みらい育成アワード2024Award

 2024年9月28日、JPタワーホール(東京都千代田区)にて「みらい育成アワード2024~知見、実践、その想いを分かち合う~」を開催しました。本アワードは、2023年度に採択した財団の助成先の皆さまの中から、優れた活動・成果に賞をお贈りするとともに、培われたナレッジやノウハウ、その想いを分かち合うことを目的としており、当日は144名の方にご参加いただきました。
 まず当財団の宮永俊一理事長から、「コロナ禍で叶わなかった対面での交流が可能となってから今年で2回目の機会を、ご参加されたお一人おひとりが楽しまれ、今後のお取組みの参考になる気付きや、日本のより良き未来に繋がる、横のつながりや夢を、お持ち帰りいただけるようであれば幸いです」と、開会のご挨拶をさせていただきました。また今回は、来賓として文部科学省 初等中等教育局 参事官(高等学校担当)橋田 裕様、経済産業省 商務・サービスグループ サービス政策課 教育産業室 企画官 吉田 直樹様にご来場いただいており、橋田様には壇上にてご挨拶いただきました。
 その後授賞式に移り、財団の選考委員が選出したグランプリ、準グランプリ、三菱みらい育成財団賞※を受賞された10団体の皆さまに記念品と目録をお渡ししました。
 受賞式後には、グランプリ受賞団体の皆さまから取組み事例についてプレゼンしていただきました。プレゼン後にはご来場の皆さま同士で感想を共有していただき、その後全体で質疑応答の時間を設けました。共感した、参考にしたい、詳細を知りたい等、さまざまな質疑がなされ、受賞者と会場との活発なやり取りが行われました。休憩後には「探究的な学びの充実に向けて」をテーマとして、採択先の4団体様によるパネルディスカッション、最後に会場にご来場いただいた皆さまでの振り返りのワークショップを実施しました。
※ 対象団体が5~9団体のカテゴリーはグランプリのみ授与。対象団体が4団体以下のカテゴリーは「三菱みらい育成財団賞」を授与

受賞結果

グランプリ

カテゴリー1(東地区)埼玉県立不動岡高等学校
カテゴリー1(西地区)香川県立小豆島中央高等学校
カテゴリー2一般社団法人 日本金融教育支援機構
カテゴリー3国立大学法人 東京農工大学
カテゴリー4公立大学法人 山口県立大学

準グランプリ

カテゴリー1(東地区)静岡県立沼津東高等学校
カテゴリー1(西地区)鹿児島県立奄美高等学校
カテゴリー2(株)トゥワイス・リサーチ・
インスティテュート
カテゴリー4上田女子短期大学

三菱みらい育成財団賞

カテゴリー5学校法人 昭和女子大学 現代教育研究所

宮永理事長より開会のご挨拶をさせていただきました

2024年度アワードの受賞者の皆さま

受賞結果

グランプリ

カテゴリー1(東地区)埼玉県立不動岡高等学校

学際的な「科学的素養」を持った「明日の世界を創造する品格あるリーダー」を育成する未来探究プログラム
~生徒自らが主役となり実践する課題研究~

【選考委員からのコメント】

学年毎の目標と活動を明確にしながら学校をあげて探究学習に取り組む体制が整備されており、SDGsや地域課題解決を主なテーマとして、生徒が主体的に課題を発見し、解決を目指して取り組めていると思われます。海外研修、ふくしま学習、地学野外実習などの探究学習を補完する活動も充実しており、またグループ別探究、外部講演、希望者対象探究、研究施設訪問などの多面的な活動をバランスよく実施しており、グランプリに相応しい活動と評価しました。

カテゴリー1(西地区)香川県立小豆島中央高等学校

総合的な探究の時間「櫂風」

【選考委員からのコメント】

地域と共に生徒を育てるという趣旨の下、コンソーシアムを設立し、充実した活動が行われ、その成果の地域への還元も期待できます。
プログラムは、必須の総合探究と希望者向けの2つを設定、3年間の活動を1年ごとに守破離の構成とすることで、生徒の幅を拡げ成長の深化が図れるよう工夫されており、財団のみらい育成にふさわしく、他校の模範となる探究活動であると高く評価しました。また、成果発表動画も大変わかりやすく、この点も評価できます。

カテゴリー2一般社団法人 日本金融教育支援機構

FESコンテストによるワークショッププログラム

【選考委員からのコメント】

重要であるにも関わらず、学校教育の中で敬遠されがちな金融教育を、一方的に大人が子どもに教えるのではなく、それぞれの子どもが自分の頭で考え、自分ごとにすることを促す手法が評価されました。
実施規模の拡大スピードにも注目すべき点があり、また、大学生が中高生に教えて1分動画を作るという企画、その中高生が小学生に教えるという「学びの入れ子式」の構造という仕組みが評価されました。

