Program「3つのPをベースとしたPBL」
(1年次「問題発見力」2年次「問題解決能力」を育む2年間の教育プログラム)
三つのPとは:Problem-Based Learning/Project-Based Learning/Place-Based Learning(地域の問題を学習課題とした実践を伴うプロジェクト学習)を指す。
高1「産業社会と人間」において、さまざまな仕事に就く方々へのインタビューを通して、自分自身のキャリアを考え、多様な職種の話を通して、生徒自身が自己の興味関心を掘り下げる。インタビューは働いている現場に赴く場合もあれば、オンライン会議室アプリを活用して地域外の方の話を伺うこともある。地域内外の社会人が挑戦してきた「問題解決」をヒアリングし、その話を通して「問題発見能力」を育む。『仕事図鑑』としてインタビュー内容をまとめ、その課程で写真やデザイン、文章構成などの表現力を養う。
高2「総合的な探究の時間」においては、自らが取り組みたい地域の問題について実践的に取り組む。身の回りの「理想と現実の差異(問題)」を発見し、その差異を埋めるための課題設定を行う。設定した課題を進めるプロジェクト学習に2回取り組むことで実践力を養い、社会に出たときに役立つ力を育む。取り組むテーマは「自らの興味関心(WILL)」、「自分でできること(CAN)」。「地域の解決すべき問題(MUST)」の重なりで設定することで、主体的に「問題解決」に取り組む姿勢を育む。
活動レポートReport
地域課題から主体性育み生徒を「飛行機人」に
北海道北東部の女満別町と東藻琴村が2006年に合併した大空町。村立から町立になった北海道東藻琴高校(農業科)に21年度、道立の北海道女満別高校(普通科、現在は女満別キャンパス)を移管・統合する形で新設されたのが町立の北海道大空高校(総合学科)だ。
開校に際して、ベネッセコーポレーションなど教育産業で勤務経験があり、高校魅力化プロジェクトや探究学習のサポートに取り組む一般社団法人れいほく未来創造協議会(高知県土佐町)事務局長の大辻雄介氏を民間人校長として招請。全国から生徒を募集し、リベラルアーツにも取り組む学び合い・対話中心の町公設塾も開設した。
モットーの「世界と地域をつなぐ大空で、路みちを切り拓ひらく飛行機人を育む」は、女満別空港はもちろん、故・外山滋比古氏の『思考の整理学』の一節「これからの教育は『風に乗るグライダー人間』ではなく、『自らのエンジンで路を切り拓く飛行機人間』を育まねばならない」にちなんだ。
PBLの「3つのP」とはProblem、Project、Placeを指し、「地域の問題を学習課題とした実践を伴うプロジェクト学習」を目指す。進路指導担当の井上るり子教諭によると、「主体性を育む」が最大の柱だ。
1年次の必履修科目である「産業社会と人間」(産社)では地元関係者や空港関係者はもとより、校長の人脈もフル活用して地域起業家、新聞記者、司法書士などが授業を実施。オンラインでもミュージシャンや広告会社、アナウンサー、アロマセラピスト、写真家などの多種多様な話を聞く機会を設けている。豊富なインタビューは「仕事図鑑vol.1」としてまとめた。
2年次の総合的な探究の時間は、週3時間の設定。「地域を巻き込む活動」を含めた探究課題を設定するよう勧めており、後期は前期に取り組んだ課題をステップアップし、マイプロジェクトアワードにも参加することにしているが、まったく違ったテーマを設定する生徒やグループもある。
前期はゲームなど「娯楽」をテーマにしていた3人のうち、髙橋颯真さんと村井雅治さんは後期、女満別キャンパスの有効活用策の検討に方向転換。キャンプ場を設けた宿泊や、屋上での高校カフェなど、年間を通じて人を呼び込めるアイデアを熱く語り合っていた。杉澤夏希さんと原田華奈さんは「物産展」をテーマに、公設塾で紹介された関西大学の学生2人とオホーツクの特産品を大阪市で販売する計画だ。
渡辺敦司(教育ジャーナリスト)