Program「潜在能力(Capabilityケイパビリティ)を掘り起こす」プログラム
~井の中の蛙、大海に飛び出そう!!
本校は今年100周年を迎える伝統校であり、北海道民からは“GANTO(岩東、がんとう)”の愛称で呼ばれ、これまで地域はもとより国内外で活躍する優れた人材を多く輩出してきた。しかし地域の過疎化に加え、札幌圏に隣接した地域故、札幌の高校への生徒の流出が顕著となり、本校に進学する生徒の質も変わってきた。勉強に部活動に地域に世界に飛び出していた“自信にあふれたGANTO生(岩東生、がんとうせい)”は、もはや過去のものとなり、与えられることを待ち、与えられたことをこなすことで満足する、“井の中の蛙的なGANTO生”となった。
そのような“GANTO生”の、心のエンジン駆動に必要なリソースは、「総合的な探究の時間」を軸とした教育活動により充填される「自信」である。北海道、特に本校が位置する空知地域におけるGANTOへの期待は、スクールミッションでもある「我が国や国際社会の問題や課題を発見・解決し、新たな価値を創造できる生徒の育成」である。本プログラムは、“井の中の蛙的なGANTO生”が本来持っている、「潜在能力(Capabilityケイパビリティ)を掘り起こす」ことで「自信」を持たせることを狙いとした「総合的な探究の時間」を軸にした教育プログラムである。
活動レポートReport
おとなしくなった生徒の積極性を短期間で引き出す
2022年度に創立100周年を迎えた北海道立の岩見沢東高校は「岩がんとう東」の略称で知られる。2008年度には道教委より医進類型指定校を受け、22年度には特進クラスも設置された。
そんな空知地方のトップ校も、少子化の影響は避けられない。1991~01年度に教諭として勤務し、20年度に再赴任した坪川泰嗣校長の目には「生徒たちが随分おとなしく静かになった」と映った。
前任の道立教育研究所研究・相談部長時代に総合的な探究の時間の重要性を確信した坪川校長は、同時期に赴任した山口晴敬教諭を委員長として、年度途中にもかかわらず「総合的な探究の時間推進グループ」を立ち上げ、生徒の自主性や積極性、協働する力を高めることを狙いとした計画づくりに着手。21 年度入学生から3段階で構成される3年間の活動を本格実施している。
かつて石炭が集積する交通の要衝として発展した岩見沢市は、現在では地域課題の先進地でもある。そこでスクール・ミッション「我が国や国際社会の問題や課題を発見・解決し、新たな価値を創造できる生徒の育成」の達成を目指し、生徒の潜在能力を掘り起こすことで自信を持たせることを目指した。
1年次は地域(空知・北海道) を知る「潜在能力開発Ⅰ」として、地域で活躍している人材や地域の外部機関からの知見を得たり、三笠地域ジオパークや、アイヌをテーマとしたナショナルセンターである民族共生象徴空間(ウポポイ)などのフィールドワークを行ったりしながら、探究課題を設定するための情報を収集した。
2年次は地域(同)に飛び出す「潜在能力開発Ⅱ」として、「GANTOゼミ」を実施。地域コンソーシアムへの発展を視野に入れた市企画財政部企画室などからなる「GANTOゼミ実施推進協議会」の協力により、市の抱える課題についてあらかじめ理解を深めた上で、紹介を受けた50の事業所を生徒たちがクラスの枠を超えて訪問(1事業所4名程度)して探究課題を設定(GANTOゼミⅠ)、その後、校内でグループごとに探究課題の調査・研究(同Ⅱ)、事業所を訪問して調査・研究成果の報告(同Ⅲ)、校内での調査・研究成果の発表(同Ⅳ)と段階を踏んでいる。
3年次は日本・世界に飛び出す「潜在能力開発Ⅲ」として、沖縄県恩納村地域や、先住民族マオリの住むニュージーランド・ロトルア地域との交流を予定している。
渡辺敦司(教育ジャーナリスト)