Program国内外の教育イベントに出場して優秀な成績を修めた高校生がチームを結成し、
1年間で3分野の課題解決に取り組む高校選抜探究リーグ
過去13年にわたるPBLの大会開催と、学校間で成果を競うオンラインによる課題解決プログラムの実施実績を踏まえて、国内の学習イベントやコンテストへの出場・受賞経験のある高いモチベーションを持つ高校生に次なるステップを提供する。
参加者は、地域や学校の垣根を越えてオンラインでチームを結成し、1年間で3分野、「芸術・クリエイティブ」「地球的規模の課題」「ビジネス・アントレプレナーシップ」の課題解決に挑む。
参加条件となる「全員が教育イベントの出場・受賞の経験を持つこと」を出発点とし、チーム内・外で刺激を受けながらより高いレベルの課題解決に取り組み、切磋琢磨し成長できる環境を用意。
各探究テーマ設計には、その分野の第一線の事業者に参画いただき、生徒たちが課題の背景への知見を得るとともに、高い対話力や個々の思考力を磨く中で、自身の本来の力を自ら発掘していく。取り組みの最後には、個人やチーム、学校といったこれまで置かれていた環境の枠を超え、社会課題の解決に向けて考え抜いた提案をプレゼンテーションする。
取り組みは、次年度以降も継続的に行うこととし、本プログラムを卒業した生徒たちがよりレベルの高い課題解決に向けて現役高校生をサポートする、持続的・自律的な社会課題解決のためのコミュニティ形成を目指す。
活動レポートReport
3シーズンにわたって探究力を競い合うリーグ戦形式の学習プログラム
トゥワイス・リサーチ・インスティテュートは創業以来14年にわたり、中学校・高校の探究学習に活用できる実践的なPBLプログラム「トゥワイス・プラン」を開発・提供してきた。ワークブックやWeb教材の提供だけでなく、先生方に向けた事前研修やサポートも充実していることから導入する学校は年々増加。これまで同プログラムに取り組んできた生徒数は累計12万人にも達する。また、参加した学校・生徒の取り組みをプロセス・パフォーマンス両面から評価する「トゥワイス・アウォード」という全国大会も毎年行っており、3月には4日間にわたるオンライン・リアル複合形式の本大会を開催し、部門別のグランプリを選出している。
その次の一歩として同社が構築したのが、オンラインによるチーム対抗の「高校選抜 探究リーグ」。既存の枠や型にはまらず、社会に大胆な進化をもたらす異能人材を発掘、育成することを目指している。
「アウォードでの受賞による達成感や他校のプレゼンから受けた刺激で、ますますモチベーションが高まったという声が、いつもたくさん届きます。さらに高め合う場が欲しいと望む生徒の皆さんに応えるために、リーグ戦という形のプログラムを開発しました」と同社の関 峻介さんは語る。
「高校選抜 探究リーグ」への参加条件のハードルは高く、全員が国内外の教育イベント、各種競技会やコンテストの受賞経験を持った3~5人の高校生で結成されたチームであること。前述のアウォードはもちろん、他のコンテストで受賞した学校にも広く呼びかけ、数多くの生徒たちが参加した。リーグの内容は、1シーズン1カ月という短スパンで、「芸術・クリエイティブ」「地球的規模の課題」「アントレプレナーシップ」という3つのテーマの探究活動を行うというもの。それぞれ専門家から出される課題に対して、生徒たちは独自の解決策をプレゼンする6分間の動画を制作し、評価を競い合う。それぞれ明確な解がない課題だけに、難易度は高いが、高校生らしい自由な発想も期待される。
テーマの順番にも明確な意図があり、「日本人としてのアイデンティティという内面の抽象的課題から始まり、世界における具体的な課題、総合的な社会的事業と外へ広がっていくイメージで設定しています。24年度はテーマを踏襲して行いますが、25年度のテーマは未定。2年間の実施によって生まれるであろう新たな発見によって、進化させていきたいと思っています」と関さんは語る。
相互評価の導入によりモチベーションアップ
