Program探究を深化させる2年間一貫した体系的な探究プログラム
1年次に1単位、2年次に2単位設定されている「総合的な探究の時間」をそれぞれ「科学と文化Ⅰ」、「科学と文化Ⅱ」と名付け、2年間一貫した体系的な探究プログラムを実施している。「科学と文化Ⅰ」では、本校オリジナルのテキスト『科学と文化Ⅰ Support Book』を用い、①情報リテラシー研修、②模擬実験研修、③データ分析研修、④キャリア研修の4つの学びを実践する中で、探究的な学びに不可欠となる基礎的・基本的な知識・技能の育成を目指す。「科学と文化Ⅱ」では、「科学と文化Ⅰ」や各教科で学んだ事柄を往還的に活用しながら、生徒の興味・関心を踏まえた実践的な探究活動を行う。「科学と文化Ⅱ」では、学年全体で時間割を揃えることでクラスの垣根を越え、興味・関心のベクトルが似た生徒同士で研究グループを組めるよう工夫を施した。
また、1月にはポスターセッションを実施し、約9カ月間の活動から得られた知見等を他者に向けて発表するとともに、3月には研究論文の執筆を行い、これまでの活動や成果を論理的にまとめていく。これらの活動を通し、自律的に探究に取り組む姿勢を育み、論理的思考力やプレゼンテーション能力、コミュニケーション能力や情報活用能力など、次代を担う人材の一員として不可欠となる資質・能力を身に付けていく。
活動レポートReport
十進分類法を用いたグループ分けでクラスの壁を越えた探究活動を展開
「次代を担う人材の育成」をグランドデザインの目標に掲げ、将来の国際社会で活躍する人材の育成を目指し、高い学力、コミュニケーション能力、リーダーシップを身に付けさせるとともに、豊かな人間性・社会性を育む教育を行う同校。
2022年度から始めた総合的な探究の時間「科学と文化」は、自ら見いだした研究テーマに基づく仮説検証型の探究活動だ。1年次「科学と文化Ⅰ」(1単位)では探究活動のコアとなる資質・能力を、情報リテラシー、キャリア、模擬実験、データ分析の四つの研修をとおして身に付ける。2年次の「科学と文化Ⅱ」(2単位)ではグループ単位での探究を行う。
22年度は「生徒が見通しを持って探求ができるよう、まず教員の支援から始めた」と、探究活動推進チームの近江一太教諭は話す。1年生向けオリジナルテキスト「科学と文化Ⅰ」(A4判、78ページ)を作成し、略案や指導案、ワークシートなどを含んだ教員用資料をすべての時間について準備し活用を促した。これで各クラスの担任が不安なく指導できるようになった。
2年生は小グループでの探究活動に取り組む。興味や関心の関連性の高いメンバーでグループを組めるよう、23年度は同一時間で実施する時間割編成とし、2学年全員が一斉に探究ができる環境を用意した。だが、この人数をグループ分けするのは容易ではない。そこで活用したのが図書分類の方法である「十進分類法(NDC)」だ。生徒に簡単な調査をし、興味・関心のベクトルが似た生徒を10の「フィールド」に分ける。そこから探究活動ができる93の小グループに分かれ探究を進めた。課題を見いだしたのちに仮説を立て、研究計画書をまとめる。探究のプロセスを経て年度末にはポスターセッションや研究論文を執筆し発表する流れだ。
今回の助成で、各グループが実験や調査をする際に研究費を確実に支出できたのは大きかったという。1年生からは「来年、取り組みたい探究テーマがあるが自分たちもできるのか?」という声が上がっているそうだ。先輩の探究プロセスを見ること自体が動機付けになったと言える。24年度のグループ研究の深化も図れそうだ。近江教諭は「今後も、教職員全員で持続可能な運営体制を構築していきたい。本校の探究活動の本質は、成果を出すことではなく、その過程にある。それを生徒にも実感してほしい」と意気込む。
長尾康子(教育ジャーナリスト)