カテゴリー 12020年採択

大阪府立生野高等学校

対象者数 520名 | 助成額 200万円

https://www.osaka-c.ed.jp/ikuno/

Program「ハングリーに学ぶ生徒」を育てるための、文系探究学習の指導と評価

 「ハングリーに学ぶ生徒」とは、与えられた目先の課題を無難にこなすだけではなく、自身の切実な問いを発見し、その問いから広がるさまざまな学びに夢中で取り組む生徒を指す。

 本校は、「ハングリーに学ぶ」ための資質と能力を育てるプログラムを実施する。本校で平成23年度より実践してきた「文系探究学習」を活かしつつ、生徒がより「ハングリーに学ぶ」ための指導と評価を行う。また、そのための体制を整える。

 具体的には、大きく以下の3点について実践する。

1.生徒に「ハングリーに学ぶ」という感覚をつかませる
 ・「ハングリーな他者に触発される」機会の設定
 ・「自分にとって切実な問題に出合う」機会の設定

2.生徒が「ハングリーに学ぶ」ための環境を整備する
 ・校内環境の整備
 ・「校内コンペティション」の実施

3.教員間で「ハングリーに学ぶ生徒」の像や、指導と評価の在り方を共有する
 ・「育てたい生徒像」の共有
 ・教員研修の実施

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ハングリーさ引き出す

 1920 年の創立で、こちらも漫画家のサトウサンペイ(旧制第12中)や村田治・関西学院大学長、吉村洋文・大阪市長など、多数の人材を輩出。南大阪(松原市)のGLHS(文理学科設置校)でもある。10年度からSSHに指定されており、20年度からは3期目に入った。
 一方、世界遺産の百舌鳥・古市古墳群に挟まれた市内には列島5位の規模を誇る河内大塚山古墳(陵墓参考地)があるなど、文系分野に興味を抱く生徒も少なくない。

 16年度、そんな同校に着任したのが、岡村多加志校長。当時は普通科が残っており、「探究Ⅰ~Ⅲ」は文理学科のみで行われていた。そこで17年度から第2学年の全生徒を対象に「灯びプロジェクト」を始めた。希望生徒がグループになり、将来なりたい仕事をしている人にアポを取って会いに行き、写真付きのリポート(灯びメモ)にまとめ学年集会で成果を発表した。名称は、英国の哲学者ウィリアム・アーサー・ワードの名言「最も優れた教師は生徒の心に灯をつける」にちなんだ。

 普通科の募集停止で全学年が文理学科となった20年度を機に、新たな形でスタート。第2学年で文・理に分かれるうち、理科の探究はSSHとして、文科の文系探究学習は「ハングリーに学ぶ生徒」を育てるプログラムとした。与えられた目先の課題を無難にこなすだけでなく、自身の切実な問いを発見し、その問いから始まるさまざまな学びに夢中で取り組む生徒を指す。若い教員を交えて話し合い、目の前の「素直で従順な優等生」が一皮むけるためには何が足りないのか、という問題意識から生まれたコンセプトだという。

 SSHを含む探究のため、大学の研究者など13人の指導助言者をそろえた。探究Ⅰは地歴・公民科の教員がチームティーチング(TT)で担当し、クラス単位で地球温暖化やプラスチックごみの問題に取り組んだ。探究Ⅱは、中間発表(ポスター)や成果発表(口頭)を必須とする「探究スタンダード」(SSH対象生徒は「探究ベーシック」「探究アドバンス」)と、教員側の提示した課題に取り組む「探究ゼミ」に分かれる。探究Ⅲに進むために研究計画書と予算計画(1チーム5万円、4チーム)を提出させる「校内コンペティション」はコロナ禍で実施できなかったが、まさにハングリーさを引き出す仕掛けだ。
 そんな探究も、生徒にとってはフィールドの一つという位置付けだ。同高は部活動も盛んで、オーストラリア語学研修や海外連携校との交流を通して語学を頑張りたいという生徒も少なくない。岡村校長は「生徒が主体的に選べる多様な引出しを用意するのが学校の役割です」と説明する。

渡辺敦司(教育ジャーナリスト)

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