ProgramLINKネクスト~最上の地で最上の知恵~
平成31年度から令和3年度にかけて取り組んだ、文部科学省「地域との協働による高等学校教育改革推進事業(地域魅力化型)」の「新庄・最上LINKプロジェクト」の継続・発展を目的とし、地域の未来を切り開く高い志と能力を持った『人財』を育成することを目標とする。
1年次「地域理解プログラム」は、「新庄市でやってみたいこと」を考え、地域の大人への提案と協力要請を行い、実現に向けての方策を探究する。2年次「課題研究」は、地域についての継続研究に加え、自分の興味、将来の進路などからテーマを決め、地域の大人の協力を得ながら研究する。また探究コースが2年次1月より取り組む「地域理解発展研究」は、より実際の地域社会における課題解決に近い形での探究型学習として実施する。
「可能性発見」の姿勢を第一とした総合的な探究の時間を行うことで、常識を疑い、現状維持を打破し、将来的に地域社会その他において革新を起こすための土台を築く。
「ないものねだり」の姿勢ではなく「あるものさがし」の姿勢を大切に、私たちの身近にあるものから研究を進めていくことで、地域課題などを自分事として捉えられるようにするとともに、今あるものを最大限活用する思考を育む。
活動レポートReport
地域の「課題」ではなく「可能性」の発見から始まる探究
2019年度から21年度にかけて同校は文部科学省の「地域との協働による高等学校教育改革推進事業(地域魅力型)」において「新庄・最上LINKプロジェクト」に取り組んだ。その継続と発展を目的として22年度、総合的な探究の時間で実施しているのが「LINKネクスト」等だ。
事業前のプログラムとの大きな違いは「可能性発見」の姿勢を第一にしていること。「課題解決」を軸にすると生徒たちは「地域には課題があるもの」とマイナスイメージから入ってしまう。その結果、提起する解決策が理想論に寄ってしまうなど、本来の力を引き出せずにいるのでは、という反省があった。自分事として地域と向き合うには、「地域でやってみたいこと」をテーマにそれぞれの思いを最大限尊重し、支援することが望ましいと判断した。
1年次は、一般コースと探究コースが混合のグループを組み「地域理解プログラム」を履修する。以前は医療や行政などの分野を教員が提示していたが、22 年度も生徒が提案したテーマで進めた。「まちなかにおもちゃ箱をつくろう」「隠明寺だこ、ジモトへ飛ぶ」「すご杉!金山杉」など、着眼点が豊かになり、「活動を通して地域にあるものが分かった」と振り返る生徒が増えた。
2年次では、一般コースは週1時間、探究コースは週2時間の「課題研究」となる。探究コースでは年2回フィールドワークをするのが特色だ。地域のほか進路や自分の興味・関心に基づくテーマを設定できる。
1・2年生合わせて100に及ぶグループに対しそれぞれ2000円の「研究費」を支給した。取材や実験、試作など生徒の活動の幅を広げる支援の意味を込めたものだ。 探究コースの2年生は12月に論文提出後、今度は実行・実用可能なアイデアの創出を目指してさらなる探究「地域理解発展研究」を続ける。1・2年次の経験や、培った人脈を生かし地に足の着いた提案が期待できそうだ。生徒には「教員も知らない“小さな専門家”になってほしい」と探究推進課長の植松弥公教諭は話す。
生徒と地域のつながりを随所で支えるのは、最上8市町村、尾花沢市により構成されるコンソーシアム「新庄・最上ジモト大学」だ。圏内のすべての高校生に地元の魅力を体験できるプログラムを提供する。地域の伝統校・基幹校である同校の生徒が積極的に活用することで、他校の探究のヒントに、そして小中学生の探究に対するモチベーションアップにつなげたい考えだ。
長尾康子(教育ジャーナリスト)