Program「日光学NEXT」
~世界遺産と国立公園が私たちの学び場です~
世界遺産に登録された重厚な歴史と文化を持つ国際観光都市、日光。日本近代史の足跡が今も色濃く残る町・足尾。国立公園指定の自然あふれる奥日光。このプログラムは、これらのさまざまな地域資源に恵まれた日光をフィールドにしたアクティブラーニング型の探究学習を通し、将来の地域社会を担う人材の育成を目指していく。
「日光学」は、日光市が抱える課題をテーマとした共通プログラムと選択プログラムで構成されている。共通プログラムでは全生徒がSDGsや二宮尊徳、足尾銅山など五つのテーマに取り組み、選択プログラムでは自分の興味関心や進路希望に照らして、各学年五つの中から一つを選んで、3年間で3プログラムに取り組む。そして最後に、これまでの取り組みを振り返りながら、自分の将来の在り方・生き方について考えるという内容になっている。日光市はもちろん、大学や短期大学、地元の小中学校、JA、市社会福祉協議会、商工会議所、道の駅日光 日光街道ニコニコ本陣や古河電気工業株式会社などの民間企業、プロアイスホッケーチームのH.C.栃木日光アイスバックス、近隣自治会、NPO法人など、幅広い連携を得て実施する。
活動レポートReport
日光をまるごと学ぶフィールドワークを1年次から
ユネスコ世界遺産「日光の社寺」を取り巻く日光国立公園内に立地する同校は、地域と一体となり魅力ある学校を目指す。多様な進路希望をかなえるコース制、アイスホッケー部やスピードスケート部などウインタースポーツの強化、県内初のeスポーツ部、ゴルフ部の創設と立地と地域資源を生かした教育活動を推進中だ。
2年次の学校設定科目「日光学」を発展させた「日光学NEXT」は、2022年度入学生を対象にした卒業までの3年間のプログラムだ。郷土の歴史・文化・環境への理解を深め、課題解決能力の育成と、将来の地域社会を担う人材育成を目的としている。
「日光学NEXT」は、共通プログラムと選択プログラムの二つで構成される。
共通プログラムでは、全生徒が3年間のうちSDGsや二宮尊徳、足尾銅山など五つのテーマに取り組む。選択プログラムでは、自分の興味・関心や進路希望に照らして、各学年の六つのプログラムの中から選んで探究活動をおこなう。観光都市としての日光のさまざまな側面だけでなく、日本の近代化を銅山で支えた旧足尾町にも足を延ばし、鉱毒事件や環境保全の取組にも触れる。地域課題を空間軸と時間軸から捉えようとする意欲的な内容だ。
22年度、「コミュニティ・スクールと地域学校協働活動の一体的推進」の文部科学大臣表彰を受賞した同校は地域連携活動に積極的だ。日光学においても行政、大学・短期大学などの教育機関、JA、社会福祉協議会、商工会議所、民間企業、プロアイスホッケーチーム、NPO法人などの全面的な協力を得ながら展開している。
9月に実施した1年生初のフィールドワークでもそれは見られた。日光市農林課と市内在住のハンターから鳥獣被害について講義を受けた後、捕獲罠設置現場を見学する「日光の鳥獣被害」、高齢者とスポーツを楽しんだ後に、日光市社会福祉協議会に指導してもらいながら生活の聞き取り調査をする「高齢者のお買い物」など、生徒が、業務や活動の現場に立ち会えるのが魅力だ。
フィールドワークの成果は2月の発表会で披露された。2年次以降の日光学の充実は「今後、生徒たちの発表を受け止めて、周囲の大人がどう反応し、動いていくかにかかっている」と地域連携担当の藤井啓太教諭は話す。地域主体の社会課題解決に高校生が参画するきっかけをつかみたいとしている。
長尾康子(教育ジャーナリスト)