Program未来の科学者を育成する「IKEFU KIZUNA PROGRAM」
本教育プログラムは、高等学校理科の基礎の分野において、卒業生の理系分野の講師や大学院生と連携・協力しながら、グループで主体的・協働的に課題に取り組むEdTechを活用した探究型授業を実践し、縦と横の「絆」を深めることで、生徒の探究力を育むとともに科学者としてのキャリアの見通しの変容を促し、未来の科学者の育成を図ることが目的である。そのために、理系分野の講師や大学院生と交流する機会を設定し、主体的・協働的な学びにつながるEdTechを活用した探究型授業を実践することにより、科学に対する興味・関心を高め、生徒の探究力を向上させる。
本校は教育研究校として60年以上の歴史と伝統があり、これまで多くの研究成果を蓄積してきた。本教育プログラムは、既存の理科の基礎学習の枠組みを超える新しい知的探究型学習プログラムであり、生徒の探究心に明かりを灯し、生徒の興味・関心・行動・視野を広げることで、生徒のキャリアの見通しを変容させ、未来の科学者を育成する効果が期待される。
本校独自の「IKEFU KIZUNA PROGRAM」は、生徒の興味・関心や行動・実践に刺激を与え、生徒のモチベーションと学びの持続的なサイクルを創造することができる先進的・実験的な取り組みである。
活動レポートReport
「縦と横の絆」を深め未来社会をリードする人材を
「私の『常識』は本当に正しいのだろうか」―がん免疫先端医療分野において大阪大学が世界に誇る「呼吸器・免疫内科学」の研究室を訪問した生徒の感想だ。教室を主宰する“池附”OBの熊ノ郷淳教授から直接お話を伺った生徒たちもまた、疑問を追究し新たな発見を目指す“科学の旅”の出発点に立ったようだ。
大阪教育大学附属高等学校池田校舎では、1・2年生の理科の授業に探究型学習「IKEFU KIZUNA PROGRAM」を導入。科学の面白さを伝え幅広い進路の可能性を示しながら、主体的・協働的な学習姿勢の定着と探究力の向上を目指している。
コンセプトは「縦と横の絆」。「縦」は、“人生の先輩”とのつながりを深めることだ。同校には卒業生と長く親密な関係を築く伝統がある。プログラムでは、卒業生が進学・就職した研究機関を訪れて指導や助言を受けたり、世界の第一線で活躍する卒業生の講演会を行うなど、科学者としてのキャリアを邁進する先輩との交流の場を設けている。刺激を受けた生徒は、将来ビジョンや進路を具体的に描き始めている。
一方「横」は、生徒同士が切磋琢磨し、協力しながら高め合うことを意味する。予習から実験実技、成果発表、総括までの全プロセスで「デジタル実験ノート」を作成。教育とテクノロジーを掛け合わせた「EdTech」を積極的に導入し、実験で収集したデータの処理・分析によって実験結果を考察し、結論を導く力を養うとともに、生徒同士で検証することで学び合いの精神を醸成する。振り返りの自己評価やアンケートを行い、回答結果から理解の深度を把握し、進路指導へ役立てている。ITの利点を生かして、能動的かつ継続的に学ぶサイクルをつくり出すのがねらいだ。
プログラム主担当の木村直広教諭は、「実験ノートや自己評価を見れば、普段は寡黙な生徒でも思考のプロセスを知ることができます」と話す。教育研究の実践を重視する同校では、60年以上前から理科教育の研究に取り組んできた。「教員も常に新たな知識の習得に努めています。知的好奇心を刺激され目を輝かせる生徒からも学ぶことは多いです」と語る。
SDGsに代表されるグローバルな社会課題の解決に向け、今後科学が果たすべき役割はますます大きくなっていく。「縦と横の絆」を深め、さまざまな人々との協働の下、新たな社会を創造する未来のリーダーが確実に育っている。