Programとばっ子カンパニー
~起業体験プログラム・企業探究・地域課題解決型学習~
本校の総合的な探究の時間3年間を「とばっ子カンパニー」と称し、1年次では「起業体験プログラム」を次のように実施する。
①仮想の株式会社を立ち上げ、地域の魅力をさらに増大するビジネスモデルを考える
②ビジネスモデル実現のため、地域の方々から出資を募る
③地元企業に取引を依頼し、商品開発をする
④オクトバ2023(鳥羽市最大のイベント)にて出店し、販売を行う
⑤株主報告会を行い、出資者へ返金する
学校現場だけでなく、地域を大きく巻き込んだプログラムである。本校卒業生である内閣府地方創生推進局地域伝道師総務省地域力創造アドバイザーの中川直洋氏を講師として迎え、鳥羽市市役所企画財政課・JPX日本取引所グループ・鳥羽商工会議所・鳥羽市の企業と連携する。
地域の方々から出資金を募り、鳥羽市の会社と商品開発することで、大人も含めた他者と協働しながら新しい価値を創造する力など、これからの時代を生きていくために必要な力を育成する。
起業家になるための教育だけではなく、起業に関する体験を通じて、チャレンジ精神や行動力を身につけることで、自己肯定感やコミュニケーション能力を向上させ、自信と誇りを持って成長する一歩につなげることを、本プログラムの目標とする。
活動レポートReport
地元企業と協働で商品開発
鳥羽市唯一の公立高校であり、県南部の南勢志摩地域唯一の総合学科校である鳥羽高校。地域の人たちに今の生徒を知ってもらう体験活動が生徒の自己肯定感を高めると考え、3年間の探究活動「とばっ子カンパニー」のプログラムを開発中だ。
2022年度から1年次「産業社会と人間」において「とばっ子市場~起業体験プログラム」に取り組んでいる。総務省地域力創造アドバイザーで同校の卒業生でもある中川直洋氏のアドバイスを受け、生徒が地元企業と協働して起業体験をする内容だ。2023年度は、5月に会社(班)を作成、6、7月に企画を考案、出資者を募る説明会を行った。その後、地域の企業と共に商品開発を行い、「鳥羽の月」である10月に地元ショッピングプラザで販売。1月には収支報告会を開催した。
地域の企業や個人から集まった出資金はおよそ80万円。生徒たちはカップケーキやおにぎりといった食品のほか、「肩もみサービス」などを企画し、これらは当日、完売した。約12万円の純利益があがり、出資者には10%の配当を付けて返金、さらに能登半島地震の義援金や、鳥羽市社会福祉協議会、子ども食堂への寄付に充てた。
「生徒は自分たちが考えたとおりの商品を実現できたわけではなかった。プロの目から見たら実現が難しいものもあり、苦労もあった。販売当日お客様と積極的にコミュニケーションを図る中で、“頑張っているね”などと励まされ自己肯定感の向上につながった」と、担当の真弓覚仁教諭は話す。
2年次の探究活動は自分の学ぶ「系列」に沿ったテーマを個人で設定し、数日間の職業体験を行う予定だ。1年次での起業体験で関係ができた企業、また水族館やクルーズ観光などマリンレジャー関連を希望する生徒もいるという。3年次は1、2年次の経験を基に、鳥羽市の課題を解決するためのビジネスモデルを提案していく。
プログラムを始めた2年前は、企業に趣旨を説明し、理解を得るのに時間がかかった。だが、毎年、きちんと売上があることと、生徒と直接ふれあう中で連携はスムーズになっていったという。
生徒へのアンケートでは「この体験を通じて進路や社会参画への意欲が向上したか」との問いに「そう思う」「ややそう思う」の合計が98%となった。真弓教諭は「前向きに社会にでる気持ちを持つ機会になっている。これからも地域と手を携えて実践していきたい」と話す。
長尾康子(教育ジャーナリスト)