カテゴリー 12023年採択

香川県立小豆島中央高等学校

対象者数 420名 | 助成額 200万円

https://www.kagawa-edu.jp/syochuh02/

Program総合的な探究の時間「櫂風」

「社会へ漕ぎだすための櫂を手にし、イノベーションという風を起こす」

 このような意味を込めて名付けられた『櫂風』は、小豆地域唯一の高校だからこそできる、地域資源を丸ごと生かし、地域とともに生徒を育てる教育プログラムである。「小豆島の未来を切り拓く」をテーマに、地域の行政や企業とコンソーシアムを形成し、教室の中だけにとどまることなくさまざまな経験や人との出会いの中で探究活動を進める。

 その中で、3つの学校教育目標に基づく以下のような資質・能力を育むことを目指す。

「自立」-自らを知り、自らを活かし、何事にも挑戦することができる。

「真心」-固定観念にとらわれず、真理を見極め、現状を変える新しい考えをもてる。

「小豆島」-自分の属しているところに誇りをもち、将来を担う人になる。

 

 教室を飛び出し、より広く深く活動したい生徒には、世界へ漕ぎだすための教育プログラム『Plus One』が用意されている。その活動の1つである『しまのみらいプロジェクト』では、生徒が主体となって大人を動かし、地域の魅力を発信している。1年間の活動をまとめたフリーペーパー「しまいろ」は、地域全体に発行され、多くの支持を集めている。

「しまいろ」はこちら→ https://www.kagawa-edu.jp/syochuh02/plusone

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活動レポートReport

地元の強力なサポートの下、探究の多様なステージを整備

 小豆島中央高校は、小豆島高校と土庄高校が統合し、2017年に開校した島唯一の高校だ。同校の探究活動は、全校生徒が参加する「総合的な探究の時間」の「Standard櫂風」と、希望者参加の「Plus One櫂風」の二つから成っている。Standardでは、同校が独自に制作した教材を使用。とある国の王様が1年生たちに国の課題解決のオファーを出すという内容だ。「当初は一般的な社会課題を扱っていましたが、堅い内容で生徒が苦手意識を持ってしまったため、ストーリー仕立ての教材を制作しました」と池本健志朗先生は話す。この学習と並行して、実際に地元役場から生徒たちへ島に関する課題解決のミッションが課され、グループ探究を行う仕組みとなっている。テーマは学校が割り振るが、生徒たちは3学期に行うポスターセッションを通して自分の興味・関心がある分野を見つけ、2年生ではその分野で探究を進めていく。

 一方、Plus Oneは役場や中小企業家同友会、NPOなど地元有志によるコンソーシアムの設立を機に効率的に動き出したという。「島の方々からばらばらに寄せられていた協働の申し出を、コンソーシアムを作っていただいて窓口を一本化し、内容も教育と紐づけた結果、地域資源を存分に活用したプログラムとなりました」(池本先生)。Plus Oneには、コンソーシアム企画・立案の講座やイベントへの参加といった「わたしのみらいゼミ」と、生徒が企画し、コンソーシアムと協働して活動する「しまのみらいプロジェクト(以下、しまみら)」の二つがある。コンソーシアムには、同校が導入している学習支援クラウドサービスにも参加してもらい、Standardで探究活動中の生徒の疑問やアンケート依頼などに対応してもらっている。こうした支えの下、探究の多様なステージを用意し、生徒の積極性・自主性を引き出している。3年生の藤田夏菜子さんは、Standardで島のゴミ問題に着目し、「しまみら」ではビンゴを手に島内を散歩し、島の魅力を再発見しながらゴミを拾っていくという企画を実施。「Standardで得た知見を、『しまみら』で検証・実践するなど、双方の成果を関連付けることができました」と話す。

 今後の課題として池本先生は「文化祭やLHRの時間も使って、生徒が興味・関心を見つける機会を増やし、それらと社会課題をマッチングさせていくこと」を挙げる。オリジナル教材の制作、コンソーシアムの設立に次ぐ一手に注目したい。

藤田さんたちの「おさんぽBINGO」企画には大勢の親子が参加。これらの成果をまとめて第9回高校生国際シンポジウムに参加。ビンゴカードは広告会社とコラボして商品化した。島への愛着が生まれたという藤田さんは「成果が出たら終わりではなく、この活動を続けていくことが大切だと感じています」と話す。

観光地「小豆島オリーブ公園」の盛り上げ策の一つとして、オリーブの害虫であるオリーブアナアキゾウムの食用化を提案した高木琉聖さん(写真中央)。同校の活動に参加してくれている中小企業の方々がコンペ会を開き、高木さんの発表を聞いて賛同した方達がアバイスをしてくださった。「ゾウムシは食べられるから、この虫も食べられるのかなというちょっとした思い付きから、まさかこんな風に注目されるとは思っていなかった」と高木さん。「これまで考えること自体が苦手だったんですが、これを機に、自分の将来の事とか真剣に考えて、実現に向けて今やれることに取り組んでいます」。

濱中美優さんは日本遺産に登録された「備讃諸島の石の物語」の魅力を伝える取り組みとして、備讃諸島の石を使った食器づくりを提案。実際に石の加工工場を訪ねて試作品づくりの打合せを行った。「自分のアイデアが実際に形になるなんて思わなかったので、楽しんで取り組めました」と話す。「人前で話すことが苦手なのですが、この成果を県の探究発表会で大勢の人の前で話したときに成長できたかなと感じました」。

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