Program「大地に絵をかく」イノベーターを育成する教育プログラムの研究開発
〜多様な人びと協創するグローバル・イノベーター〜
自己・地元・世界のデザインができる人間の育成を目指し、宮崎大宮「大地に絵を描く」教育プログラムとして再編・発展させる。米国のSTEAM教育・PBLの方法原理を研究して開発した文科情報科の新教科「グローバル協創」(文科情報科必修)や普通科の「総合的な探究の時間」(普通科必修)では、自己の生き方・あり方と世界と地元を結びつけたテーマとした探究活動をコアとする。
このコアである探究活動と結びつけて、1・2年生希望者対象に、台湾・ベトナムなど海外連携校の先生・生徒を受け入れた探究活動であるイノベーション・プログラムを実施する。2年生の希望者には、海外研修・米国研修を実施し、世界を舞台に探究する世界を牽引するリーダーの育成を行う。その探究活動と教育のための授業研修と公開研究会、高大接続教育としての大学教育の先取り履修を開発する。
活動レポートReport
長年のノウハウを基に探究力の“見える化”に取り組む
県内トップレベルの進学校である宮崎県立宮崎大宮高校は、探究活動を2007年から取り入れてきた。普通科では「自分の将来と社会を結び付けたテーマ」について個人単位で、国際・情報分野に重点を置いた文科情報科では「自分の将来と地元と世界を結び付けたテーマ」について6人のチームで探究に取り組んでいる。この授業をコアとし、関連する探究活動として、他校生徒も交えての「大学教育の先取り履修」や、海外の連携校の生徒たちを受け入れてフィールドワーク、ディスカッション、プレゼンなどを行う「イノベーション・サマー・プログラム」、海外研修も行っている。
探究をスタートした当初、校内では探究への懐疑的な意見もあったというが、いち早く共感してくれたのが、難関大学の進路指導をしていた先生方だったという。例えば、海外研修で英語を「目的」ではなく探究活動の「手段」として使ったことが生徒の意識を変え、GTEG点数の大きな伸びにつながったり、生徒同士のディスカッションでは、研修に行った生徒がリーダーになることが多いなど、伸びる生徒をよく見ていた先生が違いに気づき始めた。探究活動を主導する研修図書部の木塲康典先生は、「探究の成果はなかなか目に見えにくいのですが、教科のいわゆる『見える学力』の下支えになっているという理解は進んできたんじゃないかと思います」と話す。
「社会とつなぐ」「大学の学びとつなぐ」「世界とつなぐ」という三つの軸で学習環境を構築してきた同校がいま力を入れているのが、この見えにくい成果の「見える化」だ。生徒による毎回の自己評価、アンケートから探る対話の質と思考力のリサーチ、チームでの相互評価、課題設定力・課題解決能力を測定する定期テストなど、あらゆる角度から生徒の能力の伸びの傾向や教科・学力との関連性について分析を行っている。「探究力を『見える化』することについては賛否両論あると思いますが、おそらく先生方は探究が生徒に与える影響を何かしら肌感覚で持っているはず。それらを『見える化』することで、探究も市民権を得られ、進学校としての役割も果たすことができるのではないでしょうか。本校においては、探究は知見を集める段階に来ていると考えています」と木塲先生は話す。
探究活動の成果を最大限に引き出し、生徒・学校にその成果を継続的に還元させるためにはどうしたらいいか。同校は次の展開を視野に入れた取組を進めている。