Program創る技術・造る技能と共に創造力を育てる
「価値創造型共育」プログラム
本プログラムは民間企業の技術者教育を工科高等学校のPBLに取り入れ、習得した技術・技能の効果的な活用と価値創造の重要性に、生徒たち自らが気付きを得るプログラムである。
第2学年の「総合的な探究の時間」にて実施し、主に経営工学の手法である生産工学IE(Industrial Engineering)、品質管理QC(Quality Control)、価値工学VE(Value Engineering)などを学びつつ、探究活動に取り組むプログラムである。
具体的には
1. ものづくりに「必要な時間」を見える化しよう!
・グループで効率よく「ものづくり」するには?
・手先を使う作業を効率よくするには?
2. ものづくりの「品質のバラツキ」を見える化しよう!
・なるべく均一に同じものを作るには?
3. ものづくりの「機能とコスト」を考えて価値を高めよう!
・コストを掛けずに価値を高めるには?
といった内容等を探究し、技術者・技能者としてのセンスを高めていく。
これらの探究活動を通して得た知識・経験を、第3学年のデュアルシステム(長期就業訓練)にてさらなる実践を期待する。
活動レポートReport
企業等との連携により地域への貢献意欲も向上
工業のまち東大阪市で84年にわたり工業教育をリードする大阪府立布施工科高校。機械系、電気系のほか、高校では珍しい建築設備系を設置している。同校では、生産現場での課題解決力を育む「価値創造型共育プログラム」に注力している。
電機メーカーに勤務していた福岡洋希先生が、生産現場のニーズと工業教育とのギャップを感じ、2020年に同プログラムを構想。生産現場で必要とされる経営工学手法を高校の授業に取り入れ、多角的な視点で新しい価値の追求に取り組んでいる。「技術の多様化に伴い履修科目が細分化されつつある中、社会トレンドの変化に柔軟に対応できる思考力を養う教育が必要だと感じたのです」。
構想の翌年には、人材育成への課題認識を共にする三菱電機グループ等民間企業と連携し、経営工学の専門家による講義やSDGsを切り口にした教材作成に着手。2022年度には、同校教員の指導によるグループワークを試行し、今年度から正式科目としてスタートする運びとなった。
プログラムを担当する千田充弘先生は、昨年度のグループワークを振り返り確かな手応えを語る。「チームで考え、ひらめき、工夫して達成できたときの喜びを“体感”することは、座学よりもよほど好奇心を刺激されるようです」。
ワークはチームに分かれ、レゴブロックを用いて、部品組立のライン作業を再現する等というもので、完成までの時間を競うゲーム性を取り入れた。うまく役割分担して効率を向上させたり、他チームの発想からヒントを得た生徒は、次々と自発的な改善を始めていく。学内での授業のほかにも、大阪府の支援の下、商業施設内のイベントで子どもたちに工作体験を指導する学外活動等も実施。仲間や地域住民との触れ合いを通じ、協力・改善するマインドが育っている。今後は企業での就業体験も実施し、より実践的な課題解決力を身につけさせていくという。その準備として、高校生がより興味を持つ教材や教具の開発、教員間での指導ノウハウの共有に注力するとともに、外部の知見も積極的に取り入れていきたいと福岡先生は語る。
AI・IoT等の技術革新に応じて人間の仕事の在り方は変わっていくが、いつの時代も“知恵”が課題解決への原動力であることは変わらない。価値を提案できるマインドとスキルを備えた彼らが、ものづくりの未来を支えていくはずだ。