カテゴリー 12023年採択

愛媛県立今治東中等教育学校

対象者数 200名 | 助成額 99.8万円

https://imabarihigashi-s.esnet.ed.jp/

Program令和の伊予商人 今東地域資源(自然・歴史・伝統文化)事業化プログラム

「伊予商人」とは、江戸末期から漆器の「椀船行商」で名をはせた桜井商人を指す言葉である。桜井を漆器の町に育て上げ、日本初の月賦販売を始めた彼らの進取の気性とたぐいまれな行動力に学び、今東生が令和の伊予商人として、地域資源を生かした地域活性化事業に取り組む。

 自然分野での取り組みは、本地域の歴史的景観である「白砂青松」活用事業である。将来的に桜井海岸でのアマモの藻場再生(ブルーカーボン)を目指す研究と農林水産省が掲げる有機農地25%計画(2050)に基づく有機農業分野での廃棄松葉の活用研究を行う。  

 歴史分野での取り組みは、歴史遺産の宝庫である桜井地域を舞台とするJR四国の旅行商品の企画を行う。ガイドも本校生が担当し、今治観光の活性化に貢献する。

 伝統文化分野での取り組みは、桜井漆器の商品開発である。脱プラスティック化、感染症対策への関心が高まる中、抗菌作用を持つ漆を使った商品開発は、時代のニーズに合っていると考える。

 これらの事業は、3・4年生合同の「総合的な探究の時間」に実施する。毎年、新3年生が加わることで、活動が継承されていく。地域の関係機関と協働的に取り組み、課題解決・地域活性化における「共助」を目指す。

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中等教育校の利点を生かした、探究に没頭できる環境づくり

 2023年10月、愛媛県立今治東中等教育学校は、3年ぶりに文化祭を保護者や地元に公開した。開会式に続いて、三つのグループから探究活動の発表が行われた。生物多様性探究班は、愛媛県で地元の海岸だけに生息する植物の特徴を、他の植物との関係から解き明かす研究を報告した。郷土史探究班は、今治にかつて国府が置かれていた理由を、地形と遺跡の分布から導き出した過程を説明した。また、別々の探究活動班が有志団体を結成し、桜井海岸でスポーツ、砂浜清掃、希少植物の保護を目的としたイベントを開催した。その結果報告と今後の活動への参加の呼びかけを行った。どの発表にも、会場からは大きな拍手が送られた。「探究活動を始めたのは昨年度からですが、対外的な活動や発表を繰り返す中で、生徒は自信を持って、堂々と発表するようになりました。外部の大人に対してもしっかり対応できるようになりました」と同校の井川六月先生は話す。

 3・4年生(中3・高1)を対象にした探究活動は、教員が専門性や地元をテーマにした講座を開き、生徒たちは2年間で最大四つの講座に参加できるようになっている。5・6年生(高2・3)は、書籍の読み込みやディベートのスキル向上など、よりアカデミックな内容に取り組んでいる。

 探究活動がスタートしてから、生徒だけでなく、周囲の環境にも変化があったという。2006年に中等教育学校となった同校は、今治市だけでなく市外の多くの地域から生徒が通学していることもあり、地元の中学校とは異なり、地域からの連携の依頼が同校にはこないことが多かった。「そこで探究活動を機に地元との関係を再構築しようと、本校から積極的に地元や市に声掛けし、逆に協力の依頼があれば必ず受けるようにしてきました。おかげで市から紹介されたNPOや地元で活動している方々とも顔見知りになり、地域とのネットワークが急速に広がっています」と井川先生。

 スポーツ分野で実績のある同校では、部活動に熱心に取り組む生徒が多い。そのため高校の部活動の主役になるには早い3・4年生の時期に探究活動を設定することで、部活動に携わる顧問の先生たちも応援しやすい仕組みになっている。「高校入試がなく、進路決定にはまだ時間のあるこの時期に、2年間探究活動に没頭できるのは、中等教育学校ならではの利点。これを最大限生かしながら、本校にしかできない探究活動を模索していきたいと井川先生は話す。

地元・桜井の歴史を観光客に伝える活動は、JR四国とのコラボが決定。ガイドを務める4年生の神野瑠乃さんは「年配の方にも分かりやすい言葉遣いとか言葉選びを意識しています」、双子の神野琉愛さんは「もともと人とお話しするのが好きで、改めて自分の得意なことを再認識できました」と、活動を通してコミュニケーションに自信が付いたと話す。

文化祭で行われた探究活動の発表。三つの探究活動をまとめて行われたイベントは、学年に関係なく探究活動に携わった生徒たちによって開催された。

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