Program特色ある専門学科の実践及び学科を超えた協働による総合力と
世代間交流により限界集落離島飛島の課題解決を目指すプログラム
過疎化と高齢化が進む山形県唯一の離島飛島が抱える課題を、専門学科の学びと実践、異分野の学科同士の協働、地域住民との世代間交流により課題を解決しながら、未来の地域リーダーを育成しようとするプログラムである。
本校のキーコンセプト「地域起点」と、工業科(機械制御科・電気電子科)・商業科(ビジネス流通科)それぞれの学びの特色を、学科を超えた交流、地域との連携と交流により新たな「まなび」を醸成しようとするプログラムである。同じ方向を見据えた課題解決の過程を通して、互いの学科の専門性の良さを認識・生かし、チームによる協働の大切さを学びにしたい。
各科がこれまで実施してきた課題研究での地域貢献となる取り組みを生かし、限界集落となった酒田市飛島のコミュニティー消滅防止につながる新たなモノ・コトづくりと情報発信を主体的・総合的な力により行う。飛島の持続と活性化を目標とし、地域住民との交流および行政・地元企業・大学の外部指導者による指導を通して、地域の核となる人材を育成する。
活動レポートReport
島について深く学び貢献できる道を探る
普通科、工業科、商業科、情報科を擁し全校24クラスという、東北・北海道の公立高校としては比較的規模の大きい同校。地域起点をキーコンセプトに開かれた学校づくりを推進している。中でも商業科「ビジネス流通科」は、商業の知識と技術でより良い社会づくりに貢献できる人材育成を目指す。酒田駅前の複合施設で「マルシェ」を定期開催するなど地域に飛び出し、実践的にビジネスを学ぶことを特色としている。
同科が取り組もうとしているのが、県内唯一の有人離島である飛とびしま島を舞台にした活動だ。飛島は北前船の寄港地としての歴史を持ち、古くから漁業を中心とした暮らしが続いてきた。しかし、人口減少によりコミュニティ存続が危ぶまれている。島の活性化のため「商品開発」や「マーケティング」「課題研究」の中でできることがあるのではと考えたのだ。
すでに同校の電気電子科が2022年度から、有志による飛島でのボランティア活動をおこなっていた。生徒が電気設備の点検や修理・交換などをおこない、島民の電気の安全・安心を守るために貢献している。
だが、今回は島を訪問する前から大きな壁にぶつかってしまった。新型コロナウイルス感染症の影響により初夏に計画していた島内見学が延期になってしまったのだ。冬は荒れる海で定期船の欠航が相次ぎ容易には渡れない。訪問できたのは11月末というぎりぎりのタイミングだった。わずかな滞在時間を使い、閑散期の島の様子や海岸に漂着したプラスチックごみの現状などを確かめることができたが、課題解決につながる構想の発案はこれからだ。
現在、生徒が考えているのは、バードウォッチングやダイビングなど観光業に着目した提案ではなく、酒田市内でお土産の商品開発と生産をおこない、それを飛島で販売するビジネスモデルだ。飛島の活性化事業を手掛ける「合同会社とびしま」の社員や、大学の研究者、移住者らと交流を深めながらイメージを膨らませているという。
担当の加藤吉絵教諭は「島の活性化というと、島の人に生産を委託するという構想になりがち。しかし、飛島を訪ね暮らしを知る中で発想の転換を迫られた」と振り返る。商品を具体化するには島についての知識もまだ足りない。「アイデアを立案し実現のためにファシリテーションしていくのが商業科の学び。島民の方の負担とならぬよう、ご理解をいただきながら、ていねいに学びをつくっていきたい」と語る。
長尾康子(教育ジャーナリスト)