Program六稜 Task Project (学術研究の基礎としての課題研究)
高校生の素直な興味発想を尊重し、自然科学、人文科学、社会科学、あらゆる事象を対象とした教育プログラム。
科学と芸術、民族や歴史に、洋の東西を問わず学びを深め、既成概念にとらわれない自由な発想力や論理的思考力を養うことを目的としている。生徒自身が見いだした課題を納得するまで追究し、生徒同士のみならず、研究者や学識経験者を交えて活発な議論や意見交換を行うなど学術的な啓発の機会を提供している。実験実習、フィールドワーク等の手法を豊富に取り入れ、実社会へのアイデア提供、技術応用の可能性を模索することで、高校生が存分に主体性を発揮しアートとサイエンスの全分野を対象に探究する。本物に出合い、本物に接し、語り合う中で、さらに探究心を高めていきたいと考えている。
活動レポートReport
教員開設講座で研究の基礎学ぶ
1873(明治6)年の欧学校を前身とする北野高校は、「滝川事件」で知られる滝川幸辰京都大学総長(旧制北野中)や漫画家の手塚治虫(同)をはじめ多数の人材を輩出し、最近では吉野彰・旭化成名誉フェロー(19年ノーベル化学賞受賞)や橋下徹・元大阪市長の出身校としても知られる。 アカデミックな校風で、11年度から大阪府教育委員会の「グローバルリーダーズハイスクール(GLHS)」(10校)として文理学科を併設。16年度からは普通科の募集を停止し、全クラスが文理学科となった。
02~06年度に第1期SSH、14~19年度には文科省「スーパーグローバルハイスクール(SGH)」(現在は後継のWWL拠点校)など、多数の指定も受けてきた。
第一期SSHの経験を生かし、独自のカリキュラム開発に取り組む選択をしたという。現在、第2学年の生徒全員を対象に「課題研究」を実施している。
第1学年で行った研究基礎の準備を受けて、一部教科を除く幅広い担当者が「折り紙の数学」「アジアを探究する」「霊長類学実習」といった多彩な40講座程度を毎年開設。各講座で複数の研究班を構成することもあり、計100班ほどに上る。第一線の研究者などの協力を得ており、母校のためならと駆けつけてくれる卒業生も豊富だ。
このうち萩原英治校長も「人脈、ネットワークがすごい」と語るのが、卒業生でもある文理学科長(課題研究担当)の山本としこ教諭(物理)が担当するのが、理科課題研究「サイエンスコミュニケーション」だ。アートとサイエンスの融合分野を探究するもので、例えば絵画に描かれた星座の正確性を追究した18年度の研究は、19年の日本天文学会ジュニアセッションや高校生シンポジウムに参加し、高い評価を受けた。
近年では、課題研究をやりたくて入学してくる生徒も少なくない。山本教諭は「自然科学のみならず人文、社会科学を含め全分野のテーマを充実させることが目標です」と話し、21年度の準備に着手していた。
渡辺敦司(教育ジャーナリスト)