カテゴリー3国立大学法人 東京農工大学

GXを推進するグリーン・スキルを備えたGXリーダーを養成する
「GXサイエンスキャンプ(Green Transformation Science Camp)」

【選考委員からのコメント】

GX(Green Transformation)を主導できるGXリーダーを養成するプログラムです。全国から公募・選抜された高校生が、食料問題、環境問題、エネルギー問題の3分野について、それぞれのフィールドに足を運び、多様な最先端の現場を見学のうえ、講義や実習、討議、発表を実施しました。その後に、大学キャンパスでGXに関する提案を行いました。
農学・工学を融合した最先端の研究を行い、実践現場も持つ大学の強みを活かして、現代的な課題について、優れた学びの機会を提供できています。

カテゴリー4公立大学法人 山口県立大学

全学科混成チームで地域課題解決のアイデアを創出する「やまぐち未来デザインプロジェクト」

【選考委員からのコメント】

1年生全員が、全学科混成のチームを編成し、多様な専門性を有する教員の伴走のもと、地域課題解決のアイデアを創出する教育プログラムです。データや情報を活用した発想を行い、学内外に広く理解を得て、学外の多彩な人材からも助言を受けるなど、理念がカリキュラムに落とし込まれ、それを実施する仕組みが機能しています。学修成果を可視化し、測定する仕組みも堅実に構築されており、他のモデルとなるプロジェクトとして、高く評価されます。

準グランプリ

カテゴリー1(東地区)静岡県立沼津東高等学校

「揺籃」(ようらん)

【選考委員からのコメント】

キャリア教育をベースに、生徒が主体的に社会と繋がることを重視している探究学習は、独創的です。特に生徒が受入れ先の企業に対して依頼し、訪問するスタディーツアーの経験は生徒にとって、大きな影響を与えており、生徒の取組みを学年を越えて承継する大交流会もユニークな取組みとして評価できます。
また、定量的な評価に基づく改善姿勢も評価でき、今後、さらに充実していくことが期待できることから、準グランプリをお贈りします。

静岡県立沼津東高等学校

カテゴリー1(西地区)鹿児島県立奄美高等学校

「結」島の未来は,わたしたちがつなぐ。

【選考委員からのコメント】

旅行業者、地元企業と連携した旅行ツアーの企画等、5学科を有する学校の特色を活かしたユニークな取組みであり、生徒が主体的に活動している様子もうかがえ、素晴らしい取組みであると高く評価しました。
また、地域との関係性重視にとどまらず、地域連携そのものを大目標に据え、「結」という言葉を守ることで実現しようという取組みは、地方創生の鍵として今後求められてくるものであり、本プログラムの将来性にも期待し、準グランプリをお贈りします。

鹿児島県立奄美高等学校

カテゴリー2(株)トゥワイス・リサーチ・インスティテュート

「高校生が、人工知能・ロボット工学をはじめとする次世代技術による創造的な未来を
自分の言葉で語れるようになる体験型探究プログラム

【選考委員からのコメント】

教科書中心の授業ではカバーしきれない人工知能、ロボット工学といった「次世代技術」について生徒が主体的に探究できる学習プログラム『次世代技術探究ワーク』を開発・提供するプログラムです。
このような次世代技術は、技術初心者にとってとっつきにくいテーマですが、最前線で活用している事業者の協力により、先生のサポートの必要性が少なく、高校生が楽しく学べる、扱いやすいプログラムにした点が高く評価されました。

(株)トゥワイス・リサーチ・インスティテュート

カテゴリー4上田女子短期大学

「デザインの学び」の開発:今日の大学教育の中心をなす「知る」学びと芸術やデザイン分野で培われた
「行う(表現する)」学びを編み合わせる営み

【選考委員からのコメント】

デザイン分野での「行う」学びを「知る」学びと編み合わせることをテーマに、キャンパスの裏山や附属幼稚園、地元上田の産業をフィールドとして活かし、種々の面で限られた資源の中で、高い熱意をもってそれらを組み合わせ、教育プログラムを作り上げています。学生たちの気づきや成長を促し、教育成果を挙げており、学内でさらに組織化して定着させるとともに、他大学への波及効果を及ぼすことも期待できます。

上田女子短期大学

三菱みらい育成財団賞

カテゴリー5学校法人 昭和女子大学 現代教育研究所

先生による、先生のための、先回り研修プログラム(略称:先3)
~4つのチカラでミライを自作自走する先生コミュニティの創出~

【選考委員からのコメント】

教員に必要なチカラとして、「批判的思考」「創造的思考」「論理的思考」「対話」の4つをフォーカスした研修プログラムのコンテンツ作成に向けた取組は順調に進んでいて、計画的に実践されているとのことです。
課題と捉えている研修効果の評価方法の改善や工夫については、今年度取り組む予定との事ですが、そういった改善を通じて研修プログラムの一層の改善に取り組んでいただけたらと思います。

