ProgramいしかわWORK & LIFE 探究プログラム
福島県石川郡に所在する1学年2クラスの小規模校である。「地域に貢献できる人材の育成」をビジョンに掲げ、地域の課題解決に取り組む人材の育成に向けた教育活動を行っている。
地域と学校が一体となり、地域ぐるみで子どもたちの学びを支援しようという理念のもと「いしかわWORK & LIFE 教育」と銘打った教育活動を展開している。その柱の一つが、2年次からのコース選択の一つである、「キャリアグループ」である。生徒たちは週に1日、町内の事業所にて職場体験実習を行い、仕事を通じて技能を身に付けながら、進路適性を理解していく。教員以外の大人たちとの関わりから、社会性が大きく育つことが大きな特徴である。
もう一つの柱が、本プログラムの中心となる、「総合的な探究の時間」である。1年次には「地域を知る」をテーマに、まち歩きや地域人材による講話を実施し、その経験をベースとして、2年次の探究テーマを模索する。自分で選択したテーマについて、地域の人材や教材と関わりながら、自分で立てた目標に向かって突き進み、最後までやり抜く体験からレジリエンス力を身に付ける。また成果発表の機会を通じて達成感と自己肯定感を養い、それらを基盤としての自身の進路選択(キャリアデザイン)につなげることを目標とする。
活動レポートReport
インターンシップに探究的な学びを統合
福島県の石川高校といえば私立の「学法石川」(学校法人石川高校、1892年創立)が全国的に有名だが、石川町を含む石川郡内で唯一の県立高校である「県石」(県立石川高校)も2023年度に創立100周年を迎えた伝統校。少子化で現在の学年2学級が24年度から学年1学級になるが、地域のセーフティーネットとしても「なくしてはならない」(水野憲一・石川町企画商工課課長)存在だ。
そのため以前からキャリアグループ(他に発展学習、技能向上、学力向上の3グループ=24年度からアカデミックグループに集約)を選択する生徒などを対象に、2年次に2事業所(前・後期)、3年次に1事業所(通年)で就業体験を行うデュアルシステム型インターンシップを実施してきた。町長を会長とする運営協議会が置かれ、配属先も面接で厳しく選定。地元で活躍できる職業観・勤労観の育成を目指す。
23年度の3年生のうち、2人が体験先に就職した。その1社である和知鐵工所の和知勇希社長は「(事業所としては)少しでもリアルな業界を知ってほしい。なかなか若い人が入って来ない中、(高校生を教えることで)社員も成長する。『ウィンウィン』ですよ」と話す。
そうしたキャリアデザイン力の涵養に23年度、探究的な学びを統合したのが「いしかわWORK&LIFE探究プログラム」だ。三菱みらい育成財団の助成対象でもある総合的な探究の時間「地域創造探究」では、1年次に地域の環境や歴史についての経験学習を、2年次に生徒自身が設定・選定した地域課題の解決に向けた実践的な探究活動を行う。
22年度から町予算で一般社団法人未来の準備室(福島県白河市、青砥和希理事長)に委嘱して一緒にプログラムを開発するとともに、23年度は2人の高校魅力化コーディネーターを派遣してもらった。県立ふたば未来学園中・高校(広野町)にも関わった川瀬吏恵さんは、時間をかけて生徒と向き合い、伴走できるのが利点だと指摘。米国の大学を卒業して6月に着任した金子理咲さんも「一対一で自己理解を深めることで、生徒に積極性がみられるようになりました」と手応えを話す。主任の齋藤陽介教諭は「本当にうれしい想定外でした」と両者の貢献に感謝する。
24年度は単学級化をはじめ、指導・支援態勢にも変更が迫られる。プログラムをどう継承・発展させるかが課題だという。
渡辺敦司(教育ジャーナリスト)