Program課題研究 Ⅰ・課題研究 Ⅱ
「総合的な探究の時間」において、1年次後半から2年次2学期にかけて取り組んでいる探究活動である。生徒が主体的に 問題を発見し解決する力、協働して仕事や研究に取り組み、論理的、多面的かつ批判的に思考する力やコミュニケーションを行う力等の育成を目指す。生徒はグループごとにテーマを決め、タブレット端末やスマートフォンを利用して検索し、外部の専門的助言を適宜得るなどして研究を行う。研究成果は、PowerPointを活用したり、ポスター発表形式を取り入れるなどして発表している。
2年生の研究成果発表を見学する1年生が、心のエンジンの駆動を促され、探究活動への取り組みを継承し、「課題研究Ⅰ」(職業を通して国内外の課題を解決するために、どのような学問をどう活かしたいのか)、「課題研究Ⅱ」(あらかじめ設定した七つのキーワードに沿って生徒が具体的な課題を設定し、探究活動を行う)へと段階的に進んで探究活動に取り組む。
活動レポートReport
「失敗」を通して主体性を伸ばす
20年度で創立142周年を迎え、県内トップ校として全国にも名が知られる宇都宮高校。しかし生徒の現状の分析は「近年の傾向として、主体的に課題を発見・探究したり、多様性に関心を持って対応する力が弱い。また、協働して物事に取り組み、自らの力やメンバーの力を引き出すような体験に乏しいうえ、その基盤を成すコミュニケーション力や論理的な表現力も弱い」(事業申請書)と厳しい。16年度から3年間、県教委の「スタディ・フロンティア推進事業」の指定を受けて「コア・スクール」プランを始めたのにも、そんな危機感からだった。
入学後から9月前半までは進路研究のための探究活動、下旬からはテーマを決めての課題研究に取り組ませる。
ポイントは、いずれも少人数のグループ研究にしたことと、むしろ「失敗」する経験をさせようとしていることだ。「実際にやらせてみないと資質・能力は育ちません」と、担当の塚田健夫教諭は説明する。指定を受けた当時の校長も「先生は手を掛けないでくれ」と話していたと、同校勤務が長い徳原肇教頭は振り返る。
伝統校だけあって、19年度から同窓会東京支部が首都圏でのフィールドワークをコーディネートしてくれることになった。ただし、実際に専門家とのコンタクトに至ったのは10グループ程度だったという。
2年生の各グループが行った課題研究は、校内発表会を経て、ステージ発表やポスターセッションに選出される。代表ともなると「戊辰戦争における宇都宮城攻防戦の意義」「安くて簡単なパワードスーツがつくる未来」など具体的だが、抽象的なテーマに終始するグループも少なくない。フィールドワークに至らず、十分な研究に達しなかった後悔も「失敗」のうちだ。
渡辺敦司(教育ジャーナリスト)