Program段階的・総合的なKRPメソッドによる生涯にわたる探究者の育成
過去2年間の「桂リサーチプロジェクト(以下、KRP)」で研究開発を行った「KRPメソッド」を用いて、独自の段階的・総合的な探究活動を展開することで、生涯にわたる探究者の育成を行う。
1年次の「基礎プログラム」で探究スキルを学び、2年次の「実践プログラム」で探究スキルを活用・定着させる。生徒は一人ひとりの発想が尊重される民主的ルールの下で行われる問いづくり「Question Formulation Technique(以下、QFT)」の手法を学び活用しながら二つのプログラムを経験する。生徒は、自身の在り方・生き方に十分に向き合い、他者とも協働しながら課題設定を行う。探究プロセスを発展的に繰り返して行う中で、生涯にわたる探究者の資質・能力を身に付ける。教員はアドバイザーの役割だけでなく、ファシリテーターの役割も担い、生徒の主体的な探究活動を引き出すことを強く意識しながら指導に当たる。
活動レポートReport
問いづくりの手法を導入
戦後に開校した桂高校には、総合制の原則から普通科と農業科が設置されてきた。現在の植物クリエイト科・園芸ビジネス科では、2013~18年度のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)指定を経て、「未来の研究者を育成するTAFS(Training in Agriculture for Future Specialist)プログラム」の充実を図っている。
普通科でも探究活動を充実しようと、総合的な探究の時間の先駆けとして18年度に開設したのが「桂リサーチプロジェクト(KRP)」だ。まずは研究コース(進学重点)2クラス(20年度は1クラス)の学校設定科目として、2年間にわたって修正と改善を加えてきた。20年度は文理コース6クラス(1クラス増)の総合的な探究の時間にも一部適用を広げている。
KRPの開発に当たっては、16年度末に作業部会を設置。部会長の西山周平教諭(現・西山企画代表)が、NPO法人ハテナソン共創ラボ代表理事を務める佐藤賢一京都産業大学教授と連携。佐藤教授が考案した「ハテナソン」を高校向けにアレンジして実践した。
ハテナソンは「はてな」と「マラソン」を足し合わせた造語。米国のNPO、RQI(Right Question Institute)が開発した民主的意思決定のための問いづくり手法QFT(Question Formulation Technique)を基本プロセスにしている。
KRPでは、基礎プログラム、探究プログラムの2段階を設定。QFTを活用した問いづくりに始まり、仮説を立て、自ら検証するとともに、連携する京都産業大学や龍谷大学の教員をはじめとした外部に向けて最終発表を行う。教員はアドバイザーであるととともに、生徒自らが考えて困難に立ち向かう場面を引き出すファシリテーター(進行役)も担う。探究活動のプロセスを繰り返し実施させることで、生涯にわたる探究者を育成するのが狙いだ。
渡辺敦司(教育ジャーナリスト)