カテゴリー 12020年採択

神奈川県立横浜緑ケ丘高等学校

対象者数 840名 | 助成額 196万円

ProgramMIDORI RESEARCH PROJECT

【探究活動】
 本校の探究活動は段階的・継続的に実施することで、生徒の学びを深い探究に導くものとなっている。複数の教科に関わる分野について、自己の興味・関心を基に、主体的に学習し、問題発見・問題解決能力・創造性を養い、自己と社会との関連性から、広い視野と社会性を身に付ける。1〜2年次には他者との「対話」を重視し、2〜3年次には「対話」で得たものを活かし探究テーマについて「検証」「分析」「思索」をして論文を完成させる。

1年 芸術文化、国際教養、社会科学、人間科学、環境情報といったさまざまな分野について、興味・関心に応じて研修し、学習を深める

2年 1年で行う研修に加え、3年次に完成させる課題研究の「問い(題目)」を決め、テーマに沿った基礎研究を行い、 中間発表をする。2年の後期より各自の課題研究の分野に応じて担当教員が付く

3年 課題研究を深め、論文にまとめる。2年の後期に引き続き、担当教員が論文指導に当たる

 

【スタディーツアー】
 他の地域を訪れることで、他人事であった問題を自分事にして、物事を多面的に見る重要性に気付く。

・タイ北部スタディーツアー タイ北部の山地民族の村を訪問するなど、 体験を通して、発展途上地域における課題に目を向けて考える。

・ふくしま「学宿」 津波や原発事故で被災した現地を「歩き」、その現状を「見て」、話を「聞き」、同世代と「対話」をして、「考える」。

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活動レポートReport

文理備えたリーダー目指す

  1923(大正12)年開校の旧制横浜第三中学校を前身とする伝統的進学校。19年度から県教委の理数教育推進校に指定され、その延長でスーパーサイエンスハイスクール(SSH)指定も目指すことにした。それをきっかけに、「次世代のリーダー」像を再検討。STEAM教育で、Aを「リベラルアーツ」として幅広く捉えられている通り「科学技術を推進するためには、社会をどうしていきたいかという人文・社会科学の視点も必要になります」(秋山晶子校長)。そこで、全教科が関わり、団体や企業の協力を得ながら、論理性をもって周りを説得しながら、人の輪をつくることができるリーダーを育成するための探究活動を構想した。

 プログラムは①テーマ別研修②課題研究③アカデミックキャラバン④スタディツアー――で構成。まず①では、芸術文化、国際教養、社会科学、人間科学、環境情報の5部会ごとに教員が10近いテーマを設定し、それに興味を持った生徒が20人前後のグループ(ゼミ)を構成する。夏休み前の事前学習として複数の課題が出され、夏休み後の事前指導を経てフィールドワークを行い、事後指導でまとめと成果発表会を実施。2回のテーマ別研修で探究活動の手法を身に付けた後、2年生の後期から3年生前期にかけ、5~6人のゼミで教員の指導を受けながら②を実施し、4000字の論文を完成させる。

 「対話」もプログラム全体のキーワードだ。③は外部講師を招き、学問などを探究する楽しさを味わうのが趣旨だが、単に話を聞くだけではなく、講師との対話を重視している。卒業生で気鋭の憲法学者として注目される木村草太・東京都立大学教授を呼んだ際、ある生徒は意気込んで論争を挑んだものの、逆に「理路整然とは、こういうことか」と降参したという。
 ④は19年度、「ふくしま『学宿』」として希望者を募り、2泊3日で震災や原発事故の関連地を巡って復興に取り組む人たちから説明を受けるとともに、県立ふたば未来学園高校の生徒が企画する交流ツアーに参加。20年度はコロナ禍により4日間のオンラインに切り替え、初めて実施するはずだった「タイ北部スタディツアー」も中止を余儀なくされた。一方で、県が推進する持続可能な開発目標(SDGs)の視点から、企業とタイアップした課題解決学習にも取り組んでいる。

渡辺敦司(教育ジャーナリスト)

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