カテゴリー 12023年採択

福島県立只見高等学校

対象者数 60名 | 助成額 83.6万円

https://tadami-h.fcs.ed.jp/

Program未来に繋げる「地域振興」プロジェクト

 本校では、地域の方々の協力のもとに令和2年度から地域探究学習に取り組んできたが、本プログラムではそれを発展・進化させて、生徒の自己実現と地域全体の振興を共に達成することを目指している。

 まずは1年次で、「場」を通して個人の技能(インタビューやワークショップ、プレゼンテーション等)を磨きながら、地域を知るための活動を行う。特に、長期休業中の越境企画で地域外の知識を得て、10月の職場体験で地域内の実情を知ることで、一人一人が明確な課題意識をもって次年度のプロジェクト型学習に臨めるようにする。

 そして2年次に、只見町の特徴かつ良さでもある「自然・森林」「食・農業」「観光・暮らし」の3つのテーマと各自の課題意識を掛け合わせて小グループを編成し、地域の方々と協働しながら地域へ出てプロジェクトを実践する。年3回を目安に計画→実行→分析→発表の探究サイクルを繰り返すことで一つのプロジェクトを洗練させつつ、年間を通して生徒が自身の変容・成長を実感できるようにする。

 また、年度末に次の学年へテーマの引き継ぎを行うことで、「高校生」が地域づくりのプレイヤーとして地域に関わり続けることができるようにし、地域の活力増加にも繋げていきたい。

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テーマとともに思いも引き継ぐ

 只見高校のある奥会津の只見町は、新潟県に隣接する豪雪地帯。2011年7月の集中豪雨で一部不通になっていた只見線は22年10月に全線で運転再開したが、上下線とも1日3便と通学には不向き。町は同高と協働して「只見高校魅力化プロジェクト」を実施しており、02年度に始めた山村教育留学制度では学生寮「奥会津学習センター」に全校生徒89人の4分の1近い21人(23年度)が県内外から入寮。町内に公営塾「心志塾」も設置している(いずれも無料)。毎年のように国公立大学に進学者を輩出。只見線再開直前の選抜高校野球大会には21世紀枠で出場しダブルで町をにぎわせた。

 そんな地域の小規模校に対する手厚い支援の下に20年度から始めたのが、総合的な探究の時間のプロジェクト型学習だ。「只見高校生として育てたい10の力や態度」として企画力、受容力、冒険心などを設定。21年度からNPO法人かわみなと(新潟県阿賀町)のサポートを受け、プログラムや「ふりかえりシート」も開発した。

 1年次は、まず地域を知ることに特化。インタビューやワークショップ、プレゼンテーションなどの基礎的な技術を身に付けながら理解を深めていく。2年次は①只見の自然・森林②只見の食・農業③只見の観光・暮らし――をテーマに計6~7班に分かれ、地域の協力者と共に企画・実施・振り返りを何度も繰り返す。

 特徴は、生徒自身がテーマを下の学年に引き継ぐことだ。23年度は2月21日に行われ、テーマ別に各班が年間計画やテーマを通して身に付く力、改善点・アドバイスなどを詳しく伝えていた。「来年度も続け、自分たちの失敗を生かしてほしかった」と小杉美菜さん(新名物開発班)。三瓶なつめさん(米・トマト班)は、レシピ作りを通して宗教やアレルギーに配慮する必要があることを学んだと言い、「商品化して、もっと広めてくれたら」と期待をかける。

 自己評価アンケートによると、1年次終了時と2年次2学期終了時では分析力や探究力、自立心に顕著な伸びがみられた。齋藤椿さん(新名物開発班)は、「1年生の時からスライドを作り、アドリブも交え自信を持って発表できるようになりました」と振り返る。

 担当の岩渕未加子教諭は、前任の県立南会津高校で地域探究の面白さを実感し、22年度に希望して異動。テーマ引き継ぎ方式を確立した。教職員数の少ない小規模校でも、自走できる方式を目指している。

「只見の食・農業」の引き継ぎ式。2年生は協力して分担しながら思いを伝えていた。「仲の良さも『総探』で育まれました、これからも辛いことから逃げないで頑張りたい」(看護師志望の梁取ななこさん)。

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