カテゴリー 12023年採択

徳島県立阿波高等学校

対象者数 465名 | 助成額 100万円

https://awa-hs.tokushima-ec.ed.jp/

ProgramA-waveがつなぐ地域と未来

 本校は令和5年度に創立100周年を迎える伝統ある学校で、地域や保護者、卒業生からの期待は高く、多くのご協力やご支援をいただける恵まれた環境にある。

「A-waveがつなぐ地域と未来」は、そのような環境を活かし、2学年の総合的な探究の時間(A-wave)を中心に、「未来の魅力的な阿波市・上板町(社会・まち)のために」というテーマで地域課題解決型(PBL型)学習に取り組むことで、地域社会のさまざまな課題に自ら進んで関わり、周囲の人々との協働のなかで解決を図ることに深い満足を見いだせるような人間性や実践力の育成を目的としたプログラムである。

 特徴としては、探究活動のテーマを「地域社会の課題解決」に限定することで、単なる調べ学習や一般論に終わらせず、自分たちの住む地域のことを具体的に知り、関わり、解決に向けて行動するきっかけとする点が挙げられる。活動を通して、地域の行政や企業、他校の生徒等と関わることで、生徒が積極性や主体性を獲得していき、なかには、行政のステッカーや名刺のデザイン、地域企業の商品開発等に結実していった例もあり、今後もそれを発展させ、地域との、そして未来へのつながりを確かなものにしていきたいと考える。

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活動レポートReport

教員の予想を超えた生徒たちの校外での活動

 「先生方には負担をかけてしまいましたが、予想以上に校外に出て探究活動した生徒が多く、うれしい悲鳴と言えばそうかもしれません」と、阿波高校の吉田道雄先生は2023年度の2年生の探究活動「A-Wave」を振り返る。同校の2年生はクラスシャッフルで、防災・環境・エネルギー、文化伝統・観光、健康・福祉、医療、教育、産業・地域創生といった地域課題のうち、自身の関心のあるテーマを選んで探究を行う。外部メンターは入れず、各分野には教員が1~3人付き、探究活動のヒントになりそうな行政や企業、NPO法人のキーパーソンとつなぐなど、生徒が存分に活動できる環境づくりに取り組んでいる。

 2024年2月には発表会が行われ、校外で活躍した事例が数多く報告された。食育に取り組んだグループは、地元野菜を育てる方に話を聞き、地産地消の給食メニュー開発のために地元飲食店のシェフに教えを請い、母校の小学校で出張授業を行った。自分たちの演奏で地域イベントを盛り上げようと取り組んだチームは、イベント参加を自ら交渉し、そこで得た人脈からさまざまな場所で演奏を行った。またアンケートも実施し、その声に応え、簡易なマラカスを作って、聴衆にも演奏に参加してもらった。自分たちで次のアクションを考え、実社会で実践する生徒が増えた要因を、「新型コロナの行動制限があけたこと、また学校側で最初に地域で活動する方との接点を作ったことが、生徒の外での活動を促進したのでは」と吉田先生は推測する。

 教員の取り組み姿勢にも変化が出ている。台風で倒壊した古墳の社殿再建のためのクラウドファンディングに参加する生徒を学年を超えて募集したり、大手コンビニの地元食材を使ったスイーツ募集企画を広く生徒たちに紹介して、コンビニ担当者とのZOOMミーティングを設定したりするなど、授業内外で、探究的な企画に自主的に取り組む教員が出てきているという。「昔は、教員から探究が何の役に立つんだという声もありましたが、今や大学受験の面接時にどのような探究をしてきたのかを聞かれるのが当たり前になってきている。そういう場で生徒がしっかり語ることので

きる経験を準備するのが教員の役目という意識に変わってきています」(吉田先生)。

 同校では、24年度の活動について、校外での活動を促進しつつ、その内容を研究に反映するなど、実践と理論をつなげる次のステップの実現に向けて検討中だという。

地域イベントを音楽で盛り上げようと集まった2年生4人と1年生3人のグループ「あわカルテット」は、テーマソングも作り、さまざまなイベントに参加。メディアに取り上げられる機会も増え、住民に声を掛けられることも多くなったという。

台風で倒壊した古墳の社殿再建のためのクラウドファンディングに参加した生徒たち。担当教員や生徒の声掛けで、阿波高校以外の生徒も仲間に加わった。無事に目標額を達成し、再建が実現した。「人前に出ることが得意ではないと思っていた生徒が、取材しに来た地元のメディアに堂々と応えている姿を見て、驚くとともに、その成長を本当に嬉しく思いました」と吉田先生。

母校である小学校に自ら交渉して、食育の出張授業を行う生徒たち。地域の人たちへのインタビューや出張授業の準備などは、放課後や休日を使って取り組んでいたという。

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