Program山形大学発IT人材育成
~シリコンバレー版スーパーエンジニアプログラミングスクール~
世界をリードしている米国・シリコンバレーのスーパーエンジニアは確実に成果を出している。
本件では、コロナ禍で加速したオンライン教育環境を生かし、直接最先端のエンジニアと高校生を掛け合わせて、山形大学のデータサイエンス高次プログラムを取り入れる。実践的に学ばせることで技術の習得に加えて、世界や最新技術の視点に立ち、自らが課題解決に挑戦し、成長していく学びの機会を提供し、飛び抜けた異能を持つ人材を発掘するプログラムである。
シリコンバレーのスーパーエンジニアが、現在、日常の開発業務において使用しているプログラミング言語(Arduino、Processing、etc.)を、スーパーエンジニアが作成したWebコンテンツと山形大学のデータサイエンスの高次プログラムを取り入れながら活用して学ぶ。また、Webコンテンツを学ぶ際に、幾つかの小型マイコンモジュールを教材として使用し、プログラミングの内容・意味について実践を通して学んでいく。
活動レポートReport
スーパーエンジニアから直接講義を受ける実践的プログラム
現在日本では、国策としてのデジタル化が急速に進められているものの、対応するIT人材の不足により、世界のレベルからはやや立ち遅れている感がある。本プログラム「シリコンバレー版スーパーエンジニアプログラミングスクール (SEPS)」は、シリコンバレーのスーパーエンジニアが、日常業務で実際に使用しているプログラミング言語(Arduino、Processing、Python)を使い、現役のスーパーエンジニアが作成したWebコンテンツと山形大学のデータサイエンスの高次プログラムを取り入れながら学ぶ、高校生向けの画期的なIT人材育成プログラムである。
「日本におけるIT人材不足はますます深刻になっている。本プログラムによって、スーパーエンジニアから直接教育を受け、実践的な学習する。さらに、スーパーエンジニアとの交流によりマインドチェンジを図り、卓越した才能を育成していきたい」と語るのは、SEPSにおいて中心的な役割を果たす、山形大学アントレプレナーシップ開発センター(旧・国際事業化研究センター)センター長の小野寺 忠司教授。
SEPSの学習スタイルは、サイトに掲載されたWebコンテンツを活用し、事前学習~オンライン講義・質疑応答~復習を1~2週間のサイクルで半年間繰り返すもの。シリコンバレーのスーパーエンジニアによるオンライン講義は、土曜日か日曜日に設定され、質問などがある場合にはその講義の際か、オンラインコミュニケーションツールを用いて行う。また、プログラミング言語の学習だけではなく、「M5StickC」または「M5StickC Plus」という、手のひらサイズの小型マイコンモジュールを教材として使用し、実際にモジュールを動作させてシステムを構築する実践学習も行っている。コンテンツは基礎編5講座と探究講義3講座、応用編Ⅰ(実践編)、応用編Ⅱ(高次プログラム6講座)で構成。基礎編の講義および応用編Ⅰの指導は3人のスーパーエンジニア他が担当し、基礎編の講義終了後のコミュニケーションタイムでは、世界最先端で活躍するエンジニアと自由に会話することもできる。これには自主参加にもかかわらず多くの生徒が講義終了後もオンライン上に残り、講師との刺激的なコミュニケーションを楽しんでいるという。
また、本プログラムは参加校の先生方も参加が可能。スーパーエンジニアのティーチングメソッドを学ぶことで、先生自らが高校生の育成を実施していけるような内容も組み込まれており、各校少なくとも1人は先生も参加しているという。
山形県内の工業高校を対象に試行スタート
プログラムがスタートしたのは2020年。まず山形県内の工業高校4校を対象に試行が開始された。翌2021年度前期には、山形県内全ての工業高校に対象を広げて試行を継続実施。当財団の助成が始まった2021年後期からは、さらに東北6県の全ての工業高校へと拡大して本格実施が始まった。その際、参加校から「講義履修終了後に行われる成果発表会においては、山形大学が実施しているアントレプレナーシップ教育や科学的発想の講義が重要」との声が寄せられたことから、「探究講義」のカリキュラムが追加され、「基礎編~探究講義~応用編」という流れが出来上がった。
「山形大学はアントレプレナーシップ教育においても、高い評価をもらっている。本プログラムを通じて、アントレプレナーシップとスーパーエンジニアリングの両輪での育成を図りたい」(小野寺センター長)とのことだ。
対象を東北6県に広げ、工業高校以外にも拡大
2022年度になると、東北6県の工業高校以外の学校への展開も始まり、半期で120人の工業高校および普通高校の生徒がSEPSを学んでいる。
また、プログラムの受講者募集に当たっては、山形放送と協力して東北6県のテレビ局と連携を図り、テレビ・ラジオCMで広く周知を図るとともに、紹介チラシを作成。東北6県の各高校にダイレクトメールで送付し募集を行っている。その他にも、SEPS専用のホームページを開設し、ホームページ上の申し込みサイトから、生徒が直接申し込みもできる他、YouTubeビデオをリンクさせて詳細な内容を掲載。申込者が内容の理解をしやすいようにしている。
実施体制に関しては、今後も引き続きシリコンバレーのスーパーエンジニアという専門家集団と連携。運営に関しては、山形大学アントレプレナーシップ開発センターが事務局を担当し、山形大学データサイエンス教育研究推進センター(DERP)と協力しながらプログラムを進めていく。
自らの発想で、バラエティーに富んだ研究発表
「成果発表会で発表されるものの中には、『屋内から積雪量が分かるシステム』といった雪国らしいものから、『やり投げにおける角度・加速度』など高校生らしい部活動関連、またペットの給餌に関するものなど、実にバラエティーに富んでいます。ただ、いずれのシステムも、例えばただアラームが鳴るだけという単純な仕組みではなく、取得したデータをサーバー上で保存・管理し、どこにどんな形で通知させるかという一歩進んだシステムとして機能させることを目標に開発されています」(小野寺センター長)。成果発表会で優秀な成績を収めた生徒に対しては、夏季休暇期間などを活用して、米国シリコンバレーの企業におけるインターンシップを実施することも検討している。
実際に受講した生徒の満足度は非常に高く、特に「世界的に活躍するスーパーエンジニアの方から、直接コメントを頂くことで、モチベーションが上がり、達成感も感じられる」といった感想が多く寄せられている。また、参加校の先生からも、「ユーザー側の視点に立って考えるようになった」「論理的な思考が身に付き、自信を持って意見を述べるようになった」など、受講前後での生徒の明らかな変化に驚く声が多い。
「日本の国としてのスタートアップに対する注力度合いは、米国に比べるとまだまだ始まったばかりといったところ。こうしたプログラムによって、『夢を達成する』という目標を若者に持たせてあげることが、IT人材の拡大につながっていきます。そのポテンシャルは、日本にも十分あると考えています」と小野寺センター長は語る。