Program矢高おおなん協育プログラム
〜生徒が学び 地域が学び 教員が学ぶ共同体の創造〜
本プログラムは、「ふるさとを思い、地域の未来をつくる」人の育成のため、矢上高校の普通科と産業技術科2つの学科の連携を行い、「総合的な探究の時間」や「総合的な探究の時間」を軸とした教科横断や学校設定教科のリニューアルを行う。そのために、生徒が自ら探究できる体制や地域や教員が伴走できる体制を構築する。そして、生徒だけでなく、地域や教員も心のエンジンを駆動する学びの共同体へ進化する。
①学科を超えた探究の創出
・普通科と産業技術科の学び合いの場の創出
・普通科と産業技術科コラボレーション商品
②「協育パートナー」の組織化
・生徒と協育パートナーとの出会いの場の創出
・協育パートナー研修会の実施
③生徒が自走する仕組みの構築
・探究ポータルサイトの整備
・探究アワー(水曜7時間目)の設置
・探究の進捗がわかる「探究ボード」の設置
・「ボランティアボード」の運用
④教職員の探究体制の構築
・教員研修ポータルサイトの構築
・教職員プチ研修の定例化
・全校で探究を伴走する体制の構築
⑤地域の共学体制の構築
・生徒と地域が共に学ぶ発表会の設計
・地域が行う出張授業プログラムの開発
活動レポートReport
地域との結びつきを通して将来のビジョンを描く
2023年12月、島根県立矢上高等学校で、普通科2年生の地域未来探究発表会が行われた。教育目標にある「ふるさとを思い、地域の未来をつくる人」の育成に取り組んでおり、今回の発表会でも「保育士の負担軽減」「町の提供医療の充実化」「空き家の有効活用」「世代間交流で地域活性化」など地域に根付いた多様なテーマで発表が行われた。探究活動のコーディネーターである小林圭介さんは「今年は実践に移せた取組が多く、やってみて初めて気が付くことも多かったのではないかと思います」と話す。
同校では、教育活動を支援してくださる地域の「協育パートナー」に基本1人一つの班の担当となってもらって探究活動を進めている。23年度からは教員による伴走の体制も強化した。島根県では探究学習担当教員が各校で決められており、担当教員は県による研修を受けたのち、校内にそのノウハウなどを伝える役割を負っている。
同校の担当教員である郷田菜摘先生は、職員会議が終わった後の10~15分を利用した研修を行ったり、伴走や声掛けの資料を作って配付しているという。「今、校内の3分の1の教員に2年生の探究活動に関わってもらってます。配付した資料について質問してくれたり、実際に現場で活用してくれる教員もいて、学んできた知見が役に立っているんだという実感があります」と話す。
地域との結びつきから、自分の将来をより明確に描けるようになった生徒も出てきている。「子ども食堂」の立ち上げに協力し、そこで世代間交流を行った2年生の永倉琉晟さんは「少子高齢化や都市一極集中は日本全体に関わってくる課題。そこにもっと関わっていきたいと思った」、地域医療について取り組んだ寺本佳織さんは「もともと看護師を目指していましたが、地元の医療事情でも知らないことが多く、他の医療分野にも関心を持つきっかけになった」と話す。「今後も地域の振興に関わりたいと、地域系学部に進む生徒が出てきたのは探究活動の成果の一つだと考えています」と主幹教諭の清水峰子先生は話す。
こうした生徒の変化などを踏まえ、同校では毎年探究活動の進め方や内容を柔軟に変えている。「探究の時間とは別に起業探究という科目もありますが、来年度は探究の時間に吸収し、課題解決をビジネスにつなげるという授業内容を検討しています」と小林さんは次年度の展開を語った。