Program土浦市から宇宙まで探究のフィールドは無限だ!
本校は普通科と商業に関する学科が併設されている学校である。商業に関する学科は以前から3年次に課題研究が実施されてきた。普通科は4年前より2年次において探究活動が行われるようになった。年々レベルが向上しており、昨年度は土浦市の活性化から宇宙まで多岐にわたるテーマが設定され、多くの生徒が満足のいく探究活動ができた。
今年度はそれをさらに上回る成果を上げるべく、夏に文系分野から理系分野まで体験できる探究巡検を1泊2日で実施する。探究活動では、土浦市と共同で街おこしスタンプラリーやキャンプイベントも実施予定。他に、スターリングエンジンカー製作、木辺鏡を使った反射望遠鏡製作、歴史に関する探究等文系理系を合わせ50テーマ以上設定された。また、科学部主催で、空気望遠鏡等、自作望遠鏡を使った一般向け校内天体観測会をキャンプイベントの時を含め3回程度実施する。
探究の指導は全職員で取り組む体制が整いつつある。そしてその発表会は2024年2月に、講評者として大学の教員2名・土浦市役所関係者・保護者等を招いて、普通科だけでなく商業に関する学科も参加し、土浦市民会館を借りて実施する。
活動レポートReport
興味・関心を引き出す夏季巡検を開催
今年度で創立7年目を迎えた茨城県南部の伝統校である同校。霞ヶ浦を一望できる高台に立地し、落ち着いた学習環境のもと普通科と商業に関する学科を併設する。
探究活動を本格的に始めて3年目を迎える。2学年普通科の探究では、過去2年は4人程度のグループ活動を基本にしていたが、今年度は個人活動を基本とした上で、グループ活動も認めるとしているとのこと。グループはクラスの垣根を超えた編成とし、自由に動けるようにした。「課題設定の理由」「仮説」「実験・検証」「考察」「今後の課題」の流れを踏襲できるようにするのが目標だ。結果はポスターまたはパワーポイントにまとめて発表し、後に論文もまとめる。年度末の発表会は校外のホールを借りて開催する。
1学年普通科では、探究活動の基礎づくりを、商業に関する学科は2学年2月から始まる「課題研究」の基礎作りをおこなう。
個人テーマ型の探究の場合は、自分の興味や関心のありかを見定め、「やってみたい」と思うことを掘り起こしていくことから始まる。そのために必要なのは「遊び心を持つこと」と探究担当の岡村典夫教諭は言う。教員も生徒も「いい探究にしたい」と意識しすぎてしまうと、かえって自由なアイデアが出せなくなってしまう。特に教員は生徒と一緒になって、一人ひとりの興味や関心に寄り添う姿勢を大事にしていく。
一方、生徒には、興味のおもむくままに動いてみる、人と違う体験をすることの原動力となる刺激を与えたい。そこで、企画したのが1・2学年希望者制の1泊「夏季巡検」だ。先進的な地域活性の取組で知られる茨城県境町を視察。自動運転バスの試乗、建築家・隈研吾氏が手掛けた建物群の見学などの後、大子町に移動して天体観測を実施。翌日は技術博物館、日鉱記念館を見学するプログラムを開催した。
また、同校には、教科以外にも専門分野を持つ教員も多い。土浦市や市民団体とつながりがある教員、外部から熱を加えると作動する「スターリングエンジン」に詳しい教員などだ。探究担当の岡村典夫教諭も天文学の研究や指導に造詣が深く、生徒のオリジナル望遠鏡の製作や、地域に開かれた天体観測会の実施などを後押ししてきた。こうした教員の個性も、生徒の探究への意欲に結び付けたい考えだ。
今後は、近隣の茨城大学農学部や県立医療大学からの協力も得ていくという。
長尾康子(教育ジャーナリスト)