カテゴリー 12023年採択

長崎県立佐世保南高等学校

対象者数 680名 | 助成額 200万円

https://sasebominami-h.education/

Programサザンタイム 
~「地域から世界へ 世界から地域へ」循環型グローカル探究プログラム~

 地元佐世保が抱えるさまざまな課題に対して国際的視点から取り組むことができるグローカルな人材を育成する。

 本校が位置する佐世保は、明治以降に軍港として栄えていたが、現在は全国の地方都市が抱えている人口減少や少子高齢化の問題に直面している。しかし、国内有数のテーマパーク・ハウステンボスを有するほか、アメリカ海軍が港湾の一部を使用し、国際旅客船の受け入れも行われている。これらの地域特性を積極的に活用するとともに、国内外のフィールドワークや高校・大学等との意見交換等を通して、国際的な視点を育成することで、地元佐世保の未来を創造できる独創的、科学的、学際的な教育を実践する。

 1年次は地域資源活用型探究活動に取り組み、特に、文理探究科では、県内外の文化・学術系施設や研究施設の他、県内の文化遺産や地元企業などへの訪問研修を通して、学際的視点を養い自分自身の探究活動に繋げる。2年次には国際理解と異文化体験を目的とした海外研修旅行を実施することで、各自の探究活動の内容に関して、国際的な視点でも分析する機会を設け、さらには、3年間の「自分磨き活動」を通して得た経験を活かして、各自の探究的学びや取り組みの深化を目指す。

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活動レポートReport

生徒がデザインする文理探究科の在り方

 佐世保南高校では7年前から、地域の取組やボランティア情報をTeamsチャット等で発信し、生徒に主体的に参加してもらう「自分磨き活動」を行っている。昨年度からは生徒が自主的に情報発信するようになった。「地元の施設を借りて、『自習室』を開催します。一緒に自習しませんか」「アイデアソンを実施します。ぜひ参加ください」。発信したのは、2年生の前川兼継さん、森彩乃さん、松澤由羅さん。1年生の関東研修で、多様な世代や立場の人が社会課題解決に向けて対話する施設「渋谷キューズ」を見学し、刺激を受けたという。新設されたばかりの文理探究科の3人は、佐世保でも同じような活動をやろうと動き出した。

 長崎県では2023年度から県内5校に文理探究科を新設、同校もその一つだ。探究推進部主任の吉野聖司先生は、「他の4校は理数科をベースに文理探究科を設けていますが、本校は普通科のみ。どのような科にするか議論を重ねました」と話す。他校のように理数分野を深める科にする必要はない、進路のためではなく、生徒たちの興味・関心に沿った探究にしよう。そして募集の際に掲げたフレーズが「好きなことを好きなだけとことんやる」。その「好き」を刺激する機会として、県内、関東の施設や企業訪問などの校外研修を多く設け、2年生ではシンガポールへの修学旅行を予定している。授業では、関心のある分野に分かれて探究を進め、各教科の教員が相談役となり、必要があれば探究推進部が地域とつないでいる。同部の藤松謙之介先生は「テーマが見つからなくても、外部と接点を持つ中で、やりたいことが見えてくることも。社会との接点を持たせる環境づくりは重要」と話す。

 年度末に発表会はあるが、そこまでに完成させなければならないという気負いは教員にも生徒にもない。何度も分野を変えたり、他チームの探究を手伝ったりと、生徒の動きは自由で、教員も見守るスタンスに徹している。探究推進部の東彦一郎先生は、「教員はどうしても生徒に成功させたいという思いが強いのですが、失敗してもいい、その先どうするかが重要だと、教員にも生徒にも伝えています。教員もプレッシャーを感じずに伴走でき、生徒たちも自分の『好き』を追求できるんだと思います」と話す。「佐世保南高校にとっての文理探究科は、生徒たちがデザインしていく中にしかない」と吉野先生。生徒と共に新しい科をつくる同校の挑戦は始まったばかりだ。

アイデアソンとは、特定のテーマを決めて、そのテーマについてグループ単位でアイデアを出し合い、その結果を競うというイベント。前川兼継さんが発案し、森彩乃さん、松澤由羅さんも協力して開催した。

「総合的な探究の時間」では、お互いに刺激を与え合うことを目的に、普通科・文理探究科一緒に探究活動を行う。生徒のやり取りを見守る東先生。

学校での防災訓練だけでは防災力を身につけるには不十分ではと感じ、オリジナルの避難経路ゲームの開発に取り組むチーム。全国中学生・高校生防災会議に参加したり、ゲーム開発企業などにアドバイスをもらったりと、外部からの意見も取り入れている。

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