Programコロナ禍でも可能な国際交流
~国際交流を通しての探究活動の活性化~
1年次では、“What is a good global citizen?”をテーマに、オンラインを利用して、地球上のさまざまな場所で学ぶ同世代の若者と意見交流をする。Google Meet を使って、シンガポール・米国・韓国・コロンビア・オーストラリア等の高校生と、単なる「国際交流」ではなく、チームで取り組む自国文化・歴史・産業の紹介などを通して、価値観・世界観を共有し、同異を比べ、「なぜ」のやりとりを通して、2年次の探究活動の動機付けとする。またその「なぜ」がtolerance「寛容」の精神につながるはずである。そしてこれらの経験が英語での情報発信能力の向上ともなる。
2年次には、生徒240人が約60グループに分かれ、約15種類のアカデミックラボのいずれかに所属しそれぞれのテーマについて探究活動を行う。研究する過程で交流校にアンケートを依頼することもある。成果を同学年生徒や下級生、保護者を対象に日本語のポスター形式で発表する。海外生徒を対象に英語版のポスターも作成し、探究成果の発表を通しての交流を持たせたい。
3年次には、対面もしくはオンライン上で英語を使って成果を発表し、海外高校生との意見交流を通して、将来の学会発表につながる経験を積ませる。
活動レポートReport
継続的な国際交流を通して リサーチ力・英語力を伸ばす
2014年にSGHに指定された嵯峨野高校では、指定期間中に開発した教育プログラムを精査、それらをベースにした探究活動を全学年で進めている。そのうち1年次の「グローバルインタラクション(GI)」を中心とした探究型国際交流活動で、三菱みらい育成財団の助成を受けている。
GIは、「地球市民として生きるとは」という最終的な問いに向けて、「自分とは何か」から始まり、家族や学校、京都、日本、世界、地球と徐々にリサーチ対象を広げていく内容となっている。その過程で取り入れているのが、世界各国の高校生や京都在住の外国人との対話を通じた国際交流だ。現在同校では、シンガポール、米国、オーストラリア、韓国の5カ国11校と交流関係を結んでいる。同校の先生が修学旅行先のシンガポールの学校に赴き交渉をした、ALT(外国語指導助手)が母校とつないでくれたなど、関係構築のきっかけはさまざまだ。「歴代の先生が何年もかけて自らの手で築いてくれた関係性。つながりは強く、担当が異動になっても途切れることがありません」と探究活動担当の岡本領子先生は話す。これまでは対面での交流だったが、コロナ禍でオンラインに切り替え、継続的な交流を図るために年間スケジュールを立てているが、「国によって年度始まりが異なるため、スケジュール調整は大変」(岡本先生)だという。とはいえ2021年度にオンラインで11校と延べ30回の交流を実施できたのも、これまでの信頼関係があったおかげであろう。
その国際交流の場では、最初はアニメや音楽などお互いが関心を持っている共通の話題で話が弾むが、回を重ねていくうちに文化や考え方の「違い」に目が行くようになり、京都在住の外国人へのインタビューでは、「これまで学んだことで最も重要なことは何か」「人種差別をなくすためにはどうしらよいか」といった質疑が交わされ、生徒たちの質問にも奥行きが出てくる。同時に求められる英語力も高くなっていくため、GIをきっかけに自発的に外部の英語プログラムに参加する生徒も出てきているという。園山博副校長は、「普段の授業で基礎力を養い、その基礎力を発揮する場所として探究活動を設定し、探究活動で得た力をまた普段の授業に活かす。各授業の取組を有機的に結合させることで、深い学びを形成していきたい」と話す。国際交流を軸に1年間で得たリサーチ力・英語力を、2~3年生の探究活動につなげている。