Program個性、自主自律を開化させるマイテーマ・マイプロジェクト追究型の探究
~みんなのなぜが社会につながる みんなのなぜが未来につながる~
本校では、~みんなのなぜが社会につながる みんなのなぜが未来につながる~をスローガンに、生徒それぞれの興味・関心を尊重したマイテーマ・マイプロジェクトを探究活動の中心として位置付けている。
1年次は、ディベート活動や、「よりよい学校」をテーマにした探究活動を行い探究の基礎スキルを身に付ける。2年次は、自由テーマで個人プロジェクトを追究し、成果をプレゼン発表する。3年次は、探究活動のプロセスをキャリア視点で振り返り、成果を論文としてまとめる。
探究的学び全般の支援として、体験型校外研修や多様な専門家を招いての講演やワークショップの企画、生徒が校外で発表する機会の紹介・奨励を、年間を通じて行う。また、探究活動の過程で、それぞれが現地調査・視察、実験・観察などのアクションを起こすことを奨励し支援する。上記プログラムを通じて生徒が校外での体験や人との出会いにより刺激を受け、視野を広げ、実体験を伴う探究活動を推し進める。
生徒が、自分の「なぜ」からスタートした個人プロジェクトを追究し、自分の研究と社会とのつながりや社会貢献の可能性を見いだし、自信と誇りを持つことにつながる探究プログラムを目標とする。
活動レポートReport
生徒の挑戦を励まし外部リソースを構築する
名古屋市立菊里高等学校は1896年創立、自主・自律の精神を伝統とする市立高校だ。探究は2019年より準備を開始し、2021年度より学年進行で本格的にスタートさせた。
「個人研究」「自由テーマの課題研究」を最終課題とし、主体的・協働的・対話的な活動を通じて学び、より良い社会につながる独自の知見の発表を目標とする。1年生は決まったテーマに沿ったグループ探究、2年生は興味・関心に基づく個人研究を行う。
「学校全体で行った職員アンケートで、学びの視野やフィールドを広げた方がよいのではないか、という意見が出ました。そこで生徒の校外でのチャレンジを応援するのと同時に、外部のリソースを入れて生徒に刺激を与えてもらおうと、方向性を決めました」と、久賀史恵教諭は話す。広く社会に関心を持ち、自ら課題を発見、解決する力を育てるため、「教える」よりも「考えさせる」「相談させる」授業を目指すことにした。
昨年度からは、外部講師による講演会、今年度は探究サポーターによる個別テーマへのアドバイスなど積極的に外部人材を招いている。大学や地域団体が企画する研修や外部コンテストへの参加、施設への外部調査を奨励。その際、交通費などを補助して生徒の負担軽減につなげた。
その結果、探究で関連施設の視察や聞き取り調査を実施した生徒が2022年度と比較して増えた。
その一例が、12月に実施した「中川運河クルーズ」だ。2年生の個人研究の一環で実現したもので、運河を観光資源として活用する方策を研究する中で、船会社に交渉して生徒が企画した。
今年度は探究の枠組みは変えず、外部ネットワークの拡充や、教科での探究的な学びの要素を取り入れた授業改善が進む予定だ。昨年度は社会で活躍する卒業生38名を講師に招き、講演会や交流会を開いた。市内の施設や行政、企業などに同校の卒業生は多い。生徒が参加したセミナーが縁で、講師を引き受けてくれた卒業生もいたという。
クラスの探究委員の投稿や、教員の原稿を掲載する「探究通信」も継続する。これからは「探究がしたくて菊里に来ました」と言う新1年生の期待に応えられるよう、より深い探究活動へと生徒を導きたいとしている。
長尾康子(教育ジャーナリスト)