Program「なぜ?」を問い、社会と関わる、社会に飛び出すグローバル・リーダーの育成
1.文部科学省の指定を受けて5年間取り組んだスーパーグローバルハイスクール(SGH)事業の実践を発展させ、探究学習のさらなる充実を図る。特に、本校普通科リベラルアーツコース(および理数人文コース)の探究学習の深化に重点を置く。
→普通科リベラルアーツコース(および理数人文コース)の探究学習における高大社連携の機会充実
2.令和2年度よりSTEAM領域の学校設定科目を設置することを受け、理数系分野の探究の質的向上を図る。
→探究学習における理数系分野の拡充、文系・理数系を問わず、探究グループへの研究費割り当てによる探究の質的向上、 文理融合型探究カリキュラムの開発
3.企業連携の機会を充実させ、社会に開かれた教育のカリキュラム開発を推し進める。
→これまで培ってきたネットワークおよび新規開拓するネットワークを活用した、企業連携PBL型インターンシップ事業等の拡大
1〜3を通して、「なぜ?」の問いがある探究的な学びを推進し、他者・異分野との関わりにより、さらなる問いを誘発する学びを創る。
活動レポートReport
SGHから教科横断へ
現在の鳥羽高校は1984(昭和59)年の設置だが、1900(明治33)年に創立された旧制京都府第二中学校の流れをくんでおり、31(昭和6)年に建てられた校舎(47~83年は京都市立洛南中学校が使用)の管理棟応接室(旧校長室)には、教育勅語謄本などを収めていた奉安庫が残っている。
2015~19年度指定のスーパーグローバルハイスクール(SGH)では、中間評価で公立校唯一の最高評価を受けた(現在はワールド・ワイド・ラーニング=WWL=コンソーシアム構築支援事業の事業拠点校)。
SGH指定を契機に17年度、普通科グローバルコースを専門学科の「グローバル科」(学年2クラス)に格上げした。その後、普通科にリベラルアーツコース(旧理数・人文コース、同3クラス)、スポーツ・教養コース(同1クラス)およびスポーツ総合専攻(同1クラス)を置く改編を行った。
そんな鳥羽高で探究学習の中心を担ってきたのが、グローバル科の「イノベーション探究」Ⅰ~Ⅲだ。大学や地域と連携し、学校設定科目と連動させながら、1年次は「京の智」に触れる「地域再発見プログラム」、2年次は公正・正義の視点を持ってグローバル・イシューを自分事として探究する「グローバル・ジャスティスプログラム」、3年次はサミット形式の発表や研究チーム論文の要約作成を英語で行う「ユニバーサルプログラム」に取り組む。
20年度入学生からは、スポーツ総合専攻を除く学科・コースでSTEAM(科学、技術、工学、芸術、数学)・社会領域や人文・社会領域などを設定して、学校設定科目を多数開設するなどのカリキュラムを組んでいる。例えば国語と日本史でチーム・ティーチング(TT)を組むなど、SGHの経験を踏まえて「教科横断が当たり前になっています」(田中誠樹副校長)。
机上の空論に終わらせず、実地インタビューや実験など「ホンモノ」に触れさせることも重視している。財団の指定を受けたことで、グローバル科とリベラルアーツコースの1・2年生に探究活動研究費(4人の研究チームに各5000円まで)を助成できるようになった。書籍や実験器具の購入、フィールドワークの経費などに充てられる。各チームで会計担当を決めて計画書を提出させ、領収書を含めた支出伝票はもとより年2回の収支報告書も求めるなど「大人として扱います」(竹林祥子副校長)。
大企業から中小企業まで、多様なものづくり企業から協力を得られるのも京都ならではのメリットだ。PBL(問題解決学習)型インターンシップを通して、キャリア観の形成にもつなげようとしている。
渡辺敦司(教育ジャーナリスト)