ProgramSDGsみらい探究
~地域、社会の課題解決に向けて主体的に取り組み、貢献できる生徒の育成~
SDGsの視点を踏まえた課題解決学習を3年間通して行い、地域、社会に貢献できる生徒の育成を目指す。全ての生徒が3年間を通じて「総合的な探究の時間」でSDGsの達成について考え、さまざまな課題に気付き、主体的に解決に向けた探究活動を行う。
学校と地域のパートナーシップで地域活性化を目指すフィールドワークの実施や、ジェンダー問題について深く掘り下げ、高校生が考える地域創生や多様性のある社会の実現について提案し、社会に向けて発信する。
2022年度からは、学校の枠を超え、全国各地の高校生等と社会課題の解決について考える。
【プログラムの特徴】
1.「SDGsみらい探究」において全校生徒が取り組む3年間の課題解決学習
2.リーダー養成ゼミ「SDGs井上浦造みらい塾」による生徒主体の活動
3.ジェンダー平等、多様性のある社会の実現を投げかけるさまざまな発信
4.生徒たちと地域住民が協働して地域活性化の糸口を見つけ出す「地域を旅するフィールドワーク」の実施
5.学校の枠を超えて社会課題の解決について考える全国版みらい塾「みらい塾コミュニティ2022」の始動
活動レポートReport
SDGsで探究学習「みらい塾」生が率先
江戸時代に開かれた足尾の銅を運ぶ銅あかがね山街道の宿場町として、明治以降は絹の集積地としても栄えた旧大間々町(現みどり市)。大間々高校は1900(明治33)年、新島襄(旧安中藩士)の同志社で学んだ井上浦造らが開いた共立普通学校を前身とする。開校時から地域に貢献できる人材を育成してきたが、桐生市に隣接し前橋市も通学範囲で生徒募集に苦慮した時期もある。
98年度に群馬県初の全日制単位制普通科高校となってからは上向いたものの、さらなる改革が求められていた。そんな時期に新型コロナウイルス感染症の拡大が重なった2020年度、高橋みゆき校長が着任。以前も同僚だった根岸彩夏教諭(現・教育研究部長)らと練ったアイデアが、持続可能な開発目標(SDGs)の視点を踏まえた探究だ。当時は取組が遅れていた他校に先んじる目算もあった。
高橋校長の戦略は、少数の生徒をリーダーにして学校全体を変えることだった。松下村塾から発想したというが、14人の塾生から始まった共立普通学校の初心にも重なった。総合的な探究の時間で課題解決型探究学習「SDGsみらい探究」に取り組むとともに、初代校長の名を冠した「SDGs井上浦造みらい塾」を発足させた。
特徴的な取組が、これも他校に先駆けたジェンダー平等だ。20年10月、スラックス、スカート、ネクタイ、リボンを自由に選択できる制服を導入したが、スラックスを選ぶ女子はいなかった。そこで、みらい塾生がLGBTQ支援団体からアドバイスをもらいながらポスターやカレンダーを制作し、地域にも配布。総合探究では男子塾生がスカートを着用して、偏見をなくすよう訴えた。その結果、女子のスラックス所有率は22年3月時点で14・6%、22年度は33・3%(購入予定を含む)に上昇。塾生15人の連名による論文「思い込みからの自由へ」は、愛媛大学共創学部と伊予銀行が共催する「社会共創コンテスト2022」で準グランプリを受賞した。
コロナ禍で開けなくなった文化祭の新しい形として21年度から実施するフィールドワークも、SDGsみらい探究の核となっている。わたらせ渓谷鉄道(わ鉄)沿線を観光する活性化プランは、玉川大学で行われた「第2回高校生まちづくりコンテスト」で最高の観光庁長官賞を受賞した。
みらい塾では他校生の参加も募っており、上野千鶴子・東京大学名誉教授とのオンライン対談なども配信した。
渡辺敦司(教育ジャーナリスト)