カテゴリー 12020年採択

東京都立大泉高等学校

対象者数 320名 | 助成額 200万円

http://www.oizumi-h.metro.tokyo.jp/main/index.html

ProgramQuest & Creativity-創造の泉を見つける-

 生徒自らの興味・関心からテーマを設定する探究型授業を全校で取り組む。問いを立て、簡単には答えを得られないリサーチクエスチョンを見つけ、内発的な動機を推進力に探究する時間をカリキュラムに導入する。

 コア・プログラムとして段階ごとに五つに分けて実施する。

 

・コア・プログラムⅠ 生徒が自らの興味関心を深め、自らの探究テーマを定める中で、普遍的な探究の手法を学ぶ

・コア・プログラムⅡ 実践を通じて探究手法への理解を深め、課題設定の重要性を学ぶ

・コア・プログラムⅢ 分野横断をイメージしてテーマを掘り下げながら、異分野との接続と連携を模索し、仮説検証型の課題追究を実践する

・コア・プログラムⅣ 実践を論文にまとめ情報発信する

・アドバンスド・プログラム 校外コンテスト等で実践を発表し評価を受ける

 

 これらコア・プログラムはゼミを編成し、各ゼミに担当教員とTAを1人ずつ配置する。

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現状に満足せずカリ改定へ

 取材で訪問した1月の土曜日、アリーナでは2年生(約200人)が、同級生や教員、TAなどにポスター発表を行っていた。本来なら1年生も入れたいところだが、コロナ禍で断念。進行役の生徒が「密を避けて見学してください」と呼び掛けていた。
 それでも生徒たちは「東京ディズニーシーに人々が足を運ぶ理由は何か」「色の彩度と受け手の抱く印象の関連性」など多彩なテーマを掲げ、リサーチクエスチョン(RQ)→手法→結果→考察→結論・展望などを、流ちょうに説明。他の生徒も熱心にメモを取ったり、質問したりしていた。「独裁者の評価の仕方~彼らは善か悪か~」の発表を聞いていた生徒は、ネットの情報削除を引き合いに「今は悪とされていることも、後々には善になる可能性があるってことか」と、身近な体験に引き付けて考えていた。
 最後に、TAを務める大学院生や、附属中学校の探究学習を支援する一般社団法人Foraの藤村琢己代表が講評。藤村代表は「探究の学びは、これからの社会で重要になります。皆さんは自信を持っていい」とエールを送っていた。 

 「探究の大泉」を掲げる都立大泉高校は、17年度に都教委の「知的探究イノベーター推進校」に指定されたことを契機に、18年度から「探究と創造」(QC)を実施。全校で探究型授業に取り組んでいる。3学年を5段階に分け、1年生前期のコア・プログラムⅠ(分野別研究)で興味・関心を深めながら探究の仕方を学び、同後期のⅡで分野連携研究に取り組みながら課題設定の重要性を学ぶ。2年生前期のⅢでは分野横断をイメージしてテーマを掘り下げ、同後期のⅣで学際分野研究として実践を論文にまとめる。3年次は「アドバンスド・プログラム」として個人研究やコンクール、学会への参加などを通して、専門分野への足掛かりをつくる。
 テーマや探究手法などで編成されたゼミには、担当教員の他に1名ずつ配置されるTAの役割も大きい。東京都立大学大学院航空宇宙システム工学域2年の吉田慎之介さんも卒業生で、「僕たちがいたころには経験できなかったことだ」とうらやむ。

 ただし、先生たちは現状に満足していない。七森敦行主任教諭は「続けないとゼロになってしまいます。RQを固めようにも、今年はリモートで本物に出会わせることもできませんでした」と悔やむ。三好健介主任教諭も「3年生に聞いても、まだ本校に探究の伝統は根付いていません」と厳しい見方を示す。異動1年目の若林準也教諭は「対話しないと生徒の思考は深まりません」と、担当する英語の授業でアクティビティーに力を入れたいと意気込む。
 チャンスは、数年後に予定される完全中高一貫教育への移行だ。現在は高校入学生と混在しているため、探究学習の接続にも限界がある。先生方は、今から6年一貫のカリキュラムづくりや指導方法の確立に意欲を燃やしている。

渡辺敦司(教育ジャーナリスト)

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