カテゴリー 12023年採択

兵庫県立千種高等学校

対象者数 100名 | 助成額 100万円

https://www.chikusa-hs.jp/

Program思創探究プロジェクト - 地域の子 が 地域を育てる -
宍粟市を思い、宍粟市の未来を創造する人材の育成

 地域に愛着を持つ人間を育てることを目的に行われていた活動を、地域との関わりを拡大させるとともに、新たに大学とも連携し、学術的な知見を得ながら探究の手法を学んでいく。「課題発見・解決力」「協働力」「多面的に物事をとらえる広い視野」を身に付け、地域の人たちから受動的に教えられるだけでなく、主体的に地域の課題に関わり、地域の人たちとともに地域の未来を考え、宍粟市の新たな価値を創造・発信できる人材を育成するためのものに進化させる。

【特徴】

・地域とともに地域の未来を考える活動

地域おこし協力隊、市職員など、地域を支え活性化に取り組む人たちと共に地域の未来について考える。

・地域資源の魅力を発見・発展させる活動

米作りや地域の事業所での就業体験など、学校外での活動を通して、地域の魅力を発見・発展させる。

・多様な人間との関わりの中で多様な思考を身に付ける活動

  小規模校特有の固定化された人間関係では身に付かない考え方を、地域の人たちや大学関係者など年代が異なるさまざまな人たちとの交流を通して身に付ける。

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活動レポートReport

先進校の視察がきっかけにもっと自由で楽しく

 2024年6月に千種高校で行われた「総合的な探究の時間」の成果発表会には全校生徒が参加し、2・3年生が昨年度の成果について発表した。同校の筏泰介先生は、「これから3年間探究に取り組む1年生に聞いてもらいたいと思い、発表会をあえて年度初めに開催しました」と話す。23年度は、1年生が休耕地を使っての米作りとその米を使った販売やイベントなどの活動、2年生は地元企業での就業体験と並行して、地元に縁ある人への職業人インタビューを実施。現3年生は24年度になってから2年生の時の課題をさらに深めたり、もしくは関心・興味のあるテーマの探究を行った。外部関係者を招いての発表会は同校では初めてだったが、緊張しながらも伸び伸びと発表する生徒の姿に筏先生は、23年度の取組の手応えを感じたという。

「千種高校らしい探究活動」を模索してきた筏先生が、大きな影響を受けたのが、長崎県の先進校2校の視察だった。「一つの視察校から、地元に人脈のある退職された小・中学校の校長先生に探究サポーターとして関わってもらい、地域とつなげてもらっているという話を聞きました。本校の教員の多くが地元出身ではなく、地域との関わりの薄さが課題になっていたため、この制度は適用できると感じました」(筏先生)。職業人インタビューも視察2校が取り組んでいた“仕事紹介図鑑”を参考に実施。生徒たちは自ら話を聞きたい人を選び、話を聞き撮影し、冊子にまとめた。「自分が希望した人の話だけあって、目を輝かせて話を聞いている生徒は普段では見られない姿でうれしい驚きでした」と筏先生は話す。先進校のオリジナル教材も参考にして、同校でも探究活動に取り入れている。

 他校の視察は、探究の捉え方にも影響があったと筏先生は話す。「探究先進校と言われるところでも、全員が高いレベルで探究活動をしているわけではないと分かり、肩の力を抜くことができました。今は探究活動はもっと自由であるべきで、それが誰かの刺激になればいいのではと考えています」。自由で楽しく、は教員側にも波及している。23年度には菊川泰校長が人脈を生かして、放課後に味噌やスムージー作り・販売などの講座を企画したところ、当時の1・2年生9~15人が参加した。「自主的に動く生徒は増えており、その姿を見た後輩は必ず影響を受けているはず」と筏先生。「千種高校にとっての探究活動の最適解」を教員、生徒が少しずつ創り上げている。

4年前、同校の生徒たちが作った米が「全国農業高校お米甲子園」に初出品で金賞を受賞。普通科の受賞は異例で、これをきっかけにJAなども関わって、「ちくさの舞」というブランド米として販売。地元宍粟市との連携事業の柱となっている。

子どものときに定期的に病院に行っていて、検査をしてくれる「臨床検査技師」という職業を知って、将来になりたいと思っていたという西田有里さん。2年生の職業体験では、地元病院の検査科を希望。もっと検査技師について知ってもらいたいと、3年生になってからの探究活動では、チラシやHPを制作。HPを見た方から、「看護師になりたかったけど諦めました。でもこういう活動を当時できてたら、親を説得して、その道に進めたと思います。頑張ってください」という感想が届いたという。「とても嬉しくて、将来検査技師になるのが楽しみになりました」と西田さん。

職業体験を、地元の情報誌を発刊している編集プロダクションを選んだ和田明花音さんは、「地元の宍粟市出身なんですが、もっと地域のことを知りたいと思ったことがきかっけです。知るには、教えてもらう側になることが一番早いのかなって思い、編集プロダクションの方々といろんな方にインタビューしました」と話す。予想以上に地元愛にあふれた方々にお話を聞くことができたという。3年生になってからは、このインタビューのノウハウを生かして、宍粟市の紹介冊子を制作。「相手の方がどんなことを伝えたいと思っているのかが分かるようになって、インタビュースキルが上がっていることを実感しました」と話す。

1年生の後半では、皆で作ったブランド米「ちくさの舞」の活用方法を考え、グループの分かれて活動。米を餌にして鶏を飼う、販売する、イベントを実施するなどの活動の中で、岡和花さんはカフェをテーマに選んだ。米を粉にしてくれる業者の選定、カフェで出すスイーツのメニュー開発、カフェを出す店のリサーチなどを他8人と分担して実施。米粉にしてくれる業者がなかなか見つからなかったり、神戸で出店できる場所を探すのが大変だったというが、「最終的には実現できて、来てくれた人を笑顔にできたことが嬉しかった。普段はすぐ『無理』ってなってしまうけれども、今回は皆で頑張ろうってやりきることができました。ともかく楽しかったことが大きかったと思います」と話す。

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