Program生徒が生きがいを感じるための探究活動
毎週火曜日の「総合的な探究の時間」でこのプログラムを行う。
多種多様な感性を持っているために、小中学校不登校の経験があったり、人前で話すことや多人数でいることが苦手な生徒が多いのだと捉え、既存教科の枠を超えた探究活動を利用すれば克服できる(目の色が変わる)可能性があるとし、以下のような内容で行う。
1.新入年次:思考ツールや哲学対話を通し、自分の好きなところを見つけ探究活動のテーマを設定して、まとめる。
2.在校年次:各自のテーマに沿って実際に探究活動を行い、まとめる。
3.卒業年次:今まで行ってきた探究活動の視点から実際の進路実現につなげ、その過程をまとめる。
各年次ごとに文部科学省の提示している①課題の設定、②情報の収集、③整理・分析、④まとめ・表現を意識しながら最後の発表会につなげていく。併せて総合的な学習の時間の学習指導要領の目標にある「探究の見方・考え方を働かせ、横断的な学習を行い、自己の在り方生き方を考えながら、より良く課題を発見し解決していく」ことを達成していく。
また、少しでも他者との関わり合いを多くし、知見を広めるため、一般社団法人Glocal Academyの岡本尚也代表理事、東京大学の梶谷真司教授、宮崎大学の田阪真之介特別教授などの外部の方と積極的に接する機会を設ける。
活動レポートReport
定時制だからこその 探究活動とは
宮崎東高等学校定時制夜間部の歴史はまもなく50年を迎える。ここ数年は毎年約20人の生徒が入学してくるが、「小中学校で不登校だったなど、自己肯定感が低い生徒が少なくない」と西山正三先生は話す。これまでの探究活動の指導経験を買われ、異動してきた4年前から西山先生が試行錯誤しながら、探究プログラムを作ってきた。現在は、1年生では哲学対話※1などを通して自らの課題を見つけ、2・3年生ではそのテーマに沿って探究活動を行い、3・4年生※2で今までの探究活動の視点から自らの進路実現につなげる枠組みになっている。
その際に重視したのが、社会との接点だ。「不登校だった、また昼夜逆転というバックグラウンドを考えると、極端に社会との接点が限られた中で生活してきた生徒が多く、社会とつながるきっかけが重要でした」(西山先生)。哲学対話は東京大学の梶谷真司教授に指導をお願いし、教育支援事業をしている一般社団法人や、SDGsの指導・ESD支援をしている企業にも協力を仰いでいる。西山先生の人脈だけでなく、他の先生からも推薦があれば、依頼している。
また探究の要素を各教科で取り入れているのも特徴だ。マンダラートを使う時期に合わせて国語で新聞スクラップを使ってキーワードを増やしたり、情報の時間では発表に役立つパワーポイントの使い方を教える等、各教科横断で探究要素を取り入れている。「2年生は国語の授業をしないのですが、学力テストでは国語が伸びていました。この結果を見て先生たちも、探究の学力への影響力を改めて認識しました」と西山先生。現在はプロジェクトチームをつくり、校内を上げて探究活動に取り組む。
積極的に話すようになったり、「1時間では足りない」という声が出る等、生徒にも変化が出てきている。以前は半数が退学していたが今はほとんど退学者が出ていない。「本校の生徒を見ていると、思考力は高校からでも十分養うことができ、それに伴い学力も伸ばせるのだと気づかされます。既存の学校教育に当てはまらなかった子どもたちが集まる本校で、自分の興味関心、生きがいを見つけてもらうために探究活動をさらに充実させていきたい」と西山先生。定時制だからこそできる探究とは何か。宮崎東高校では教員が一体となって、そのモデルを創り上げようとしている。
※1 グループでテーマを決め、その問いを考えながら、対話し、思考力を養う
※2 3~4年間で卒業できる制度