カテゴリー 12023年採択

広島県立日彰館高等学校

対象者数 207名 | 助成額 200万円

http://www.nitsushokan-h.hiroshima-c.ed.jp/

Program「田舎主義」
~生徒の資質・能力を育成するための地域と協働した教育カリキュラムの実践~

 日彰館高校では、総合的な探究の時間「田舎主義」を軸として地域と連携・協働して行う教育カリキュラムを実践している。

 1年生は、三次市吉舎町を教材に、「地域探究」を行う。地域づくりに携わる講師による講話、地域でのインタビューを通して地域の「宝」や「課題」を見出す。地域の活性化や地域の人々の“well-being”につながるプランを考案し実践する。

 2年生は、「地域探究」「伝統文化継承」「異文化比較」「個人探究」に分かれて探究活動を行う。また、本校の卒業生であり「蓬莱米」の開発者である磯永吉農学博士の研究室が台湾大学に残っていることをふまえ、県立広島大学教授による「台湾講座」を全員が受講する。

 3年生は、「個人探究」を行う。学習成果発表会では、「吉舎で学んだからこそ得た深い学び」を自らの言葉で熱く語る。「田舎でこそ豊かな人間教育を行うことができる」と館祖奥愛次郎先生の目指した教育が生徒の語りに体現されている。各学年における学びは、全校生徒が参加し発表と質疑応答を行う「全校合同田舎主義」で共有し、探究活動の継続性を図っている。

 また、保育所・小学校・中学校との連携を深め、保育所から高校までを見通した「吉舎版ルーブリック」を用いた評価を取り入れ、地域とともに児童・生徒の学びを深める教育カリキュラムを実践している。

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少人数・田舎という特長を生かす

 1894年、中国地方の中央に位置する吉舎町出身の奥愛次郎氏が、静かで美しい自然のある田舎こそが教育を行うにふさわしいという「田舎主義」の下、同町に創設したのが日彰館高等学校だ。1969年に県立に移管され、今年で創立130周年を迎える。少子化に伴い、生徒数は減ったが、少人数・田舎だからこその教育を、「縦・横の強いつながり」で推進している。学校運営協議会には、PTA・同窓会・吉舎支所・吉舎自治振興連合会、吉舎中学校、県立広島大学が所属しており、毎月第一月曜日に「朝のコーヒータイム」として、協議会メンバーの他、保育所、社会福祉協議会、老人会、商工会、図書館などから30名程度が集い、情報交換を行っている。また保小中高校が揃う教育環境を生かした町づくりも進められており、縦のつながりも強い。6年前に異動してきた中山佳奈子先生は、この恵まれた環境を生かすべきだと、周りの先生方の協力を得て、探究活動を地域との関わりを強化した内容へ変えてきた。

 1年生は地域探究をテーマにしたフィールドワークを行い、2年生は地域探究の継続、姉妹校がある台湾講座、異文化理解プログラムの三つから選択できるようになっている。2年生の小田梁成さんと有間優来さんは、吉舎のイメージキャラクターの着ぐるみを作り、地域活性化のイベントで活用してきた。「完成までには地元の企業をはじめ多くの方に協力いただいた」と話す二人は実は吉舎町出身ではない。長い歴史を持つ日彰館高校は吉舎町の誇りだと、惜しみなく協力してくれる住民の温かさに触れ、吉舎の活性化に真剣に取り組むようになり、「今度は自分の住んでいる地域の活性化に取り組みたい」と話す。「生徒が地域に出ていきやすい環境になったことで、探究の内容もより現実的な地に足のついた内容になり、主体的に動く生徒が増えてきました」と中山先生は話す。

 もう一つの変化は、生徒の進路だ。同校では、生徒一人に先生が一人ついて進路相談に乗っている。3年生の中山明希さんは、探究活動で社会福祉協議会などを訪問する中で、社会福祉士としての進路を決め、2年生の伊木ひろさんは、「吃音」を探究テーマにして発表し、言語聴覚士を目指すようになった。生徒たちが一歩踏み出し、自分自身に真摯に向き合って将来を描けているのは、地域との信頼関係や、先生が一人ひとりの生徒に寄り添える環境が大きいと言えるだろう。

同校の生徒が考案した吉舎のイメージキャラクター「山野芋子」。中には有間さんが入っている。素材に地元産業のデニム生地を使うなどの工夫が凝らされている。「新しい着ぐるみになってから、お客さまと握手したりハグしたりと触れあえるようになった」と小田さん(発表者の左隣)と有間さんは話す。

2023年度には、「マイプロジェクトアワード広島Summit」に2組が参加。堂々と発表し、またそこで受けたアドバイスを基にSNSでの発信に取り組むなど、積極的な生徒に中山先生の方が驚かされたという。
「もっと外の世界に生徒を出して刺激をもらってくることも課題だと思っています」と中山先生は話す。

1948年に同校の教員が作った影絵クラブの影絵は、今も生徒たちがその伝統を継いで次世代に残す活動を行っている。その一人である1年生の向井凛さんは、「普通の影絵と違い木製でとても魅力的だと思いました」と話す。

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