Program総合的な探究の時間を利用した「自調自考のエンジン」を身に付けさせる
多様なコース制による課題解決型学習
本校は創立以来の「三理想」を踏まえ、「自ら調べ自ら考える(自調自考)」ことができる人物の育成を目指して、中高6年間の教育活動を体系的に展開している。中でも、特に高校1年生全員を対象に展開する「総合的な探究の時間」(総合講座)においては、生徒個々の好奇心や教職員の専門性に応じて、多様なコース制による課題解決学習を行っている。
本プログラムを通じて、人間社会や自然現象など、自分を取り巻く多様な課題に向き合い、解決する能力を養い、将来のグローバルリーダーを育成することを目指している。(添付写真は、長崎県での総合講座現地実習時の風景)
活動レポートReport
本物に触れさせてリーダー育成
「琉球語について知っていることはありますか?」「年齢の上の方が話していて、若い人はあまり使っていないイメージですかね…」
新型コロナウイルス感染症の影響により、半年遅れで始まった総合講座「沖縄について学ぶ」。當山奈那・琉球大学准教授の講義も、今年は少し勝手が違う。ビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」を使ったリモート授業だからだ。「本来なら現地に行って、お昼ご飯を食べながら会話して興味をわかせるところなんですが」と、担当する友利将吾教諭は残念がる。
それでも最初は戸惑いがちだった4人の受講生は、母音だけでも3個(与那国島)から長短17個(奄美大島の一部)まで多様性があるという當山准教授の説明に徐々に引き込まれ、現地で録音された日本語にない発音を真剣に口まねしていた。
高校1年で実施するゼミ形式の「総合講座」(総合的な探究の時間)は、同校の目玉の一つ。20年度も「世界の映画を見る」「株式入門」「地震の科学」「少女マンガを読む」「古文書解読入門」など硬軟取り混ぜた講座が並ぶ。中でも「やぎの研究」は、実際に校庭の一角で生徒がヤギを飼育するユニークなものだ。
背景には、本物に触れるという教育方針に加え、学問を中心に置くという教員風土がある。修士号や博士号を持つ教員も少なくなく、埼玉県立浦和高校長から19年度に母校に戻った杉山剛士校長も総合講座「世界の『古典』に学ぶ」を受け持つ他、教育学の博士論文を構想中だという。そんな杉山校長が先導して、創立100周年を迎える22年度を視野に打ち出したのが「新生武蔵のグランドデザイン」〈図〉だ。
ただし、まったく新しいことをしようというのではなく、これまで行ってきたさまざまな教育活動を体系化した、カリキュラム・マネジメント(カリマネ)に当たる。中央教育審議会で現在検討されている、高校のスクール・ミッションとスクール・ポリシーを先取りしたものでもあるという。
その基盤には「建学の三理想」(東西文化のわが民族理想を遂行しうべき人物▽世界に雄飛するにたえる人物▽自ら調べ自ら考える力ある人物)があり、それを新たな時代に向けて、世界をつなげるグローバルリーダーを育てようとしている。
渡辺敦司(教育ジャーナリスト)