Program私たちの町は私たちが創る
~産官学連携 住む町創造プロジェクト~
若者の人口流出県である香川県の若者が地元に定着する意欲を持てるように、地元愛と起業家精神を育むことを目標とする。本プログラムでは、産官学連携の指導によるビジネスプランづくりを通して自主性や発想力を高め、住みたい未来の町を創れるという自信を養う。またこの活動を通して、教員にとっては自律して特色ある教育プログラムを構築できる力を養うことを目指す。
県外進学者が香川県で就職・生活するためには「働きたいと思うような企業や仕事が増える」「香川県の地域や経済が活性化する」といった事柄の実現が必要である(香川県「県出身県外大学生等アンケート調査」令和2年度)。このような問題を解決し、自ら産業を興し、地域を魅力ある住みたい町にできる可能性に高校生が気付くための学習活動を行う。そのために、事業を成功させた学校外の人たちに関わってもらい、成功例や失敗例を教わりながら一緒に創る感覚を得て、通常の高校生活では成し得ない主体的・協働的な学びを体験する。地元企業の経営者や社員、地方自治体の担当者の参加を仰ぎ、産官学が連携し、生徒が生まれ育ったこの故郷を愛し、この町にいつまでも住み続けたいと思える町づくりを通して、将来、社会参画・問題解決していくための資質・能力を育む。
活動レポートReport
起業プラン作成を通して生徒の可能性を引き出す
2020年度の大学進学者のうち約8割が県外に進学している香川県。急速な少子高齢化に危機感を持った津田高等学校では、2022年から『住む町創造プロジェクト』をスタートさせた。「若い世代が地域に定着するためには、自ら産業を興し、地域を魅力ある住みたい町にできる可能性があることに気づいてもらう必要があると考え、同プロジェクトを開始しました」と、同校の池田達治教頭は話す。
さぬき市や地域コーディネーター、地元企業のサポートを受けながら、生徒がビジネスプランを練るプロジェクトで、1年生を対象に実施。まずはオーダーメイドの介護靴製造企業や、造形物の素材用段ボールを販売する企業など、ユニークかつ新たな市場を開拓している企業を訪問し、事業への思いなどをヒアリングした。またグループでプランを立てる際には、農業体験ができる宿を経営する若者に起業のポイントを講演してもらった。「我々が当たり前だと思っていることへの付加価値のつけ方、身の回りの豊かな自然の活かし方などを実体験から話していただき、生徒にとっては大きな刺激になりました」(池田教頭)。
その後も、市職員など外部の様々な方からアドバイスをもらい、今年2月にはさぬき市長と先述の宿の経営者の方を招いて選抜7グループがプランを発表、高評価を得た。生徒からは「自分の将来、地域の将来を考える機会になった」「最初は漠然としたプランがだんだん現実味を帯びていく過程が楽しかった」などの感想が出て、「地元への愛着を持つ、また主体的・協働的な学びを体験するという当初の目的は達成できたと考えています」と池田教頭は話す。
また、大人が思いもつかないような自由で柔軟な発想や、自分の意見を堂々と言いながら議論する生徒の姿を見た教員からも「これまで気づかなかった生徒の潜在能力や可能性を感じることができた」という新たな気づきとともに、探究活動への関心や熱意の高まりが感じられるという。
「昨年度はコーディネーターに主導してもらいましたが、今年度の2年生は、各クラスで企画し実施しています」と今年度から同校に赴任し、プロジェクトを担当する横井透教頭は話す。1年生の活動も、他県の地域活性化の成功事例の見学を入れるなど、内容をさらに充実させた。地元への愛着を根付かせる活動が、生徒の可能性を引き出し、教員の意欲にも火をつけるきっかけとなっている。