Program筑波スタディ
~「伝統」と「連携」がひらく、社会へむかう探究の扉~
【概要】
総合的な探究の時間を活用し、「共通基礎講座」→「予備研究」→「本研究」と、段階的に探究活動のレベルを上げていくことを企図している(概念図参照)。
共通基礎講座 探究活動において基礎的な知識・技能の習得を狙いとし、ルーブリック評価によって知識・理解・技能の評価を行う
予備研究 教員のガイドの下で探究活動を行うことにより、基本的な研究の流れと深め方を習得させる
本研究 従前より行ってきた筑波大学等との連携をより一層深め、課題設定の場面から成果発表会まで、研究者から継続的な指導を得る
【特徴】
本校の特徴は、生徒の自主性を重んじつつ先導的な教科教育実践によって各界をリードする人材を輩出してきた伝統と、大学附属学校としての研究機関との距離の近さである。本プログラムではこの特徴を活かし、本校を取り巻く人的リソースの最大限の活用によって生徒に、より専門的でかつ探究的な学び、人生の範との出合いを促したい。人や社会とのタテ(伝統)とヨコ(連携)の「つながり」という観点から、抽象的な「伝統」や「高大連携」 が、生徒の目に見え、実感できるものとなることを期待している。
活動レポートReport
新カリと連動させながら
2013年度から5年間、文部科学省のスーパーグローバルハイスクール(SGH)に指定されると同時に、その幹事校を務めてきた。総合的な探究の時間「筑波スタディ」(筑スタ)も、当時の「SGHスタディ」が基になっている。
ただし、SGHスタディは「SGH校で行っている総合的な学習の時間」という程度の位置付けにとどまっていたことも否めなかった。指定終了後の18年度以降、今のように名称変更したが「探究活動のスキルを教えることを放置する状態が続いており、教員集団でも深まった議論にはなりませんでした」と、山田研也教諭は振り返る。
19年度、そんな状況に危機感を持った山田教諭や畑綾乃教諭ら有志の教員8人でワーキンググループ(WG)を立ち上げた。2人も所属していた新課程を検討するカリキュラム委員会ともやり取りしながら、科目デザインを固めていった。それ自体がカリキュラム・マネジメント(カリマネ)にもなっていたわけだ。
そうして20年度を準備期間、21年度以降を完全実施とする計画を立案。「総合的な探究の時間」準備委員会を中心に、校内研究会や検討会、アンケートを行いながら、討論を繰り返し、SGHスタディの反省も含めて指導上の課題を洗い出しながら、改善を重ねた。
一新された「筑波スタディ」は、▽共通基礎講座(第1学年の夏休み前まで、クラス単位の授業)▽予備研究(同それ以降、ゼミ方式による個人研究)▽本研究(第2学年、準ゼミ方式による個人研究)――で構成される。これに「筑波セミナー」(専門家による各種講演会)、「筑波ワークショップ」(研究活動充実のためのテーマ別ワークショップ)、「筑波アクト」(学会・研究会やコンテスト、社会貢献活動への参加等など外部とつながる活動)を関連付け、「筑スタアドバイザー」(大学の研究者)や「筑スタサポーター」(若手OB・OGや地域協力者など)の支援も受けながら、探究の手法を身に付け、外部に向けて発信できるまでに引き上げたい考えだ。
同高では、探究に関して▽レベル1=確認させる探究(教員が問いをつくり、生徒に探究のプロセスを体験させる)▽レベル2=構造化された研究(教員が最初の段階の問いと手続きを提示し、生徒が収集したデータの分析を通して知見を説明する)▽レベル3=ガイドのある探究(教員はリサーチクエスチョン=RQ=のみ提供し、生徒は問いを検証する方法を立てるところから責任を持つ)▽レベル4=オープンかつ本物の研究(RQから生徒がつくり、結果に責任を持って発信する)――とレベルを設定。一方、課題発見へのアプローチ方法を①興味・関心基盤型②日常生活基盤型③リソース基盤型④学問研究基盤型――とタイプ分けしている。
共通基礎講座では①②によるレベル2まで、予備研究では③によるレベル3まで扱うことで、本研究で④によるレベルまで引き上げられる、という考えだ。特に「ガイドのある探究活動」がカギを握っているという。こうした「やりながら身に付ける」(畑教諭)構成のメリットは、生徒にとってだけではない。教員にとっても、先にみた科目デザインの開発過程自体が校内研修と合意形成の機会になっていた。
渡辺敦司(教育ジャーナリスト)