カテゴリー 32021年採択

認定NPO法人 very50

対象者数 100名 | 助成額 870万円

https://very50.com/

Program社会起業で世界を変える実践型アントレプレナーシッププログラム「EGG:Entrepreneurship in the Global Ground」

 将来的にグローバルな環境下でリーダーシップを発揮して活躍するための個々のリーダーシップ育成に焦点を当て、実践的なプロジェクト型のプログラムを実施する。本プログラムは大きく分けて以下の三つのパートから成る。​

 一つ目のパートではオンラインにて、グローバル環境へと視野を広げる講義形式の「Global Citizenship」と個々のリーダーシップを発掘する1on1型の「Leadership Mentoring」を実施。​

 二つ目のパートでは、実際に活動をしている社会起業家の経営課題を題材に、高校生たちが問題解決能力を鍛えながら調査・分析・実行までを行う「Mission on the Ground」を実施。​

 三つ目のパートでは一つ目、二つ目のパートを経て、リーダーシップの発揮の仕方が社会起業家という形が望ましいと考えられる30人を選抜し、チームで実際の起業プランの起案、実行までを実際に活動している社会起業家の伴走支援の下で行う「Entrepreneurship Camp」を実施する。​

 これら三つを通して、参加する全ての学生に対して、個々のリーダーシップ発掘とその育成を行い、その中で将来的に社会起業家として活躍する可能性のある異能発掘を行い、実践的な学習によって異能育成を図るプログラムである。

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実践的なプログラムを通じて、「自立した優しい挑戦者」を育成

 「知識やスキルに裏打ちされた自立心と、社会に貢献したいという真摯な志。これらを50:50で併せ持つ、“自立した優しい挑戦者”を発掘・育成したい。very50(ベリーフィフティ)という法人名には、そんな思いが込められています」と、統括マネージャーを務める杉谷遼さんは語る。こうした人材を育成するために個人、企業、学校、地域などにプロジェクト型教育プログラムを提供している同法人が重視しているのが“実践”だ。「当法人のメンバーはビジネス畑の出身者がほとんどで、実際に成果を出すことへのこだわりが強いのが特徴。Entrepreneurship in the Global Ground(EGG)でも、“机上の空論”になりかねない従来のビジネスコンテストとは異なり、実社会での営業や販売などを通じて、課題解決につながる成果を残すことを目指しています」。

 実践重視、成果重視の姿勢を象徴するのが、EGGの中核となる、社会起業家の経営課題を題材とした実践型プログラム「Mission on the Ground(MoG)」だ。2021年度は就業機会の乏しい女性の自立支援を目的としたフェアトレード商品や、サトウキビの搾りかすを活用したエシカルなデニム商品の販売などに取り組むアジア各国の社会起業家との協働を実施。12月末には、京都と東京の2会場で宿泊型の現地プロジェクトを開催し、それまでオンラインミーティングで検討を続けてきた施策を実際に行動につなげた。その結果、実践販売会において合計20万円以上の売り上げを達成するとともに、営業活動による販路獲得やSNSを通じた認知向上など、社会起業家に貢献する大きな成果を出した。社会起業家が直面する課題を共有し、その解決に寄与する成果を出すことは、高校生にとってはやや高いハードルに思えるが、複雑かつ困難なプロジェクトに挑んだ経験は、実際に社会で活躍する上で何が必要かを学び取るための貴重な機会になったはずだ。

 「これまでも学校単位、クラス単位でのMoGを開催していましたが、今回はEGGという、少数精鋭かつ、より成果にこだわったプログラムとして実施するため、参加志望者にも相応の覚悟と準備を求めました。申し込み時点で先生方の推薦書や長文の志望動機の提出を条件とし、ある程度スクリーニングされたことで、参加者全員から高いスキルと確かな目的意識が感じられ、まさに“異能発掘”にふさわしいプログラムになりました」と、杉谷さんは確かな手応えを語る。

世界中のさまざまな問題に果敢に挑戦していく「自立した優しい挑戦者」を育成することが認定NPO法人very50のミッション。

EGGの最初のフェーズ「Global Citizenship」では、社会貢献やビジネス、スポーツなど多様な分野で活躍するゲストによる講義と、計24時間に及ぶ問題解決のワークショップを、約2カ月にわたりオンライン形式で実施した。

MoGにおいて、障がい児のクリエーティビティを活用した商品開発を行うベトナム企業を担当したチームは、描きたいものを自由に描く「100%Playful」というコンセプトを体感してもらうアートワークショップを企画。形に残るアウトプットによって、同社が日本で展開するための足掛かりをつくった。

選抜メンバーによる「Entrepreneurship Camp」の中間成果発表では、厳しい指摘も相次いだが、参加者一人ひとりの意識の高さと、メンターによる継続的なサポートもあり、最終発表会では全員が確かな成果を発表できた。

社会課題を解決できる、力強いアントレプレナーシップを育みたい

 「EGGでは、将来に向けた大きな可能性を持つ高校生を対象としていることから、参加前と比べてどのような変化があったかを重視しており、その検証手段としてプログラム前後でのアンケートを活用しています」と杉谷さんは語る。

 アンケート結果では、プログラムに対する高い満足度とともに、「各分野で活躍する大人との対話から、今までの自分になかった考えを知ることができた」「実際に行動することで、自分たちの社会に対するパワーとともに、大きな壁を実感できた」といった声が見られ、実践的な学びの機会となったことがうかがえる。また、同法人では「高校生が実践的な学びを継続するには保護者の理解と協力が不可欠」との考えから、保護者にもアンケートを実施している。その回答を見ると「自立心が出てきた」「社会問題への関心が高まった」「自分に不足している点と向き合う姿が見られた」などの声が上がっており、EGGへの参加を通じて多くの出会いや気付き、成長につながる体験を得られたことが見て取れる。

 初年度の実施結果から、杉谷さんをはじめとするスタッフは「自分たちが理想とするアントレプレナーシップに対する解像度が高まった」と感じているという。「参加した高校生たちの取り組みや、参加前後での変化を見て、アントレプレナーシップとは、必ずしも起業そのものによって身に付くものではなく、自分のこだわりや熱意を持つオーナーシップと、成果を残すことまでこだわるプロフェッショナリズムの“掛け算”によって醸成されるものだと実感しました。この発見を基に、次年度からはプログラムの目的を“社会起業家の輩出”から“アントレプレナーシップを持った人材の輩出”にシフトし、世界が直面する社会課題の解決に寄与できる人材育成を目指します」(杉谷さん)。

 学ぶだけでも、実行するだけでもなく、成果を残すことまでこだわり続ける同法人の活動が、社会に変革をもたらすチェンジメーカーを生む、まさにEGG(卵)となることを期待したい。

MoGの現地プロジェクト中には、参加者が日々どんなことに挑戦し、どんな葛藤の中でプロジェクトを実行していたのかについてメンターが毎日記録を付けている。この内容に、EGGを通してのスタッフ・メンターからのコメントをプラスして後日各ご家庭に郵送。一人ひとりの参加者に寄り添う丁寧な対応も保護者からの信頼獲得につながっている。

オンライン期間中は、参加者同士やメンターとの間での活発な意見交換を通じて一体感が育まれた。オンラインを通じた交流はEGG修了後も継続しており、参加者にとって貴重な財産となっている。写真は第一期生の同窓会。

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