“外部”の人へ伝える
その難しさを超えた先にある学びと成長

岡山学芸館高等学校(カテゴリー1 │ 2021年度)

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兵庫県立御影高等学校(カテゴリー1 │ 2021年度)

 3月14日、岡山学芸館高等学校(21年度助成校)にて、同校と兵庫県立御影高等学校(21年度助成校)との交流発表会が開催されました。御影高校から他校とのコラボレーションについて相談を受けた三菱みらい育成財団が隣県の助成先・岡山学芸館高校に声掛けし、実現しました。岡山学芸館高校からは1・2年生希望者90人、御影高校からも希望した総合人文コース1・2年生61人が参加。この日に向けて、企画・運営を担う両校生徒の有志らがオンラインで打ち合わせを重ね、当日を迎えました。

 13時すぎに岡山学芸館高校の体育館に集まった生徒たちは、同校の木下 秋先生の開会のあいさつの後、生徒たちのアイデアによるバースデーラインとジェスチャーゲームのアイスブレイクを実施。最初は硬くなっていた生徒たちも、ゲームを通して和やかな雰囲気に。

アイスブレイクのバースデーライン(誕生日順に並ぶ)で、両校の生徒がランダムに並んだため、前後で会話が生まれていた。

。ジェスチャーゲームではなかなか伝わらないチームの様子を見て、笑いが起こり、和やかなムードに。

 その後は六つの教室に分かれて、40分ずつ両校の生徒が交互に1~4人のグループごとに課題研究の成果発表を行いました。その間、生徒たちは関心のある発表を幾つも回り、感想シートに熱心に書き込んでいました。「粉が飛び散らないチョーク」の発表をした岡山学芸館高校の生徒は、「今まではオンラインでの発表会が多かったので、御影高校の皆さんに、実際に試作品に触ってもらって、直接感想が聞けたのはうれしかった」と話していました。一方、御影高校の生徒は、「話し方や身ぶり手ぶりなどプレゼンの仕方がとても上手。勉強になります」という感想が聞かれました。

 15分の休憩を挟んで、選手交代。アイドルグループの歌詞をテキストマイニングでリサーチした御影高校生の発表を聞いた岡山学芸館高校の生徒は、「アイドルという身近なところへの目の付けどころが面白い。発表の内容もなるほどと思うところがあった」。机を挟んでの発表で生徒同士の距離も近く、まるでクラスメートのように会話が盛り上がっているところもありました。

 御影高校の橋口徹教頭は、「本校は文系中心の取り組みですが、学芸館高校の皆さんの発表は理系の視点が盛り込まれていて、文系の発表であっても、データ活用やエビデンスの導き方などをしっかり押さえている。文理融合という課題に取り組む上で、勉強になりました」。御影高校の生徒たちを引率した飯川未央先生は、「学芸館の生徒さんは表現力豊かでプレゼン力の高さを感じました。本校は次の金・土曜日に発表会があるのですが、学芸館の皆さんの発表を見てスイッチが入ったんじゃないかと思います」。

 一方、岡山学芸館高校の橋ケ谷多功先生は「校外の方に発表するのは2年ぶりで、生徒もいつも以上に力を入れて発表していたと思います。御影高校さんの分析力や先行研究の読み解き方、またテーマの設定も生徒さんが純粋に興味を持ったものをアカデミックに掘り下げている点は見習っていかなければならないなと思いました」と話しました。

Voice

岡山学芸館高校の生徒
(御影高校の発表に対して)

坂道グループの曲はよく聴くのですが、歌詞を深掘りし、考察したことがなかったので着眼点がすごいなと思いました。

いろいろなCMのフレーズを歌ってくれてうまいなと思った。CMによって商品の売り上げや興味の持ち方に影響があると分かった。どんな形でもまず興味を持ってもらわないと買ってもらえないので、人間の頭に残るような音楽を作っているんだと思った。楽しかったです!!

