カテゴリー 12022年採択

石川県立金沢錦丘高等学校

対象者数 640名 | 助成額 200万円

https://cms1.ishikawa-c.ed.jp/nisikh/

Program「なりたい自分」への挑戦
~探究で育む自己肯定感とキャリアデザイン力

 併設型中高一貫教育校としての本校のキャッチフレーズは「なりたい自分」への挑戦。

 総合的な探究の時間では、生涯にわたり活用できる探究の方法(課題発見−問いと仮説の設定−検証−考察−発表・共有)を身に付けるとともに、さまざまな経験を通して自らの興味・関心と自らの強みを発見することで、キャリアビジョンにつなげるプログラムの開発を行う。特に、実践と振り返りを重視するAARサイクル(Anticipation見通し→Action行動→Reflection振り返り)に基づき、小さな失敗体験も踏まえながら成長できる教育プログラムの開発を目指す。

 1年次前半は学問領域やこの先の進路を見通す「キャリア探究Ⅰ」、後半には地域社会の一員として問題解決の手法を学ぶ「防災・減災プロジェクト」「地域活性化プロジェクト」を実施。2年次には、自らの興味関心に基づく協働的な学びの「Nishiki探究プロジェクト」でPBL(Project Based Learning)を実施。この2年間の総まとめとして、自らの強みや適性を活かすための進路について考える3年次の「キャリア探究Ⅱ」につなげる。

 また、学校や校種を超えた探究型学習のプラットフォームづくりにも挑戦したい。

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キャリア教育を軸に経験を自己育成の力に変えるプログラム

 探究活動を通じて生徒の自己肯定感を高め、キャリアデザイン力の育成へとつなげたい同校。グループでの活動を通じて、生徒自身がメタ認知を行い、合意形成力やクリティカルシンキングなどの「経験を力に変える」プログラム開発を試みた。

 1年次は、大学生との対話を通じて大学の学部や学科を知る「キャリア探究Ⅰ」、さらに「防災・減災」「地域の魅力」をテーマにした「地域探究プロジェクト」に取り組んだ。

 助成金を活用し、地域の様々な大人とさまざまな関わりを持てたことで「生徒の心のエンジンが動き出すのを感じた」と、宮越絢子教諭は生徒の変化を語る。その様子は新設した課題研究学年発表会でも感じられたという。

 2年次は、「Nishiki探究プロジェクト」でグループでの探究に入る。8クラスが同時展開でクラスを解体して行うため、興味や関心をどう活動に結びつければよいか戸惑う生徒も出てくる。そこで「ヘルプデスク(研究相談会)」を設けた。教員や起業の経験を持つ3名の探究コーディネーターが生徒の相談にのり、専門家とのマッチングや外部コンテストにエントリーするための支援を行った。生徒と対話しながら力を引き出していく様子は教員も参考になったという。

 3年次は、1年次の「キャリア探究Ⅰ」を深める形で、社会や大学とのつながりを意識する「キャリア探究Ⅱ」につなげていく。

 キャリア教育を軸とする探究だけに、校内の進路指導課や学年団との「横の連携」を重視した。石川県立大学の特別授業受講(1年生)、医療施設や研究施設などでのインターンシップ(2年生)、地元製造業等での企業見学(2年生)など、既存のキャリア教育の活動を、探究の枠組みで捉え直すことに成功している。

 「縦の連携」として、探究の中高接続の研究も推進している。併設の金沢錦丘中学校や近隣中学校との「総合的な学習・探究の時間」の相互参観、全国研究大会への教員派遣など、地域や校種を超えた探究の系統化を図り「探究型学習の研究拠点校」を目指す。

 「探究をやっていて成長できた、きっかけをくれてよかった、と言ってくれた生徒が何名もいた。気づきや成長のきっかけになり得るのが探究。教員もそこにやりがいを感じている」(宮越教諭)という。

長尾康子(教育ジャーナリスト)

防災・減災をテーマに地域探究をする1年生。

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