学校法人 昭和女子大学 現代教育研究所

パネルディスカッション・
振り返りワーク

 パネルディスカッションでは、パネリストとして山梨県立甲府西高等学校 高見澤 圭一氏、東京学芸大学 西村圭一氏、公立大学法人 山口県立大学 池田史子氏、株式会社 roku you 下向依梨氏にご登壇いただき、京都大学総合博物館准教授 塩瀬隆之氏にモデレーターを務めていただきました。今回のテーマは、「探究的な学びの充実に向けて」。議論を深めていくために、さらに、①教科の学びへの接続、② 理数の学びへの接続、③ 協働的な学びへの接続、④ キャリア教育への接続という4つのトピックスに沿って、それぞれの知見を踏まえてお話しいただきました。

助成先の皆さまをパネリストに迎えてディスカッションを行いました

熱心にディスカッションに耳を傾ける参加者の皆さん

 続いては、会場の参加者全員で3~4人のグループを作って、簡単な自己紹介、また「ここまでの話を聴いて思ったこと、感じたこと」について振り返る時間としました。別グループを作っていただいて2回繰り返し、最後に挙手いただいた方全体に感想共有いただきました。「私はカテゴリー2と5で助成を受けているが、今日のグランプリの発表を聞いて、『こんな団体があるのか』と思った先生方は多いのではないか。高校とカテゴリー2・3がなかなか繋がらないということが課題だと思っている。外部と繋がる機会をこれからも積極的に作っていきたい」「活動しているとどうしても自分たちの学校だけで集約してしまうが、今日の話し合いを通じて外部には同じような思いを持っている人たちが日本中にいて、支えてくれる人たちもいると感じた。なので、グランプリの方々の成果発表動画を見直したい。そこに絶対ヒントがあるはずだし、繋がりができると思う」「先ほどグループ活動などで周りの活動に乗っかって、自分自身ではあまり役割を果たさない子、いわゆるフリーライダーの話があったが、10年間探究活動をしてきた経験から言わせていただくと、そういう子どもたちも自分たちができていないことに気が付いているし、心の傷を負っている。やる気を引き出せないのは我々教員の責任であり、生徒たちを信じて寄り添えば、彼らの行動は変わるはず」「進学校でアントレプレナーシップの活動をしているが、進学指導・教科指導と探究学習が、他校では相容れない状況になっているという話があった。受験指導と探究活動の関連性を、一教員として、またアントレプレナーとして今後広めていきたいと思う」といった感想を頂きました。
 最後に当財団の妹背正雄 常務理事から閉会の挨拶をさせていただき、その後の懇親会ではご参加いただいた皆様に交流を深めていただきました。

ワークショップでは、3~4人のグループを作っていただき、これまでの感想などを話し合っていただきました

2回チームを変えて行った振り返りワーク。1回約12分の枠では収まらないほど 話が盛り上がりました

妹背常務理事から閉会のご挨拶をさせていただきました

アワード終了後には、懇親会でさらに交流を深めていただきました

参加された皆さまのご感想

  • 民間のコーディネーターとして探究に携わっています。先進的な事例をたくさん吸収できたことと、教育支援されている外部の方々の情報を得ることができて、得るものが大きかったです。今日知り合いになった方と視察に行きます、近くに来られた時にお会いしましょう、というお話しができるほどの繋がりができた貴重な時間でした(カテゴリー1)
  • 一番印象に残ったのは、パネルディスカッションの東京学芸大学の西村先生のお話です。本校では、工学的なアプローチから探究の学びを進めていますが、西村先生の理系の学びのお話しはまさに本取組みにまさにマッチングする話で、いいアイデアを頂きました。この後の懇親会で西村先生に詳しい話を聞きたいと思っています(カテゴリー1)
  • 同じカテゴリーでグランプリをとられた山口県立大学様の、取組み成果を定性的に定量的に測っているという話が、プログラムそのものの改善に繋げられる面で効果的だなと思い、とても印象に残りました。また高校の取組みを伺って、探究の経験を経た学生が私の授業を受けているんだと感じました(カテゴリー3)
  • 今日のお話しを聞いていて、課題はたくさんあるけれども、皆さんの思いが繋がったときにいろいろ変わっていくんだろうなっていう希望を感じた会でした。そのためには新しい仕組みや仕掛けなどを整えていく必要があると思いますが、教員の善意だけでは持続可能性を担保できないと思うので、カテゴリー5の助成先として、私たちも先生方と一緒に考えながら提案・提言してきたいなと改めて思いました(カテゴリー5)
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