ProgramWillから始まる探究の土壌づくり
~長野市立長野高校の実践から広がる文化の醸成~
本校では、2019年4月よりNPO法人青春基地と3年間の連携協定を結び、未来の学校づくりに向けた学校改革に取り組んでいる。PBLへのカリキュラム改革を軸とし、変化し続ける学校文化をつくるため、次の三つに取り組む。
1.Willを耕すPBLカリキュラム改革[1・2年生]
一人ひとりの「やってみたい」という好奇心やWillからマイプロジェクトを立ち上げ、 アクションとリフレクションを重ねるPBLの授業づくり
2.学校と社会をつなぐ「iLAB」の新設[1・2・3年生]
本年度より放課後の「iLAB」を新設。「i」は一人ひとりのWillを意味する。学びを授業や学校の中にとどめず、自由に、人や世界と出合う場所
3.学校組織の土壌づくりとスケールアウト[教員]
学校組織全体の土壌づくりのために、大学や地域とのコンソーシアムを発足。
本校以外の教員や学生もオープンに参加できる教員研修など、新たな取り組みを通じ、長野地域、全国への相互的スケールアウトも目指す
活動レポートReport
NPOとの協定で学校も開く
県下唯一の市立高校で、1919(大正8)年開校の市立長野実科高等女学校から100年を超える伝統校。08年度から新校舎建設とともに総合学科に転換し、現校名に変更。17年度には中学校を併設し、中高一貫教育校となった。
こうした中、18年度に赴任した菅沼尚校長は、将来に危機感を抱いていた。総合学科も制度創設から四半世紀がたち、「個別最適な学び」が求められる中、新たな可能性を示す必要性を感じていた。
そんな折、隣の小布施町のイベントで出会ったのが、NPO法人青春基地の石黒和己(わこ)代表だった。19年4月から青春基地と、最短3年間の連携協定を締結。こうしたNPOとの連携をはじめ様々な形で、未来の学校づくりに向け本格的に学校改革に取り組むことにした。中学校3年生から高校3年生までのPBL(課題解決学習)カリキュラム実現を目指している。
その中心の一つが高校2年「課題探究」の「Willを耕すPBLカリキュラム改革」だ。地域課題や社会課題など外発的動機のテーマではなく、教職員や青春基地のメンターなど(延べ200人)との対話を通し、生徒一人ひとりの内発的動機(Will)を引き出し、それを軸としたマイプロジェクトを立ち上げ、アクション(実行)とリフレクション(振り返り)を重ねる。WillにはDo(やりたい)だけでなく、Be(ありたい)も含むという。
19年10月の大規模水害で生徒有志が泥かきボランティアに参加したのをきっかけに、「iLAB(アイラボ)」も設置。PBL推進に当たり、生徒の活動を学校内にとどめないよう、職員が常駐し、外部からの情報提供や外部への情報発信、生徒との相談等を行うために、20年度に空き部屋に設置したものだ。
他に長野市教育委員会を中心に、大学、行政、NPO等で構成されるコンソーシアム(共同事業体)により、PBLの実践が学校を越えて、地域に広がることが目指されている。
渡辺敦司(教育ジャーナリスト)