『二華だからできる』というのは避けたい。県立高校として、他校のモデルとなる汎用的な取組を目指しています」と小金聡教頭は強調する。IBにしても選択者に限らず成果の一端を全校生徒、さらには他校にも波及させたい考えだ。

 教員自身が研究グループの一人として生徒のコーディネーター役に徹し、「思いや熱量を伝えるサイクルはできました」と、秋塲聡教諭は手ごたえを感じている。

 「ノウハウを職人芸にしてはいけない」と「課題研究ガイドブック」も作成。現在は5版を重ね、研究や発表の仕方、論文の書き方はもとより各国や水質のデータなど資料も豊富に載せる。「半分くらいは生徒が書いたもの」(秋塲教諭)だという。

渡辺敦司(教育ジャーナリスト)

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