カテゴリー 12022年採択

東京都立南多摩中等教育学校

対象者数 960名 | 助成額 197.9万円

https://www.metro.ed.jp/minamitama-s/

Program「合言葉はCross the border、 自分の枠を越える探究学習」
~多様な学びによる質の高い探究学習を通じて、生徒のキャリア形成を図る~

 1年から5年まで系統的に探究学習を進めていく。前期課程では学年ごとにテーマを定め、グループで探究学習を行う。後期課程では個人で探究テーマを決め、2年間かけて4,000字の論文を完成させる。外部機関と連携して生徒の視野を広げ、自分や社会、国境の枠を超えた「生徒のワクワク」を大切にした探究学習を行い、「学びの意欲」を生徒のキャリア形成につなげていく。

 

●教育プログラムの特徴

(1)大学と連携したSTEAM教育、探究論文指導、探究合同学習発表会を実施

(2)グローバル企業等と連携して、ビジネス視点からの探究学習を実施

(3)地域社会や市内の高校と連携して、政策提案とその実現を目指す

(4)ベトナムやイタリアの高校と、文化交流とSDGs共同学習を実施

(5)後期課程ではゼミに分かれて探究学習を実施。また、本校独自テキストを使用するとともに、教員や卒業生等のTAによる指導・助言により質の高い探究学習を進める。

(6)探究学習のためフィールドワークを実施

(7)探究学習の成果を成果発表会において外部に公開

(8)国内外のコンテストや発表会に参加・発表

 

 探究学習で身に付けたスキルや学びに向かう意欲を通じて、生徒が主体的に自己のキャリア形成を図っていくことを目標としている。

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活動レポートReport

中高一貫校ならではの系統的な探究学習を実践

  1908年開校の歴史を持つ東京府立第四高等女学校を母体とし、2010年に開校した南多摩中等教育学校では、中学校にあたる前期課程と高等学校にあたる後期課程、合わせて6年間の中高一貫教育を行っている。「高校受験のない“ゆとり”を活かして、6年間を見通した教育を行えるのが本校の特徴であり、その強みは探究学習にも発揮されています」と話すのは、フィールドワーク推進室主任として、同校の探究学習を牽引する田中 駿一先生だ。

  前期課程(1~3年生)では、学年ごとに設定したテーマのもとグループでの探究学習を実施。1年生の地域探訪に始まり、2年生は人々の創意工夫が詰まった〈モノ〉にまつわる歴史や文化を紐解き、3年生は科学的な検証活動を行う。これら3年間のグループワークで培った基盤をもとに、後期課程(4・5年生)では、「ライフワークプロジェクト(LWP)」として、少人数のゼミに分かれて、それぞれ自ら設定した課題の探究に取り組んでいく。

  加えて注目すべきは、発表する機会の豊富さだ。1年生はポスターセッション、2年生は「モノ語り」と題した冊子、3年生はプレゼンテーション、そして4・5年生の2年間で4,000文字の論文と、それぞれ探究の成果を取りまとめ、年度末の「成果発表会」で発表される。他学年の生徒や、学外からの参加者を前に発表し、客観的な視点からの質問や講評を得ることは、生徒たちにとって貴重な経験となっているという。「本校で展開するフィールドワークや学外活動における外部との接点の多さは、大学が提供するプログラムと遜色ないようで、高校時代に経験した探究学習が大きな財産になっているという声を卒業生からよく聞きます」と田中先生が話すように、中高一貫校の強みを活かした質の高い探究学習が、卒業後に大学や社会で求められる論理的な思考力や表現力を身に付ける絶好の機会となっている。

学外との多様な接点がキャリアデザインを描く

  同校の探究学習におけるもう1つの大きな特徴が、学外との連携の多様さだ。大学と連携したSTEAM教育、日本政策金融公庫など企業との連携によるビジネス視点からの探究学習、地域社会との連携による地域課題の解決を目指したフィールドワーク、さらにはベトナムやイタリアなど海外校との文化交流やSDGs共同学習など、組織や地域・国境を越えて多彩なネットワークが構築されている。

  これら学外ネットワークは、歴代の担当教員たちの人脈に加え、生徒自身の興味・関心から生まれる「出会い」によって拡充されてきたものだという。LWPにおいて生徒たちがテーマを決める際に、「この分野の研究者や企業に取材したい」といった声が挙がると、まずは生徒自身に取材先を探してコンタクトを取らせている。「もちろん断られることもありますが、そうした経験も含め、自ら社会との接点を持つことで初めて気付けることがあります」と田中先生はその意図を説明する。

  また、多彩な探究学習に取り組む生徒たちをきめ細かくサポートするため、教員による指導に加え、卒業生がティーチングアシスタント(TA)を務めている。同校では卒業生の進路をデータベース化し、そこからTAとしての参加を募っているが、母校への思い入れもあって積極的な協力が得られているという。「学外との幅広い接点に加え、世代の近いTAとの対話を通じて、生徒たちは自身の興味と卒業後の進路を接続させていける。それも本校ならではの強みです」(田中先生)。

  探究学習を実施するうえで田中先生が心掛けていることの一つは、大人も一緒になってワクワクすること、もう一つが、生徒の希望をそのまま受け入れるのでなく、時に「押し戻す」ことだという。「それが本当にやりたいことなの?」「社会でどう役立つ可能性があるの?」と問いかけることで、生徒たちが改めて自身の探究テーマや社会との関りについて見つめ直す機会になっている。「社会に出れば直面する『躓き』を、あらかじめ経験しておくことが将来の糧になる」という田中先生の言葉からも、同校の学びが生徒たちのキャリアデザインを強く意識したものだということが理解できる。「ワクワク感」と「実社会との接点」を重視した同校の探究学習が、生徒たちの「学びの意欲」を育み、実社会で活躍できる人材を輩出することが大いに期待される。

高尾山にある「高尾ビジターセンター」と連携して登山客向けのワークショップを実施。2024年度は、高尾山の自然の魅力を英語で紹介するという、インバウンド向けの取組みも予定している。

3月に行われる成果発表会では、1・2年生は模造紙の展示、3年生はプレゼンテーション、4・5年生はポスター発表で、1年間の研究の成果を来場者へ報告している。

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