ProgramBridge ~世界に橋を架ける~
両国高校は武蔵・下総の両国の境を成す隅田川の最初の橋として架けられた「両国橋」がその名前の由来とされている。その由来を、世界の隔てられているもの・未知のもの・遠い世界のもの等の「今つながっていないさまざまな物事」に橋を架けるという共通のテーマに昇華させることにより、本校独自の文化を紡ぐとともに、生徒が将来社会参画する際に必要な問題解決能力を身に付け、社会における個人の使命を自覚する契機となるプログラムを目指している。
大学・企業・NGO等と連携し、ゼミ形式の研究活動を1学年・2学年全体で実施。
その過程で、本校の教育目標である明朗な国民の育成・教養教育の充実・個の確立を図る・人間尊重教育の推進を実現するため、生徒が目の色を変え、自らが学び方や物の見方・考え方を身に付ける姿勢を維持できるよう、以下を活動方針としている。
1.企業人の視座に触れる
2.社会貢献の使命を感じる
3.机上でなく実際の理論を追究する
活動レポートReport
企業人の力も借りて「志」育成へ
芥川龍之介(旧制東京府立第三中学校)をはじめ多数の著名人が輩出した両国高校は、20年度に創立120周年、附属中学校併設からも15周年という節目を迎えた。そこに向けて探究型授業に積極的に取り組む決断をし、19年度から2年間の総合的な探究の時間として新たなプログラムを始めた。プログラム名の「橋」は、旧武蔵国と旧下総国の間に流れる隅田川を渡す両国橋にちなむ。
そんな下町に立地する同高では、地元の協力も得て「高い『志』を実現する学校」「『リーダー』を育成する学校」を目指してきた。しかし、中高一貫の伝統的な進学校として広く都内から通う今どきの生徒は、そうした意識を持ちにくい。
そこで、①企業人の視座に触れる②社会貢献の使命を感じる③机上でなく実際の理論を追究――という工夫を通じて、生徒が目の色を変え、自らが学び方やモノの見方・考え方を身に付ける姿勢を維持する仕掛けを組み込んだ。
①では、企業人の講演会はもとより、1年生のゼミ(20年度は8ゼミ)にも外部講師として協力してもらい、普段からいかに社会貢献や自社のミッション(使命)を意識して活動しているかという大人の視座に触れることで、「企業は利益第一」という思い込みの誤りを体感させ、社会に出ることを楽しみにできるよう価値観を転換するきっかけにすることを狙っている。
2年生は、1年生の時に立案した個人探究活動計画に基づき、個人研究と論文作成を行う。
「授業が大好き」(金田裕治校長)という教員集団は「何のため、誰のために勉強するのか」を生徒に考えさせようとすることにも熱心だ。探究型授業への転換も、自主的な集まりである「探究友の会」が大きな役割を果たしてきたと、担当の芝原玲那主任教諭は振り返る。
高校からの募集は20年度で停止し、完全中高一貫教育に移管する。6年間の総合学習・探究も、附属中学校の目玉として開発したキャリア教育「志(こころざし)学」を基にする案など、早くも構想を巡らせている。
渡辺敦司(教育ジャーナリスト)