自分が研究しようと思っていたことがすでに研究されていて、中国に絞って研究したりしていてすごいなと思いました。私も自分がしてみたい研究がすでに研究されていて自分で新しいものを見つけて研究していきたいと思いました。

御影高校の生徒
(岡山学芸館高校の発表に対して)

図示したり、実際に手に取って見せてもらえたりするなど、自分の感覚で確かめることができ、より深い理解につながりました。みんなの反応を見ながら、ハキハキ話していて、自分が2年生になった時のお手本にしたいなと思いました。

紙芝居形式で、分かりやすくまとめられていたのが印象的でした。実際に考えたことをアンケートにしてみたり、企画してみたりと行動に移されていたことがとても素敵でした。

区役所と高校生が協働して地域活性化に取り組むと本当に良いものが作り上げられるのだと改めて感じることができました。

教師の使命を改めて実感

岡山学芸館高等学校 木下 秋先生

  三菱みらい育成財団を通じ、御影高等学校の先生方および生徒とつながりを持てたことは本校にとって何よりも財産となりました。まずはこのような機会を設けていただいたことを、財団および御影高校の皆さまに厚く御礼申し上げます。 コロナ禍により、お互いのを感じる発表を経験することがないまま高校2年生は課題研究が終わりました。そのような中、他校との研究発表交流会を対面で実施できたことは、生徒たちにとって大変刺激的なものとなったようです。感想シートを見ると、探究の目の付けどころに感心していたり、発表の仕方が上手で参考になったりというように、おのおのの着眼点でもって発表を聴くことができたようです。目の前の相手に質問をする。その質問の意図をくみ取り回答をする。この当たり前の質疑応答は普段の友達同士の会話では決して得られない学びと成長を与えてくれます。そして、特筆すべきは交流会の運営を任された代表生徒たちの成長です。

 本校の課題研究運営部の反省すべき風土として、完成されたものを用意し過ぎるきらいがあります。タイムスケジュールの作成と管理、司会原稿、会場準備、入念なリハーサルなど、すべてが教員主導で進めてしまう傾向にあります。そのため、教員間での最初のオンラインミーティングにて御影高校の橋本先生からの「生徒主導で交流会を運営しましょう」という提案には戸惑いと不安がありました。代表生徒の「こんなに大きな行事を一から計画するのは大変。だけど貴重な経験ができてうれしい。もっとこうしておけばよかったとか反省点もあるけど、すべて次につながると思うので頑張ります!」という言葉が印象的でした。われわれ教員が学ぶべきは完成された会の運営方法ではなく、生徒にトライ&エラーを繰り返させる環境と時間をいかに用意してあげられるかということでした。このような場をしっかり用意していくことが教員の使命であろうと思います。今回の交流会は2学年で実施されたため、経験は下級生に引き継がれていきます。もっと多くの教員を巻き込んで次年度以降も継続的に交流会を実施させていきたいです。

異なる「背景」の相手との交流で得た大きな学び

御影高等学校 橋本 淳史先生

  両校で協議し、ゴールを「お互いの課題研究活動の内容を相互交流することによって、1年生はこれから始まる本格的な課題研究に対して前向きな姿勢を育み、2年生は今までの研究活動を他者に発表することで、今までの課題研究活動を自分のものとして明確化させる機会とする」と初めに共有した上で、交流会を計画・実施しました。1年生の感想や、帰校後に実施した、校内での課題研究発表会で堂々と発表する2年生の様子を見ると、十分に目標を達成できたものと考えています。

  また全体会の進行や運営、分科会の流れの計画を、できるだけ「大人」は登場せず、両校の生徒が中心となって行いました。そのプロセスを目の当たりにし、とてもいい経験をさせていただいていると感じました。と言うのも、この交流会を企画・運営するプロセスでは、自分のアイデアを、互いに初対面の異なる「背景」(=学校も違う、住んでいる県も違う・・・)の相手に伝えることが必要です。しかし、代表に立候補した本校生は、それを難しいことだと認識していないようでした。毎日会う、同じクラスや部活動の友達となら、互いに意見をぶつけながら議論し、最終的に折り合いをつけたり、分かり合ったりすることは、確かに比較的容易なことかもしれません。ところが、今回のような、学校を越えた交流の機会を運営するに当たっては、気付かないうちにそれぞれの学校で「常識」とされていることも含め、一度自分の中で自分の考えを客観視し、相手に伝わるように言葉を紡がなくてはならないので、高度な「思考」が要求されます。しかも、議論はZoomを介して実施したということもあってか、互いの意見が違えば、なかなか「落としどころ」が見つかりません。今回、企画や運営に携わった生徒たちは、一度、自分の考えを捉え直し、正しく的確に伝わるように構成しながら発信するという過程を経て、議論が平行線をたどったり、分かり合えたり・・・とさまざまな経験ができました。 

  これらは、一つの課題に対し、協働的に解決することがより求められていく今後の社会で生きる生徒たちにとって、大変有意義な経験にもなったと考えています。改めて、財団の皆さま、岡山学芸館高校の先生方に心より御礼申し上げます。

コラボレーションに関わった皆さん

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