参加条件に厳しい制約を設けたのは、参加者を高いモチベーションを持った生徒に限定することで、全てをオンラインで行うことによる離脱率を減らす目的もあった。応募開始当初は50人の参加という目標を立てたが、予想を上回るエントリーがあり、最終的には21チーム87人が参加。最終ゴールまでの到達率は83%という、オンラインプログラムとしては高い数字を達成した。
離脱率の少なさは、相互評価の導入によるところが大きいと思われる。外部審査員の評点は7割、残りの3割は参加高校生同士が割り当てを決めて採点し、フィードバックを返す。競い合う同世代ライバルからの評価は想像以上の刺激をもたらし、専門家の審査員からの講評にも劣らないほど敏感な反応が各チームに見られた。ライバルチームのプレゼンテーションから受ける衝撃も大きく、次のシーズンへのモチベーションアップにつながっていく。またそれが3シーズンあることで、振り返りからの再チャレンジが繰り返されることになり、心のエンジンを回し続ける原動力となる。シーズンごとに理解力も深まることもアンケート結果から見て取れ、発表される動画もライバルの影響を受けながら、確実に完成度が高くなっていった。
参加高校生に伴走する大学生メンターの存在も、プログラム完走を支える心強い味方となる。5チームに1人の割合で配置されたメンターが、プログラム進捗の確認をはじめとして、スケジュールの相談からプレゼンテーションへのアドバイスまでこなし、悩める高校生たちの「良き先輩」として機能している。
各シーズンのスコアとランキングをはじめ、審査員や高校生からのフィードバック、メンターとのやり取り、専門家との質疑応答などは全てSlack上で行われ、いつでも確認することができる。またプログラム終了後には、第1期参加者共通の掲示板的チャンネルも設定され、参加者同士がいつでもコミュニケーションを図れるようになっている。参加者たちが大学へ進学した後の研究報告などといった利用も期待されている。
動画編集スキルを活かした完成度の高い“作品”
「対面型の教育プログラムの提供を長く行ってきた当社にとって、ICT環境をフルに活用したプログラムは大きなチャレンジ。コロナ禍の頃から試行錯誤を重ねてきたもので、ようやく実現できました。オンライン上で参加者たちが孤立しにくい環境をつくることが最大の課題。成果発表に関しても、プレゼン動画を編集して提出という形式を取り、事前にメンターがフィードバックできるようにしました」と関さんは語る。
動画の長さも、作成・評価のやり取りともに扱いやすい6分間に設定。YouTubeやショート動画に慣れ親しんだ彼らにとっては、ちょうど表現しやすい長さであり、実際、プロの作品と見まがうほどの、スピード感にあふれた動画が各チームから提出された。課題解決に向けた自分たちの考えのプロセスと提案を、学校内ではあまり使う機会のないような高度な動画編集スキルを発揮しながら、テンポよくまとめたプレゼンテーションが高得点を獲得していた。
3つのシーズンが終了した後、2024年5月にはオフラインイベントが東京で開催された。全チームの参加は叶わなかったが、6チームが集まり、今回の取組みをまとめたチームごとの報告や各賞の表彰式、プチアイデアソン※、フリーの交流会などで親交を深めた。オンラインによる交流会を希望する声も多く、今後開催していく予定だという。そうした交流から大学生メンターなど、活動を補助してくれるメンバーが生まれたり、新規のプログラムが開発されたりするような循環型のコミュニティが形成できればと関さんは話す。
プログラムの設計当初は、学校の枠を超えたチームという構想もあったが、応募以前のチームビルディングにまで遡ってサポートする手段がなく、今回はいくつかを除き、ほとんどが学校単位の参加となった。「しかし、当プログラムをコアとしたコミュニティが成長していくことで、学校間の敷居も次第に低くなる可能性はあると思います」(関さん)。
既に応募受付中の第2回に関しては、100名の参加を目指して多くの高校にDMを送付したり、SNS広告のキャンペーン展開などを試みている。
近未来の日本をけん引する異能の若者が、オンライン上に再び集結する。
※アイデア(Idea)とマラソン(Marathon)を掛け合わせて造られた造語。特定のテーマを決めて、そのテーマについてグループ単位でアイデアを出し合い、その結果を競うというイベント