Program誰もが一歩踏み出すための踏み込み共創プログラム
〜「踏み込み」と「振り返り」による「愛されるグローカル人材」の育成〜
本プログラムは、新たな価値の共創に挑戦しようとする人材の育成のため、生徒一人ひとりが自分の歩幅で「実践の一歩目」を踏み出すことを目指すものである。本プログラムを通して、知らないことにも前向きに立ち向かう行動力、地域や社会をより良くするために自ら関わろうとする態度を育成する。
「失敗を共に称え合う学校」という学校経営スローガンの元、踏み込みと振り返りを繰り返すことを隠岐島前高校での学びの基本型としている。その中で最もエネルギーを要するのは、最初の行動実践(踏み込み)である。そのため本プログラムで、生徒が探究活動において初動を起こすことを全力で支援する。
【具体的な取り組み内容】
(1)失敗の日
踏み込みを称えあう発表会と、生徒・教職員が挑戦したいことを宣言するワークショップを行う。また生徒の宣言が行動に繋がるよう、授業での活動と連動させて教職員が伴走する。
(2)失敗フォーラム(仮称)
プロフェッショナルによる講演会、本プログラムによる1年間の踏み込みと振り返りの成果報告、参加者同士が学びあうワークショップを実施する。
(3)生徒活動の支援体制づくり
授業内での支援体制を充実させ「実践の一歩目」への活動資金を確保する。
活動レポートReport
失敗を恐れず踏み込む力を後押しする
15年前、少子化により廃校寸前だった隠岐島前高校は、地域課題解決型学習の導入や島外留学者の受け入れなど「高校魅力化プロジェクト」に取り組み、「奇跡の復活」を遂げた学校として知られている。
その同校が、昨年度から二つの新しい取組を進めている。一つが、「失敗を共に称たたえ合う学校」というスローガンを掲げ、10月13日を「失敗の日」とするフィンランド発祥の記念日を取り入れたことだ。スローガンには、生徒や教職員が失敗を恐れず果敢に踏み込み(=挑戦)、かけがえのない経験をし、それを質の高い「振り返り」によって学びに昇華してもらいたいという思いが込められている。そして「失敗の日」は、踏み込みや失敗を共有し、称え合い、挑戦を宣言する記念日とした。
今年度の「失敗の日」では、まず先生方の踏み込みとして、失敗を恐れず記憶を頼りに書いた絵で全校の笑いを誘った。次に生徒たちが“先生”となって好きなテーマで行う授業と探究活動発表会という、生徒たちが踏み込んだプログラムを実施。その後はグループに分かれ、最近の挑戦や過去の失敗を共有し、励まし賞賛し合った。「昨年は『失敗の日』に宣言した挑戦について振り返りを行ったところ、本当に実践した生徒・教員が多数いました。今の生活に満足してしまい、“踏み込む”必要性を感じない生徒には『実践への第一歩』と言ってもハードルが高いのですが、『失敗の日』が後押ししてくれたと思います」と、同校のコーディネーターの新立みずきさんは話す。
もう一つの新たな取組は、地域共創科の創設だ。高校生も大人と共に地域をつくる一員として探究してほしいという狙いから、今年度創設されたこの科では、毎週木曜日、終日を探究活動に当てることができる。実際、木曜日に伺ってみると、ほとんどの生徒が校内や町のいたるところで探究活動を行っていた。忙しそうに動き回る生徒は、充実した表情ではあるが、プロジェクトを成功させなければという気負いのようなものは感じられない。失敗しても振り返りを行い、実践を繰り返すことが大事だという同校の方針が浸透していることが感じられる。
また、出会った生徒に、島留学や地域共創科を選んだ選択をどう思うか聞いたところ、全員が「間違っていなかった」とはっきりと答えた。自らの選択を心から肯定し、今の自分にイエスと言える環境は、同校の取組の大きな成果の一つであろう。